第6章191話:解雇
「そうか……これが、祝福か」
「ふふふ。有り難い能力でしょう?」
「俺はお前と契約を結んだということか」
「あら。よく理解しているじゃない?」
「これと似たような能力を経験したことがあるからな」
ゲームの中で……な。
セラフィナは補足した。
「言っておくけど、精霊の契約は一つだけ。二つ以上の精霊契約を結ぶことはできないわ」
「新しい契約を結んだら、過去の契約は破棄される……だろ?」
「本当に詳しいのね」
契約を交わせる精霊は一人だけだ。
複数の精霊と契約することはできない。
「この祝福は、グラストンにも与えたのか?」
「いいえ。たとえ王であっても、気に入らない人間には与えないわ」
「……そうか」
よほどセラフィナはグラストンが気に入らなかったんだろうな。
「お前の祝福は悪くない。しばらくお前と契約を結んでおくことにしよう」
ゲームと仕様は同じだろう。
ならば、契約をすることによるデメリットはない。
セラフィナの祝福は強力だし、契約を解消する必要もないだろう。
それからしばらく。
俺は王城で資料をチェックする日々を送った。
そんな中、国王となった俺に面会をしたいという人間は山ほどいたが……
全て拒否した。
就任式のときに宣言した通り、1ヶ月は一切の政務を放棄する。
国の状況を把握するのは最優先事項。
そのために資料をひたすら読むのが俺の仕事だ。
他のことに思考のリソースを使いたくなかった。
ただし……一つだけ俺が率先して動いたことがあった。
それは料理人に関する人事である。
実は、現在の宮廷料理人たちは、みんなグラストンの好みにあわせた人選だ。
だから俺の口に合わない料理ばかりを出してくる。
ゆえに俺は、城に勤めている料理人を全員、クビにすることにした。
料理長も含めた宮廷料理人の一斉解雇である。
ちなみに料理長は城を出るとき。
「死ね! クソ国王!!」
と捨て台詞を吐いて去っていった。
国王侮辱罪で処刑してやろうかとも思ったが……
解雇される気持ちは分からなくはなかったので、やめにすることにした。
そして料理人を総入れ替えした俺は、自分好みの料理人を雇うことにした。
その新しい料理人たちに、ゆくゆくは地球の料理を学ばせていこうと思っている。




