第6章187話:就任式
―――――第6章
グラストン国王の戦死。
および、アンリ新国王の誕生。
……そのビッグニュースは、ベルナダ武人国の全土を駆け巡った。
そして国王決定戦から10日後。
新国王の就任式がおこなわれることになった。
――――王城。
謁見の間。
大理石のような素材で、床、壁、天井などが造られた部屋。
部屋の中央奥に4段の階段があり、そのうえに王座の椅子がある。
入り口から、その王座まで、真っ赤な絨毯が敷かれている。
現在。
謁見の間には国の重鎮たちが参列していた。
大貴族、高位聖職者、大商人、大臣などが、新国王の就任式を祝いに来たのである。
そんなお歴々《れきれき》たちが集まる中。
「アンリ新国王の御成りです!」
という女性宰相の声に応じて、俺は謁見の間に入場した。
王衣と赤いマントを着用した俺。
ノルドゥーラとヴィシーを連れて、謁見の間の絨毯を歩き出す。
周囲にいた全ての者たちが、俺に対し、万雷の拍手をおこなった。
拍手が鳴り響く中、俺は堂々たる足取りで王座へと向かう。
王座にたどり着いた俺は、そのまま着席した。
俺の着席とともに、拍手が鳴り止んだ。
「……」
女性宰相が一歩、前に出てきた。
彼女の名前はティメリア。
身長156センチ。
緑色で、肩にかかるぐらいのウェーブ髪。
吊り目。黄色い瞳。
インテリのような顔つきの女だ。
異世界風の赤スーツ、赤タイトスカートを着用している。
彼女は、俺に対して深々と頭を下げてきた。
そして告げた。
「アンリ様。国王へのご即位、おめでとうございます」
ティメリアは続けた。
「本日お集まりの方々を代表し、祝辞を述べさせていただきます。我ら一同は、陛下に忠誠を捧げることを、ここに誓います」
その言葉に合わせて、部屋にいる全員が、俺に頭を下げてくる。
俺は言った。
「堅苦しい挨拶を、長々《ながなが》とするつもりはない。伝えるべきことを手短に述べる」
と俺は前置きしてから告げた。
「俺は今日この日より1ヶ月間、一切の政務を放棄する」
どよめきが走った。
国王が1ヶ月間、政治をしないと言ったのだから当然だ。
俺は続ける。
「俺が政務から離れる1ヶ月のあいだ、国王として執り行うべき採決は、全てティメリア宰相に任せる」
「なっ……!? ええと、それはどういう……?」
とティメリア宰相が困惑を示した。
俺は答える。
「まず俺は、この国の状況を知らなければならない。そのために資料を読む。その期間を1ヶ月と定めたのだ」
いきなり王になったばかりで、俺は国のことをほとんど知らない。
だからまずは、国の台帳や予算状況などをチェックしようと思ったのだ。