第5章186話:国王決定戦7
ちなみに審判だけは巻き添えを食らわないように、攻撃範囲から外してある。
審判の立っているところ以外が、全て陥没しているような状態だ。
「審判」
と俺は声をかけた。
すると審判が、察したようにうなずいた。
「グラストン国王、立てません!! 決着、決着ですー!!」
審判がそう宣告する。
次の瞬間。
「「「「うおおおおおおおぉおおおお!!!」」」」
と観客たちが歓声を上げた。
拍手喝采が降り注ぐ。
そんな会場に向かって、審判が告げる。
「ただし、国王決定戦は相手を殺すまで終了しません! ゆえにアンリ選手……最後の仕上げをお願いします!」
観客たちがさらに盛り上がる。
国王を殺す――――
それが俺の最後の仕事だ。
歓声が降り注ぐ中、俺は試合開始前に投げ捨てた剣を探した。
剣は近くに落ちていた。
拾い上げる。
グラストンに近づく。
「ぐ……あ……イヤ、だ」
グラストンはつぶやいた。
「死にたくない……頼む……許してくれ」
うつぶせに倒れながら、必死で訴えてくる。
「お前に、王の座を譲る。……二度と、お前の前には現れない。国も出て行く」
そしてグラストンは叫んだ。
「だから命だけは……命だけは、勘弁してくれえぇっ!!」
涙ながらに許しを乞うてくる。
哀れみを誘うような声だ。
しかしもちろん、許しはしない。
「俺は命乞いをするやつが嫌いだ」
「あ―――――――」
俺はグラストンの背中に、刃を突き刺した。
普通に突き刺したら刃が通らないので、サイコキネシスで強化したうえで……だ。
「そして、俺は個人的にお前が嫌いだ。強さと卑劣さを履き違えているお前のことがな」
俺はグラストンの髪を掴み、頭部を持ち上げ……
その首筋に刃を通し、スパッと首を刎ね飛ばした。
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」」
歓声が爆発する。
俺は剣の切っ先に生首を突き刺した。
その生首を、観客たちに見せ付けるように、高々《たかだか》と掲げる。
観客たちは一斉に立ち上がる。
総立ちだ。
口々に叫ぶ。
「うあああああああああああ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「国王が死んだ!」
「アンリーーーー!!」
「おめでとう、アンリ!」
「アンリ! アンリ! アンリ! アンリ! アンリ! アンリ!」
「アンリ国王だ!」
「新しい時代が来たぞ!!」
俺の勝利を祝福する声。
万雷の拍手。
喝采。
歓声。
審判が宣言する。
「グラストン国王の戦死を確認。――――アンリ新国王の誕生です!」
「「「「ウアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」
地鳴りのように巻き起こる大歓声が、会場を震動させる。
こうして総合闘技大会は終了し――――
俺はベルナダ武人国の新しい国王になるのだった。
―――――第5章 完