第5章185話:国王決定戦6
<アンリ視点>
俺は分析した。
(なるほど……グラストンの魔法攻撃か)
しかしグラストン自身の魔法ではない。
ヤツが隠し持っていた武器による魔法だ。
威力的にSランク相当の魔法だろう。
それはすなわち、武器もSランクだったことを示している。
(Sランク武器の使用は禁じられている。なのに、それを使ったということは――――)
反則。
勝負に勝つために、グラストンが卑怯な行為に手を染めたということだ。
("また"……か)
グラストンは勝利のために卑怯な手を使ったのは、これで二度目だ。
一度目はハイドラ卿と結託して。
二度目は今回。
(一度ならず二度までも、正々堂々の勝負を穢そうとするとは……許しがたいな)
俺はグラストンの実力を認めていた。
敬意を示し、賞賛する気にもなっていた。
だが。
その気持ちは暗澹たる思いに塗りつぶされた。
俺の心を占めているのは……
失望。
諦念。
落胆。
そして怒りだ。
「こんなもので、俺を殺せるものか」
「!?」
燃え盛る青い炎柱。
それを、俺はサイコキネシスの衝撃波で吹き飛ばした。
「な、なにぃ!!?」
グラストンが冷や汗を浮かべ、驚愕している。
「勝負を穢したな?」
「!!」
「もはや慈悲もない。叩き潰してやる」
そう告げた俺は……
空に向かってジャンプした。
極めて高い跳躍。
30メートル。
50メートル。
100メートル近い高度へと到達する。
そこで一度、滞空した。
そして拳を構え―――――
俺は地面に向かって、拳を突き出した。
次の瞬間。
拳の先からサイコキネシスによる拳圧が放たれる。
その拳圧は、巨大な空気の波動として、闘技場に向かって落ちていく。
まさしく空気の大圧力が、天から闘技場へと墜落するように。
サイコキネシスによる拳圧が、闘技場のグラウンド全体に直撃した。
ズガアアアアアァァンッ!!!
と、闘技場のグラウンド全体が轟音とともに陥没する。
陥没した地面にまぎれてグラストンの姿もあった。
彼は空気の大圧力に押しつぶされて、悲鳴も上げることもできずに倒れていた。
「が……あ……」
グラストンがくぐもった声を漏らしている。
俺はゆるやかに自由落下にしたがい、闘技場のグラウンドへと着地した。
観客たちがどよめいている。
「な、なんだよこれ?」
「アンリがやったのか?」
「魔法……なの?」
「よくわかんないけど、すげー」
サイコキネシスによる拳圧は、グラウンドのほとんど全部を陥没させている。
視覚的にも凄まじい光景だ。
観客たちの多くも驚愕の色を浮かべている。