第5章182話:国王決定戦3
「舐めるなッ!! そう簡単に勝ったと思うなよ!!」
グラストン国王が激怒しながら拳を振るってくる。
昂ぶった感情は拳を鈍らせるものだが……
グラストンの拳は一切鈍らない。
どころか、威力とキレを増してくる。
(怒りのエネルギーを力に変えたか)
野獣のような精神力の持ち主だと、俺は感心する。
だが。
「ふっ!」
「ぬぐぉあ!!?」
グラストンの勢いが多少増したところで、関係ない。
俺は引き続きグラストンをサンドバッグにする。
「ごっ!? ぐがっ!? ぐはぁっ!!?」
パンチと蹴りを織り交ぜた攻撃でボコボコにし……
最後に回し蹴りを叩き込んだ。
「ぐああああっ!!?」
グラストンが吹っ飛んで、倒れる。
歓声が巻き起こった。
(……終わりかな)
と俺は判断する。
しかし、グラストンは起き上がってきた。
「ふう……やるではないか」
「……」
俺は目を細める。
そこそこ強く攻撃したし、しこたま殴ったはずだが……
驚くほど打たれ強い。
俺が戦ってきた中で、精霊を除けば、過去最強にタフネスかもしれない。
しかしさすがにダメージがあるようで、グラストンはよろめいていた。
全身に打撲やあざが出来ており、裂傷なども多く、血だらけになっている。
「実力差はわかっただろう。お前に勝ち目はない。これ以上、無様をさらす前に、潔く敗北を受け入れろ」
と俺は告げる。
しかし、グラストンは反駁する。
「くくく。まだ始まったばかりではないか。これほどすぐに終わる祭りというのは、観衆も興ざめであろう」
まだ戦意は失っていない。
打たれまくったので、だいぶボロボロであるが、闘志はみなぎっている。
グラストンは告げた。
「あまり使いたくない手なので、封印していたのだがな。お前相手には、そうも言ってられんようだ」
……まだ何か手があるのか?
俺はグラストンを注視する。
グラストンは「ふう……」と深呼吸をした。
「正真正銘の全力を見せてやる。俺を追い詰めたことを後悔するがいい……ッ!!!」
グラストンはそう宣告して。
「ぬぅううううッ!!!」
とグラストンが気合いを込め始めた。
次第に高まる鬼気。
ぐんぐん増していく闘気。
そして。
「ぬぅおおおおおおああああああああああッ!!!!!!!」
解き放つように両手を広げる。
その瞬間、グラストンから爆発するような気が発せられた。
衝撃波のごとき波動が生じ、遅れて風圧と砂塵が巻き起こる。
グラストンの肉体に赤いオーラが、陽炎のごとく立ち昇りはじめる。
(なるほど。【闘気状態】を使ったか)
――――闘気状態。
戦闘ステータスを全体的に高めるスキルだ。
つまりバフである。
闘気状態を使ったグラストンからは、さきほどまでとは比べ物にならない威圧感をまとっている。
「これは闘気状態と呼ぶ」
とグラストンが説明する。
「俺にとっての奥の手だ」
グラストンがファイティングポーズを取った。
……なるほどな。
そういえばグラストンは、ゲームでも【闘気状態】を使える戦士だったな。
この状態になったグラストンは本当に強く、硬く、速い。
倒すのが厄介な強敵だった。