第5章180話:国王決定戦
<アンリ視点>
「それでは、両者、構えてください!」
と審判の女性が宣言した。
いよいよ開幕だ。
グラストン国王が戦闘体勢を取る。
俺もファイティングポーズを取る。
観客がだんだん静まり返っていく。
静寂。
一陣の風が吹き荒れた。
そして。
「―――――はじめッ!!」
審判の合図。
戦闘の火蓋が切られたと同時に、グラストン国王が地を蹴って滑空してきた。
大柄な肉体には似つかない、身軽なスピードだ。
そのまま俺に接近したグラストンは、ボディブローを突き出してくる。
「ふんヌッ!!!!!」
グラストンの呼気とともに、俺の腹にボディブローが突き刺さる。
まともに直撃したボディブロー。
周囲に風圧が吹き荒れる。
「良いのが入ったな!! どうだアンリ? これが王の力だ!!」
とグラストンが得意げに言っていた。
しかし俺は告げる。
「良いのが入っただと?」
「!!」
「イノシシでももう少しマシな攻撃をするだろう。お前の力はこの程度か?」
俺がピンピンしていることに気づき、グラストンがいったんバックステップで距離を取る。
軽いバックステップでグラストンは20メートル近い距離を取った。
「ほう……今の攻撃でもダメージはほとんど無いか。さすがにここまで勝ち上がってきただけはある。相当打たれ強いようだ」
さらにグラストンは告げる。
「だが、残念だったな。今のパンチは手加減していた。威力的には、俺にとってほんの20%程度のものだ。しょせんは挨拶代わり――――むしろ、この程度で根を上げられては拍子抜けしていたところだ」
さきほどのボディブローを手加減と宣告する。
別に嘘は言っていないだろう。
あれがグラストンの本気だとは、俺も思わない。
「次は『多少』、本気を出してやる」
とグラストンが宣言し……
ふたたび地を蹴った。
だが。
「その前に、俺の攻撃も受けてみろ」
と俺は宣言して、グラストンに合わせて前に出る。
グラストンの間合いに素早く入り込み、俺はボディブローをお返しした。
「ぐおおおお!!?」
俺のパンチが、グラストンの腹へと突き刺さる。
吹き飛んだグラストンが一度だけもんどり打ってから、受身を取って制止した。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
と歓声が巻き起こる。
俺はグラストンに告げた。
「どうした? 今の攻撃は、俺も20%程度に調整したつもりだが?」
「!!」
「派手に吹っ飛んだな。そんなに効いたのか、グラストン陛下?」
実際は20%どころか、5%ぐらいのパワーだ。
サイコキネシスで多少、強化したパンチを繰り出しただけだからである。