第5章171話:その後
ハイドラ卿が死んだ。
しかし、俺が法廷でやるべきことが、まだ終わったわけではない。
とりあえず無罪の判決を貰っておかなければならないだろう。
ゆえに俺は引き続き、サイコキネシスで裁判長を操り……
無罪判決の書類に捺印を押させることにした。
「よし、これでいい」
俺はその書類を丸めて右手に持っておく。
もう裁判長と裁判官は用済みだ。
サイコキネシスによって殺しておくことにしよう。
俺は静かに唱えた。
「空間切断」
「「「「――――――――――――――!!!」」」
裁判官たちの首を、一斉に刎ね飛ばす。
これで法廷にいた、俺以外の全ての人間が、死去したことになる。
しかし……
まだ終わりではない。
(俺がおこなった、法廷での殺人を隠蔽しておかなければな)
もしもハイドラ卿や裁判官たちを殺したことが露見したら、大変なことになる。
全てを闇に葬っておく必要があるだろう。
ついでに血みどろになった法廷も、綺麗にしておくべきだ。
俺はサイコキネシスを使い、まずはハイドラ卿、騎士、裁判官たちの死体を集める。
同じくサイコキネシスで、周囲に飛び散った血や血痕を、収集する。
それらを一ヶ所に固め、1メートルほどの大きさの肉塊へと圧縮した。
最後に、俺は【転移魔法】を使ってワープ。
リュドラウスダンジョンの下層へと転移した俺は、ハイドラ卿たちの肉塊をマグマの中に廃棄した。
このダンジョンならば誰かが調査に来ることは不可能だし……
マグマに溶けた死体を回収することもできない。
完璧な証拠隠滅である。
(まあ、完全犯罪とはいかないがな)
法廷にいた俺以外の全ての人間が、失踪したことになる。
間違いなく俺が"何か"をやったという疑いがかかるだろう。
その"何か"を立証できなくても、状況証拠的に、俺が失踪事件の犯人なのは確実だからだ。
しかし俺はシラを切り続けよう。
また裁判になるようなら、同じようにサイコキネシスを使って切り抜ける。
「さて……いい加減、闘技大会にいかねばな」
そろそろ国王決定戦が始まる時刻だ。
もたもたしていると遅刻し、不戦敗になってしまう。
俺は転移魔法を使って、リュドラウスダンジョンを脱出した。
そして闘技場へと向かうのだった。