第5章170話:裁判8
俺は宣言する。
「ではさっそく、この法廷にて処刑を執り行うとしよう!」
「なっ……ここで処刑だと!? 馬鹿な!? 処刑は中央広場でおこなうものだぞ!」
とハイドラ卿が異を唱えてくる。
中央広場で処刑をすることになれば、仲間とコンタクトを取る隙が生まれる――――そう思ったのだろう。
もちろん、そんな隙など与えるつもりはない。
「そんなルールは知らんな? 処刑とは、判決が決まったその瞬間におこなうものだろう? なあ、裁判官ども?」
「ああ、そうだな」
「アンリの言う通りよ!」
「この場で処刑すべきだ」
「法廷こそ、処刑場として最適な場所だと私も思う!」
と裁判官が口々に賛意を示す。
俺は微笑みながら告げた。
「ならば剣を取れ。ちょうど処刑に使える剣が、ここにある」
俺は女性騎士の剣を床に投げ捨てた。
男性騎士が落とした剣とあわせて、2つだ。
裁判官たちが一斉に立ち上がった。
こちらへと近づいてくる。
「ひっ!!」
ハイドラ卿は、死の恐怖に引きつった声をあげると、立ち上がった。
傷ついた足を引きずりながら、法廷を立ち去ろうとする。
そんなハイドラ卿を、裁判官7人のうち5人が走って追いかける。
追いつくなり、殴りかかった。
「がっ!?」
男性裁判官が殴る。
ハイドラ卿が転んだ。
倒れたハイドラ卿を、他の裁判官たちが取り囲む。
蹴り飛ばしたり、踏みつけたりする。
「ぐっ、あがっ!? ぎゃっ!? やめろ……やめてくれ!!」
ハイドラ卿が必死で懇願する。
しかし裁判官たちは暴行の手を止めない。
蹴りつけ、踏みつけ、肩をつかんで起き上がらせて、殴打する。
ハイドラ卿はめちゃくちゃに打ちのめされ、血だらけになり、顔も腫れ上がっていく。
そして。
裁判官7人のうち2人が、剣を持ってハイドラ卿に近づいた。
他の裁判官たちはハイドラ卿を羽交い絞めにする。
ハイドラ卿が俺を見て、泣きながら懇願してきた。
「アンリ……いや、アンリ様! お許しください。これからはあなたに忠誠を誓います! あなたに服従します! ですから!」
その哀れな姿に、俺は嘲笑を浮かべながら言い放った。
「権力欲にまみれた、薄汚い老人など要らん。ここで死ね」
ハイドラ卿が絶望にまみれた顔で、ただ涙を流す。
剣を持った裁判官が構える。
そしてハイドラ卿の腹に、剣を突き刺した。
「ぐはっ!!?」
ハイドラ卿がビクビクと痙攣する。
最後に、もう一つの剣を持った裁判官が、ハイドラ卿に近づき―――――
その首を、勢いよく刎ね飛ばした。