第5章168話:裁判6
ハイドラ卿の圧倒的優位で始まった裁判。
しかし、形勢は完全に逆転した。
ハイドラ卿の護衛である騎士2人は息絶え……
裁判長および裁判官たちは全て、俺の操り人形となった。
勝ち目がないということをハイドラ卿は、十分に理解しただろう。
ここからは俺がハイドラ卿を好き放題、蹂躙するだけだ。
「俺は国王決定戦に行かねばならない。しかし、ハイドラ卿。お前には、このように素晴らしい裁判を用意してくれた礼をせねばならん」
「ッ!?」
ハイドラ卿が眉をぴくりと動かす。
俺は証言台からジャンプして、ハイドラ卿の背後へと着地した。
ハイドラ卿が振り返ってくる。
そんなハイドラ卿の顔面に、俺は拳を叩き込んだ。
「ぐぶぁッ!!??」
ハイドラ卿の歯が吹っ飛んだ。
さらに俺はハイドラ卿の両肩を掴んで、ぶん投げる。
ぶっ倒れるハイドラ卿。
「あが……う……」
起き上がろうとするハイドラ卿を、俺は蹴りつけた。
「がっ!?」
さらに踏みつける。
「ぐふっ!?」
服を掴んで起き上がらせ、殴る。
殴る。
殴る。
「がっ!? あがっ!? ぐはっ!!?」
殴打されたハイドラ卿が、だんだん血だらけになっていく。
「や、やめろ……!!」
とハイドラ卿が懇願してきた。
構わず俺はハイドラ卿を殴りつける。
さらにハイドラ卿が叫ぶ。
「さ、裁判官ども! 私を助けろ!!」
そんなハイドラ卿の言葉に、俺は異論を述べる。
「助けろ? これはおかしなことを言うものだな。俺はお前と一緒に遊んでいるだけだぞ。そうだな、裁判官たち?」
俺が意見を求めると、裁判官たちは口々に応じた。
「その通りだ」
「ただの遊びよね」
「遊びだ」
「ハイドラ卿は何を言っているのだ? 遊んでいるだけなのに」
「遊びなんだから、悪いことはしてないわよね」
ハイドラ卿が暴力に打ちのめされていることを、"遊び"だと認定する裁判官たち。
ハイドラ卿が血を吐きながら歯ぎしりをした。
俺は笑みを浮かべながら告げる。
「ほら、見たか? 裁判官たちもこのように言っている! つまりこれは犯罪ではない!」
そして俺は、女騎士の剣を拾い上げ……
ハイドラ卿のふくらはぎを斬りつけた。
「があああああぁッ!!?」
ハイドラ卿が足から出血しながら、盛大に転倒する。
激痛にもだえながら床を転がるハイドラ卿。
倒れながら、ハイドラ卿が俺を睨みあげてくる。
「ふざける、な……こんなことが、許されるわけがない。こんな、こんな理不尽なことが」
「理不尽だと? 戯言だな。これを理不尽だと思うのはお前だけだぞ」
そう宣告したうえで、俺は裁判官たちに言った。
「おい裁判官ども。俺の所業を理不尽だと思うか? 『理不尽ではない』と感じた者は、その場に起立して、拍手するがいい!」
すると。
裁判官たちが一斉に起立した。
盛大に拍手を始める。
ぱちぱちぱちぱちぱち。
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちと、まるで狂気のような音が法廷に鳴り響く。
ハイドラ卿が、絶望の表情を浮かべた。