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第5章167話:裁判5

「あ、あ……」


と女騎士が怯えた目を浮かべた。


男騎士の死に、ハイドラ卿や裁判官たちも目を見開いている。


俺は男騎士の剣を拾い上げ……


素早く女騎士に接近して、その剣を彼女の心臓へと突き刺した。


「ぐ……は……」


女騎士は血を吐いて倒れる。


その頭を、俺は踏み潰す。


これで女騎士も絶命だ。


「弱すぎる」


と俺はせせら笑うように告げた。


「全く相手にもならない。お前の護衛はこの程度か? 護衛部隊ごえいぶたい人材不足じんざいぶそく懸念けねんするレベルだぞ」


ハイドラ卿は、唖然あぜんとしながら沈黙していた。


しかし我に返って。


「さ、殺人だ!」


と、わめいた。


「騎士を2人も殺した! 法廷で殺人をおこなうなど、言語道断ごんごどうだんであるぞ! 即刻、死刑にせよ!」


「今のはどう見ても正当防衛せいとうぼうえいだろう。そうだな、裁判長?」


と俺は裁判長へと視線を向けた。


裁判長は盛大にうなずく。


「ああ、全くその通りだ! 今のはアンリ被告の正当防衛であり、無罪むざい以外の何物なにものでもない!」


「くっ……!!」


ハイドラ卿は歯ぎしりをした。


しかしすぐさまハイドラ卿が宣告する。


「裁判長! 貴様はクビだ! もう裁判所に来なくていい。即刻そっこく出て行け。たった今から、残りの裁判官たちだけで審議をおこなう!」


そんなハイドラ卿の宣言に対して、俺は横槍よこやりを入れた。


「自分にとって都合が悪くなったら排除するのか? 彼は、良識りょうしきのある素晴らしい裁判長だと思うが?」


「しらじらしいことを言うな! 貴様に操られるような愚物ぐぶつらん!」


とハイドラ卿が憤怒ふんどする。


さらにハイドラ卿が告げた。


「他の裁判官だけいればよい。もう裁判は、貴様の有罪ということで、さっさと終わらせてくれよう」


そのときだった。


一人の女性裁判官じょせいさいばんかんが堂々と宣言した。


「私は、アンリは無罪だと思います!」


「っ!?」


ハイドラ卿が目を丸くする。


その女性裁判官に続いて、他の裁判官たちも口々《くちぐち》に言い始める。


「俺も、そう思いますね。アンリはどう見たって無罪ですよ」


「あれほど王たるにふさわしい風格の人間は存在しない。彼が犯罪者であるはずがない!」


「彼を有罪にするなんて、有り得ない判断よね」


俺を擁護する裁判官たち。


するとハイドラ卿が冷や汗を浮かべながら、激怒した。


「き、貴様らもか! 貴様らも、アンリに操られているのか!?」


もちろん、その通りだ。


俺が全てサイコキネシスで操っている。


現在、法廷にいる人間で、ハイドラ卿以外は全て俺の支配下しはいかだ。


俺は高笑いをする。


「ははははははは! 俺が裁判官たちを操っているなどと、ふざけた妄想は控えていただきたいものだ」


「なんだと!?」


「裁判官の諸君は、人間が持つべき自由意思じゆういしと、裁判官としての良識に基づいて、俺のことを無罪だと判断しているのだぞ!」


実際は俺のサイコキネシスで支配されているので、自由意思など存在しない。


しかしハイドラ卿をあおるのが面白いので、あえて告げる。


「つまり彼らは、お前の汚い圧力に屈さず、裁判官としての職務しょくむまっとうしようとしている。そんな彼らのことを、俺は誇らしく思うッ!」


「ぐぎぎぎぎ、貴様ァ~~~ッ!!」


ハイドラ卿が青筋あおすじをぶちぎれさせるほどにいかくるう。


しかし、その表情には明らかなあせりと、俺に対するおびえが見えていた。









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