第5章166話:裁判4
「アンリ被告が殺人犯などというのは、真っ赤な嘘であり、でっちあげだ!」
と裁判長が大声で宣言した。
もちろん俺のサイコキネシスによって操作したセリフだ。
裁判長は続ける。
「アンリ殿は次期国王にふさわしき御仁。そして、まもなく始まる国王決定戦を控える身。こんなくだらない裁判に、かかずらっている暇はない! 即刻、無罪の判決を出させてもらおう!」
「ち、血迷ったのか裁判長!? アンリを有罪にするという段取りだったはずだ!?」
とハイドラ卿が焦ったように尋ねた。
俺を陥れる算段をしていたことを、もはや隠しもしない。
しかし裁判長は告げる。
「ハイドラ卿。私はあなたの不当で、下劣な圧力に屈しはしない。司法とは、常に潔白かつ公正でなければならない!」
ハイドラ卿が驚愕と混乱で、慌てふためいている。
俺は盛大に笑った。
「くくく、くははははははははは!!!」
さらに俺は告げる。
「裁判長が、俺を無罪だと宣言しているのだ。俺は殺人犯ではなく、無実であることで決着だな?」
「貴様……まさか」
とハイドラ卿が、気づいたように俺を睨んできた。
ハイドラ卿が告げる。
「おい!! アンリが、何らかの力を使って、裁判を操ろうとしているぞ! よこしまな力で他者をコントロールし、あるべき裁判の結果を歪めようとしている!!」
そしてハイドラ卿は、背後に控えていた二人の護衛に命じた。
「おぬしたち、アンリを制圧せよ!!!」
すると護衛の騎士たちが動き出す。
男騎士と女騎士が俺のもとへと近づいてくる。
剣は抜かなかったが、戦意は滲ませていた。
「――――!」
男騎士が殴りかかってくる。
だが、俺は身をそらして回避した。
同時にカウンターの掌底を胸部に叩き込む。
「かッ!?」
男騎士がうずくまった。
追撃を加えようとしたとき、女騎士が剣を抜き、刺突を放ってくる。
しかし俺はすかさず反応し、女騎士の刺突を、素手で払いのけた。
「!?」
女騎士が驚愕に目を開く。
俺はそんな女騎士を蹴り飛ばす。
「がっ!?」
女騎士が吹っ飛んだ。
「貴様ァッ!!」
うずくまっていた男騎士が激怒しながら、剣で斬りかかってきた。
その斬撃を、俺はバックステップで回避する。
男騎士がさらに追撃の斬撃を放ってきたが、俺は斬撃をかいくぐって男騎士の懐に飛び込んだ。
次いで男騎士にアッパーカットを浴びせる。
「ぐはっ!!?」
男騎士が目を回す。
そんな男騎士の頭部を、俺はわしづかみにする
そして。
「ッ!」
グギッ!
と、男騎士の首を180度回転させた。
頚骨が粉砕して、絶命する。
俺は殺した男騎士の遺体をゴミのように放り捨てた。