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第5章162話:法廷へ

衛兵の詰め所へたどりつく。


すぐさま俺は、牢屋へとぶち込まれた。


「ここでしばらくじっとしていろ」


男性騎士だんせいきしは無愛想に言った。


立ち去ろうとする。


「おい。俺は明日の朝10時に、国王決定戦に出なければならない」


「それは無理だ」


と男性騎士が否定してきた。


だが俺は、特別な事情があれば保釈ほしゃくを受けられることを知っている。


だから言った。


「保釈をしてもらおう。国王決定戦は、保釈を適用する事由じゆになるだろう」


「だから無理だ」


「なぜだ?」


「明日の朝、貴様への裁判をおこなう」


「……裁判?」


「そうだ。朝9時からお前の裁判を開始する。お前が殺人罪の犯人かどうか、法廷で審議しんぎする」


ずいぶんいきなりだ。


連行されて翌日に裁判なんて、早すぎる。


明らかに作為的なものを感じた。


「それは困るな。言ったように、10時には総合闘技大会に出なければならないんだが」


と俺は抗議した。


「諦めろ。裁判は数時間に及ぶ。10時には間に合わない」


と男性騎士は切って捨てる。


そして男性騎士は去っていった。


(なるほどな。俺を裁判に出廷させて、保釈も封殺ふうさつするつもりか)


と俺は推測した。


(くくく、暗殺の次は裁判……手段を選ばないとは、まさにこのことだな)


俺は笑う。


そして俺は牢獄の中で、どうやってグラストンたちの策を打ち破るか、考え始めた。






牢屋で過ごす。


その気になれば、いつでも牢屋なんて脱出可能だ。


真正面まっしょうめんからおり蹴破けやぶって外に出るという、力づくの方法もあるが……


転移魔法でさっさと出ることもできる。


ただし、俺はあえて出ることはしなかった。


このまま明日の裁判に出廷しようと考えていたからだ。


(相手が裁判をやりたがっているのなら、乗ってやろう)


結局、俺は、グラストンの策を真っ向から打ち破ろうと考えた。


つまり裁判をさっさと終わらせて、国王決定戦に遅れないようにするということだ。


もちろん裁判で有罪判決ゆうざいはんけつになってしまったらいけない。


それだと牢屋に逆戻ぎゃくもどりだし、俺は犯罪者になってしまう。


きちんと無罪を勝ち取ったうえで、堂々と総合闘技大会に出場しなければならない。


(裁判は明日の朝か。楽しみだな)


と俺は不敵に笑った。






そして翌日。


朝。


晴れ。


男性騎士がやってくる。


「出ろ」


と俺に命令してきた。


「いまからお前を法廷へと連行する。暴れるなよ?」


「ああ、わかった」


俺は抵抗せず、素直に応じた。


男性騎士に先導されながら、王都の裁判所へと連れられる。


中央広場から東に向かった場所にある裁判所。


立派な建物だ。


俺は中へと足を踏み入れた。


裁判所の廊下を歩く。


途中、曲がり角で一人の老人が立っていた。


ハイドラ卿である。


「来たか。殺人犯」


とハイドラ卿は言ってきた。


俺は答える。


「俺は殺人犯などではない」


「いいや、おぬしは殺人犯だ」


とハイドラ卿は断定する。


さらにハイドラ卿は言った。


「予言しておこう。裁判官はおぬしの罪を許しはしない。わが国の法廷は、公正かつ正大だからな。おぬしのような巨悪は、正しく裁かれる」


……なるほどな。


こいつの発言を意訳いやくすると『お前を有罪に仕立したげるために、根回ねまわしは済んでいるからあきらめろ』だ。


つまり、とっくに裁判官を買収済ばいしゅうずみというわけである。


俺がアリバイや無罪の証拠を提示しても、有罪になるシナリオができあがっている。


このぶんだと有罪判決になるだけでなく、死刑を宣告される可能性もあるな。







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― 新着の感想 ―
手緩いよな…。どうやって殺されたのかを、証明しない限り、アンリが負けるって事は無いと思うなぁ。 だってさ、アンリが「サイコキネシス」を持ってる事を知ってるのは、数人しか居ないんだよ? というか、勇…
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