第5章149話:手紙
突如とした現れたフードの男女。
追い払うべきかとヴィシーが悩んでいると、フードの男がヴィシーを見つめて言った。
「いたわ。あの猫よ」
「ニャ?」
「確かに魔力を感じる。従魔ということで間違いないようだな」
とフードの男がヴィシーのことを分析する。
ただしヴィシーの正確な実力までは見抜けていない。
ヴィシーは周囲に実力を隠すため、魔力の大部分を抑制している。
ゆえにそこまで強大なモンスターだと、周囲の者が悟ることはできないのだ。
フードの男はスタスタと軽快な足取りでヴィシーに近づき、その首根っこを捕まえた。
「ニャニャ!?」
そしてアイテムバッグからミスリルの籠を取り出し、ヴィシーをぶちこむ。
「よし、ずらかるぞ」
フードの男女がヴィシーを入れた籠を持って、退散を始めた。
(なんだか面白そうだし、ちょっと様子見してみようかニャ!)
やろうと思えば、フードの男女を瞬殺できる。
しかしヴィシーは一切抵抗せず、素直に拉致されるのだった。
<アンリ視点>
ボス部屋に到達する。
シノクル迷宮の最深部にいるボスは【赤騎士】だ。
その名のとおり、赤い鎧に身を包んだ騎士。
火力が極めて高い。
しかし、逆に言えばそれだけなので、遠くから魔法などを撃ちまくっていれば倒せる。
俺の場合は【空間切断】で一発だ。
そして赤騎士を楽勝で倒した俺たちは竜玉を入手する。
竜玉をノルドゥーラに渡す。
「またコレを食わねばならんのか」
ノルドゥーラが嫌そうな顔をした。
俺は言った。
「さすがに3度目だ。慣れただろう?」
「慣れるわけがなかろう。鉱物を食うなど」
と文句を言いつつ、ノルドゥーラは竜玉を食べた。
結果、ノルドゥーラが得られた能力は【魔法斬り】だ。
これは爪攻撃などのように斬性を持つ攻撃で、魔法を斬ることができる能力だ。
斬撃性を持つ物理攻撃で魔法を無効化できるスキルである。
刃竜であるノルドゥーラと相性のいい能力だろう。
「さて、用は済んだ。帰るぞ」
「うむ」
俺たちはダンジョンから帰還する。
ダンジョンから徒歩で帰る。
時刻は昼に差しかかる時刻。
宿に到着する。
部屋に入って、俺は帰宅のあいさつをした。
「戻ったぞ」
しかしヴィシーから返事はない。
「ヴィシーはいないようじゃな」
「ああ。出かけているのか……?」
とりあえずテーブルの椅子に腰掛ける。
そのとき、ふとテーブルの上に置かれたものに目が留まった。
手紙である。
「手紙? 誰からだ?」
俺は手紙を開く。
そこには以下のように書かれていた。
『貴様の猫は拉致した。返して欲しければ、王都西の森まで、一人で来い』
……ん?
俺は一瞬、読み間違いかと思ったので、もう一度手紙を読む。
やはりそこには、ヴィシーを誘拐した旨が書かれていた。