第5章148話:ダンジョンと別視点
俺とノルドゥーラは宿を出る。
草原を歩く。
やがて森に入った。
見上げるような高木たちが立ち並ぶ樹林だ。
その樹林の奥、隠されたように存在するのがダンジョンの入り口である。
ダンジョンに入る。
そこは地下迷宮であった。
名前は『シノクル迷宮』だ。
やたらとあっちこっちに階段がある迷路。
階段を昇った先の通路が左に7つ。
右に4つ。
地下へ進む階段が9つ。
天井にも抜けられそうな階段が3つある。
「まさしく迷路じゃな」
とノルドゥーラが言った。
このダンジョンは初見だと、あちこちにある階段を昇って、通路を総当たりするしかない。
通路を探索をして疲れたら帰還してアイテムなどを補充、また通路を探索して疲れたら帰還……これを繰り返しながら、全ての通路を探索するのだ。
するとそれぞれの通路の最奥で、壁に番号が書かれている(書かれていない場所もある。その場合はハズレの通路)。
この番号を集めて横に並べるとパスワードになる。
このパスワードを、最初の部屋の右側の壁に記述すると、壁が消えて隠し通路が開く。
その隠し通路の先が最深部だ。
(番号の数は10個。とてもじゃないが、いちいち全ての通路をめぐって集めてられない)
面倒だし、時間がかかる。
幸いなことに番号は覚えている。
だから言った。
「全ての通路を総当たりはしなければ、ゴールへ辿り着けない仕様だ」
「ほう」
「だが面倒だからスキップしよう。俺はゴールへたどり着く方法を、既に知っている」
俺は右側の壁に近づいた。
そこにはパスワードを書き込む、魔法の板があった。
この板が、さながら入力フォームである。
ここに10桁のパスワードを入力する。
以下である。
『1414194092』
ちなみに覚え方としては1414194092(いよいよいくよ奥に)で覚える。
番号を入力すると、通路をふさいでいた壁が消失した。
「よし、開いたぞ」
「おおっ」
ノルドゥーラが感嘆の声をあげた。
俺たちは現れた通路を進む。
隠し通路。
しばらく進んでいくと、大きな扉が現れた。
「この扉の奥にいるボスを倒せば、竜玉が手に入る」
「そうか。新たな力を手に入れることができるわけじゃな」
「ああ。さっそくいくぞ」
そうして俺は、扉を開ける。
<別視点>
――――高級宿。
アンリたちの部屋。
アンリとノルドゥーラが出て行ったので、現在、部屋にいるのはヴィシーだけだ。
「暇ニャー」
とヴィシーはごろごろしていた。
やることがないので、
「風呂でも入るかニャ」
とヴィシーは思った。
とてとてとベランダの露天風呂へと歩いていく。
そのときだった。
「!?」
露天風呂の縁の向こうから、何者かがシュタッと現れた。
フードをかぶった男女の二人組である。
(侵入者だニャ!!)
ヴィシーはフードの男女を見つめる。
風貌からすると、相当な手練れだ。
強盗などではない。
おそらく暗殺者だろう。
アンリを狙ってやってきたのか……?