第1章15話:格闘
サイコキネシスを発動しようとした、そのとき。
「ま、待って!」
と青髪の女が言ってきた。
「わ、私たちが悪かったわ! 降参する!」
降参の意を示すように、両手をあげた。
さらに青髪の女が告げる。
「もちろん、あなたに敵意を向けたことについて、お詫びをする! お金でもアイテムでも、なんでも欲しいものがあるなら言って! 慰謝料としてちゃんと支払うから」
「……」
俺は一瞬、沈黙する。
そして、
「一つ言い忘れていたことがある」
青髪の女に向かって、告げる。
「俺は、命乞いをするやつが嫌いだ」
「――――――――」
俺は、青髪の女をサイコキネシスで爆散させた。
一瞬にして青髪の女が、ただの肉塊へと変貌する。
「あ、ああ……っ」
赤髪の女が、いよいよ青ざめた。
俺は無慈悲に告げる。
「この通り、どのような命乞いにも耳を貸すつもりはない」
「……っ」
「最初に宣言した通り、お前たちは皆殺しにする。これは決定事項だ」
赤髪の女の顔に恐怖が浮かぶ。
俺はサイコキネシスを発動しようとした。
しかし……
「……」
ふと、思い至ったことがあった。
これから、この異世界において俺は、サイコキネシスを何度も使うことになるだろうが……
今回みたく惜しげもなくチカラを見せびらかすのは、良くないかもしれない。
能力の詳細を知られたら、対策を取られる可能性があるからだ。
だからサイコキネシスが、どんな能力であるかわからないよう、カモフラージュをすべきだろう。
……よし。
一つ、考えた。
俺はさっそく試してみる。
「ぬんっ!」
俺は、自分の足にサイコキネシスをかけた。
そして、思い切り加速する。
勇者や、こいつらを殺したことで、俺のレベルが上がっていたようだ。
サイコキネシスの加速に、足の筋肉がちゃんとついてきてくれる。
俺は高速で、赤髪の女の間合いに入り込んだ。
「あっ……」
いきなり間合いに入られた赤髪の女が驚愕している。
そんな女の腹部に、俺は拳を叩き込む。
拳がヒットした瞬間。
俺はサイコキネシスで女の内臓を破裂させた。
「ごふっ!!?」
女が血を噴く。
さらに俺は、女の首筋に手刀を叩き込んだ。
瞬間。
俺はサイコキネシスで、女の頚骨をへし折った。
首の骨が折れた女が、絶命する。
「ふむ……」
俺は、満足げにうなずいた。
いまみたく、サイコキネシスで足を加速させたり、
拳や手刀がヒットした瞬間に、当たった部位をサイコキネシスで破壊したりすれば……
第三者から見ると『徒手空拳の格闘家』にしか見えないはずだ。
サイコキネシスの使い手であることは、隠すことができる。
(今後はこの戦い方を基本スタイルにして、普通のサイコキネシスは、必要なときのみ使うことにしよう)
と俺は意志を固める。
そして、この戦闘スタイルを【念力格闘術】と呼ぶことに決めた。
それから俺は、倒した4人から戦利品を回収する。
回収が終わったら、そのままガレイン岩山を下山するのだった。
第1章 完