第5章137話:準決勝開始
『良い挨拶ですね。痺れました! 今の演説に恥じない勇戦を期待させていただきます!』
と女司会者は激励を飛ばしてきた。
俺は【拡声の魔石】を女司会者に返す。
続いて女司会者はディオネのほうに歩いていった。
ディオネの前で立ち止まる。
『それでは続いて、ディオネ選手。一言あいさつをお願いします!』
女司会者はそう告げてから【拡声の魔石】を渡した。
ディオネは両手に剣を持っていて、手がふさがっている。
ゆえに片方の剣を地面に突き刺して、手をあけてから、魔石を受け取る。
あいさつを始めた。
「私は強い」
最初にディオネはそう述べた。
「だが、その強さの根源はパワーではない。私の肉体を見て、見るからにパワータイプだと思った者もいるだろう」
俺も思った。
ディオネの体格は完全にヘビー級であり、パワー重視のスタイルだと思われても仕方あるまい。
「私の強さは力と技術の掛け算によって成り立っている。パワーを磨くだけでなく、剣の技量も磨いてきたのだ」
そしてディオネは以下のように結んだ。
「現在の国王はあまりにもパワーに依存しすぎている。私はそのあり方を否定し、己が信じるあり方こそが正しいと証明する。以上だ」
あいさつが終わり、【拡声の魔石】を司会者へと返納する。
司会者は魔石を受け取ってから、告げた。
『パワーだけでなく技術も必要ということですね! ぜひ、あなたが思う信念を証明してみてください!』
かくして両者のあいさつは終了した。
あとは剣によって語り合うのみだ。
『それではお待ちかね! 準決勝第1試合を開幕したいと思います!』
女司会者の宣言により、観客が一斉に歓声を上げた。
『選手両名は、武器を構えてください!』
女司会者の指示により、ディオネは二刀流の剣を構える。
俺も剣を構えた。
お互い、武器を構えた状態で対峙する。
観客の声が次第に引いていき、静まり返る。
全員が注目する中。
戦闘の火蓋が切られた。
『では――――はじめッ!』
女司会者の開幕宣言。
同時に、ディオネが地を蹴る。
足元の地面が爆発するような勢いながらも、極めて軽やかな動きで、俺のもとへと迫ってくる。
そして。
「ハァッ!!」
ディオネが斬りかかってきた。