第5章134話:1回戦終了
これで残るのは、さきほどの魔法剣士カイトーンだけだ。
俺はカイトーンのほうを振り返る。
するとカイトーンは、剣を片付け、両手をあげた。
「降参だ」
彼は言った。
「あんたのほうが強い。どう足掻いても勝てないというのが、よくわかった」
「……そうか」
カイトーンによる降参宣言。
断る道理はない。
「ならば、一回戦は俺の勝ちだな」
審判である女役人のもとに向かう。
「終わったぞ」
女役人のもとまでやってきた俺は、戦勝の報告をした。
「1回戦、最後まで立っていたのは俺だ。試合終了の宣言をしてもらいたい」
「うーん……」
しかし女役人は返答を渋った。
彼女は俺の背後を見つめる。
「ぞろぞろ起き上がってきているみたいですが~」
女役人の視線を追って、俺は振り返る。
すると彼女の宣告通り、他の選手たちがよろよろと起き上がっている。
俺は肩をすくめた。
「……面倒だな」
一度倒された選手も、時間が経てば回復して起き上がってくる。
俺は尋ねた。
「アレを全部叩きのめさないとダメなのか?」
「そうですね~。それがルールですから~」
そうか。
ルールなら仕方ないな。
しょうがないので、俺は素早く気絶した選手たちを叩きのめすことにした。
「うがっ!?」
「あぎゃっ!!?」
「ぐばがあっ!!!?」
蹴り飛ばす。
殴り倒す。
ねじ伏せる。
そうして5分ぐらい経つと、あらかた意識のあるやつは潰すことができた。
「これでいいか?」
「はい。戦闘続行できる選手は、他にいないみたいですね~!」
と女役人は1回戦の会場である草原を、ざっと見回しながら肯定した。
さらに宣言する。
「では、終了~! 第3グループにおける1回戦の勝者は~、えっと……?」
「アンリだ」
「アンリさんです~! おめでとうございます~!」
女役人が祝福する。
そして彼女はアイテムバッグから何かを取り出して、手渡してくる。
「それではアンリさん。こちらを受け取ってください~」
「これは?」
「1回戦突破を証明する印章です~。2回戦開始の際には、こちらを必ず持参してください~。でないと2回戦に参加できず、不戦敗となりますので~」
俺は印章を受け取った。
さらに女役人は忠告した。
「2回戦は明日の朝、8時よりおこないます。開催場所は王城近くにある闘技場です~。遅れないように注意してくださいね~」
「わかった」
俺は了解してから、印章をアイテムボックスに片付ける。
そして1回戦の会場をあとにするのだった。
宿に戻る。
部屋に入ると、椅子に座っていたノルドゥーラが尋ねてきた。
「戻ったか。勝ったのか?」
「当然だ」
と俺は答える。
するとヴィシーがテーブルの上に飛び乗ってきて、祝福してくる。
「おめでとうニャ。乱戦と聞いていたけど、全然ダメージを食らってなさそうに見えるニャ」
「ほとんど無傷で突破したからな」
「ニャー! さすがわらわの主だニャ」
とヴィシーが賞賛してきた。
ノルドゥーラがつぶやく。
「あと3人倒せば、アンリが国王か」
「そうだな」
準決勝、決勝、そして国王決定戦の3回を突破すれば、晴れて国王になる。