第5章133話:速度重視
そのとき。
「……!」
俺の足元から、突如として青い炎が巻き起こった。
らせん状にうねるような炎であり、俺を取り囲んでダメージを与えようとしてくる。
(ドラゴンフレイムか)
カイトーンが、今度はドラゴンフレイムを放ってきたのだ。
例のごとく魔力で作られた炎であり、本当のドラゴンフレイムとは異なる。
「無駄だと言ったはずだ」
俺は足をトンッ、と叩く動作をする。
その直後、ドラゴンフレイムが弾け飛ぶ。
まるで気の圧力でドラゴンフレイムを吹き飛ばしたかのような演出だが、もちろんサイコキネシスである。
「お前ごときの魔法では、俺を倒すことはできん」
「くっ……」
と魔法剣士カイトーンが悔しそうにつぶやく。
そのときだった。
俺に対して、高速で迫る気配があった。
その気配は、俺のすぐ側面までやってきて、斬撃を放ってくる。
「おっと」
斬撃を、俺はバックステップで回避する。
俺に攻撃を仕掛けてきたのは最後の一人。
双剣使いの男である。
身長162センチ。
おかっぱの黒髪。
瞳の色は緑色だ。
「よく避けたな」
と賞賛の言葉を述べる。
「俺はゼス。見ての通り双剣使いだ」
そう自己紹介をした次の瞬間。
双剣使いの男――――ゼスの姿が消失する。
消えた……? と思ったが違う。
超高速で移動したのだ。
あまりの速さに、ゼスの姿が掻き消えたかのように見えただけである。
ゼスは、高速で動き回りながら告げる。
「俺の速さは王国最速だ。どれだけ貴様が強かろうと、全てを置き去りにする俺を、決して捉えることはできまい!」
なるほど、と俺は納得する。
(速度主体の戦闘スタイル……さしづめスピードスターといったところか)
確かにこの速さは凄まじい。
だが……
俺は動体視力をサイコキネシスによって強化する。
もともと戦闘中は、サイコキネシスによって動体視力を高めているが、今回はさらに高めた形だ。
おかげでゼスの姿が、しっかりと目で追えるようになった。
「ハァッ!!」
ゼスが斬りかかってくる。
俺は、その攻撃を見切って、完璧なタイミングで間合いをあわせる。
「!?」
刹那の時間の中で、ゼスが驚愕したのがわかる。
俺はゼスの脇腹に、拳を叩き込んだ。
「がはぁっ!!?」
ゼスは、完全にダウンする。
肺に肋骨が突き刺さったのだろう……血を吐いた。
その状態で、彼は告げる。
「バカ……な……この速さを、見切っただと……!?」
その言葉に、俺は応じた。
「ショックを受ける必要はない。お前の速さは見事だった。相手が俺でなければ、確実に仕留めることができていただろう」
「化け物……め……」
ゼスは、気を失って倒れ伏した。