第5章127話:開幕前
「これから1回戦をおこなう。お前たちも知っているだろうが、1回戦は乱戦形式だ。それぞれのグループで、乱戦をおこない、たった1人の勝者を決めてもらう。その勝者が、2回戦である準決勝へと進出できる」
と役人の女は説明する。
俺の場合は、同じ第三グループに振り分けられた300人の猛者たちを全て蹴散らして、頂点に立たなければならないわけだ。
それが1回戦突破の条件である。
「それでは移動を開始します~! 第三グループのみなさんは、こちらへどうぞ~! ついてきてください~!」
と別の女役人が言った。
女役人が歩き出したので、俺たち第三グループの選手が、移動を開始する。
やがて王都から少し離れた野原へとやってきた。
魔物の姿はない、のどかな草原地帯である。
遠くにいくつかの雑木林が見える。
どうやらここが1回戦の会場のようだ。
女役人が言った。
「それでは、改めてルールの説明をさせていただきます~! この第三グループにおいて、たった1人の勝者を―――――」
「最初に宣言する!!」
と、女役人の声をさえぎって、いきなり声を張り上げた者がいた。
女ファイターである。
ラフな格好をしており、筋肉質な身体つきをしていた。
彼女は近くにあった岩のうえに乗って、大声で告げた。
「最強はアタシだ!! アタシがこの中で頂点に立つ!! お前らは全員、アタシの引き立て役だァアアアア!!」
いきなりのイキリ発言。
そのとき、あちこちから野次が飛んだ。
「誰だよお前!」
「粋がってんじゃないわよ!」
「何が引き立て役だ。死ねや!」
「最強は俺だよボケ!!」
「しょぼい筋肉しやがってよ。みすぼらしいんだよ!!」
すると女ファイターはブチギレた。
特に最後の野次に対して言い返した。
「誰がしょぼい筋肉だゴラァッ!!? このスーパー筋肉が見えないのかよ、あぁン!!?」
すると野次を言ったとおぼしき男が告げた。
「見えねーな? オレ様の筋肉のほうが何倍も太えからよ!」
彼は肥満体型であり太っている。
しかし太っているといっても、まるで相撲の力士のように、脂肪の中に分厚い筋肉が存在することがわかる。
煽られた女ファイターは、岩のうえからガンを飛ばしながら、肥満男性に向かって告げた。
「テメエはゼッタイ殺すから覚悟しとけよ」
「上等だ。あとで血祭りに上げてやるよ」
バチバチと視線の圧力をぶつけあう二人。
(こいつらが国王になったら、国は終わりだな)
と俺はひそかに思った。
血の気の多いことは結構だが、王座に就くには向かない連中が多数混じっている。
そういうやつでも、最強であれば国王になれるのだから、なかなか欠陥の多いシステムである。