第5章125話:宿
役所を出ると、俺は宿屋を探した。
高台のうえにある宿屋を訪れ、チェックインをおこなう。
ベルナダ王都の街並みを見晴らすことができる高級宿だ。
その最上階に泊まる。
「美しい宿じゃな」
とノルドゥーラが言った。
「フカフカのベッドだニャー!!」
とヴィシーがはしゃぎながらベッドに飛び乗って、ゴロゴロし始めた。
高級宿なのでペット厳禁などと、狭量なことは言われない。
「……」
俺は窓からバルコニーに出た。
バルコニーは四方20メートルぐらいの広い空間である。
屋根がついており、屋根の下には風呂が存在する。
つまり優雅な露天風呂になっているのだ。
(悪くない宿だ)
と俺は率直に思った。
総合闘技大会は半月後だ。
ずっと歩き旅だったし、しばらく宿でのんびりと過ごすことにしよう。
翌朝。
俺は起床し、朝食を摂ってからバルコニーに出る。
バルコニーには風呂もあるが、ベンチとテーブルもある。
見晴らしのいいテーブル席だ。
峻厳な大自然の山々《やまやま》から降りてきた山風が、やわらかく吹きつけている。
俺はベンチに座りながら、総合闘技大会のルールブックを読むことにした。
大会ルールを確認する。
特に重要そうな部分は、以下だろう。
◆◆◆
<総合闘技大会の流れ>
総合闘技大会は全4回戦までおこなわれる。
1回戦:乱戦
2回戦:準決勝
3回戦:決勝
4回戦:国王決定戦
まず1回戦は、エントリーした選手が、全員で戦いあう乱戦形式。
この乱戦で生き残った4人だけが、準決勝へと駒を進める。
さらに準決勝、決勝をおこなって総合闘技大会の優勝者を決める。
優勝者は3日間の休息のあと、【国王決定戦】にて現国王と対戦する。
国王決定戦に勝利すれば、その者が国王へと即位する。
敗北すれば、現国王の政権が維持される。
◆◆◆
1回戦は乱戦形式でおこなわれる。
―――――総合闘技大会は、全国から参加選手が集まる大規模な大会だ。
選手の数は膨大である。
だから、数を絞るために、選手同士で大乱闘をおこなうわけだ。
その乱戦を勝ち抜いた4人だけが、2回戦へと進出する。
2回戦はトーナメント形式なので、1対1の対戦が基本となるだろう。