第5章124話:エントリー
さて、崖を下りる。
ベルナダ岩石高原の中心に横たわる王都へとやってくる。
――――ベルナダ王都。
人口10万人が暮らす巨大な王都だ。
無骨で四角い石造りの民家が立ち並ぶ。
王都の中央には大きな台地があり、そこに巨大な山城と円形闘技場がある。
あの山城こそがベルナダの王城である。
「良い雰囲気の王都じゃな。牧歌的で悪くない」
「まあ、街の景観はな」
確かに景観だけなら牧歌的だ。
しかし街を歩く人間は、さすがベルナダ王都――――戦士や冒険者のような格好をした者たちが多い。
斧を背負って歩くオッサン。
筋肉質でラフな格好をした女。
横を通り過ぎる、狩人らしき一団。
露店で物を売る商人ですら、鍛えているのがわかる風貌だ。
「んー、でもわらわからすれば、弱っちいのばかりに見えるがニャ」
それはそうだ。
国民全員が戦士教育を受けているといっても、ノルドゥーラやヴィシーより強い者は皆無だろう。
あくまで他の国よりは、平均的な戦闘能力が高いという程度だ。
「それで、どこにいくのじゃ?」
とノルドゥーラが聞いてきた。
「役所へいく。総合闘技大会のエントリーは、役所でおこなうからな」
と俺は答えながら、役所へ向かって歩き出す。
中央広場。役所。
役所は、レンガ壁で出来た建物である。
総合闘技大会のエントリー会場は2階であった。
ゆえに俺は2階のカウンターに向かう。
受付嬢が応対してくれた。
「ようこそお越しくださいました。こちらでは総合闘技大会のエントリーを受け付けております」
「ああ。エントリーしたい」
「承知しました。2名様ですか?」
と受付嬢は、俺とノルドゥーラを見つめた。
「いや、エントリーするのは俺だけだ」
ノルドゥーラは総合闘技大会には参加しない。
ヴィシーは猫だから参加できない。
国王を目指す俺だけのエントリー志望である。
「承知しました。必要書類への記載を願います。文字の読み書きが困難な場合、口頭での読み上げや、代筆が可能ですが」
「無用だ」
ベルナダ武人国の言語は、俺が習熟している言語の一つである。
ゆえに俺は、この国の文字を使っての読み書きが可能だ。
受付嬢が渡してきた書類に、必要事項を記入していく。
書き終わったら、受付嬢へと提出した。
「総合闘技大会はちょうど15日後、開催予定です。当日の午前8時、王都の正門前に集合してください。遅れると失格になりますのでご注意を」
「わかった」
「なお、こちらは、総合闘技大会のルールブックとなりますが」
「それは欲しいな」
「1000ディリンです」
有料か。
俺は1000ディリンを支払い、ルールブックを購入した。
用事が済んだので、俺は役所をあとにする。