第5章123話:新たな大地
第5章 ベルナダ武人国
ノルドゥーラに乗って、空をゆく。
やがてベルナダ武人国が見えてきた。
「そろそろ到着するぞ」
――――ベルナダ武人国。
北は雪山。
南は森林。
東は山脈や山岳が横たわり……
西は田園に草原、それから海が広がっている。
国土は広い。
さらにダンジョンも豊富で、低ランクダンジョンから高ランクダンジョンまで幅広く存在する。
ベルナダ武人国の戦士たちに言わせれば「修行できる場所が無限にある」といったところだ。
人口は700万人であり、中堅国家の規模である。
「美しい景色じゃな」
現在、俺たちがいるのはベルナダ武人国の南部だ。
壮大な森林地帯が広がり、ところどころに草原や高原、丘、岩山、大河川、岩壁などが存在している。
これぞファンタジーというべき、雄大な大自然だ。
「野蛮人ばかりの国だから、きっと荒野のような景色が広がっていると思っていたニャ!」
「まあ景色はな。国民は粗野だということで間違いない」
生まれたときから戦士として育てられる―――――
誰もが学校教育を受けられるわけではないが、学校の中でも外でも、戦士教育だけは欠かさずおこなわれる―――――
そんな国だ。
奔放で豪快な性格の者が多くなるのは当然である。
しばらく大森林の上を飛行する。
やがて、森の終わりが見えてきた。
「あの森を抜けた先で着陸するぞ」
と俺は言った。
「了解じゃ」
ノルドゥーラが翼をはためかせ、大空を悠々と翔け抜ける。
眼下に広がる大森林が終わり、草原と湖が広がる地帯に着陸することにした。
ノルドゥーラがゆるやかに湖のそばの草原のうえに着地する。
「ん。もう到着したかニャ。空の旅も悪くなかったから残念ニャ」
とヴィシーが名残惜しそうに言った。
「おぬしも空を飛べるじゃろう。空の旅を満喫したいなら、いつでも自分自身で飛べばいいのではないか?」
「自分で飛ぶのと、他人の背に乗って飛ぶのでは、勝手が違うニャ」
「そういうものかのう」
「人間でいえば、自分で走るのと、馬車に乗って走るのとでは、気分が違うだろうニャ」
「なるほど。わかりやすい喩えじゃ」
とノルドゥーラは納得した。
俺は言った。
「雑談は歩きながらやるぞ。これから王都へ向かう。しばらく徒歩だ。というわけでノルドゥーラ、竜の姿を解け」
「わかった」
ノルドゥーラが承知してから、人の姿へとへんげする。
かくして俺たちは、草原と湖に囲まれた大地を歩き始めるのだった。
数日後。
俺たちは王都の手前までやってきた。
遠くを見晴らせる崖の上。
そこから王都の姿を眺望できる。
ノルドゥーラは感想を述べる。
「なんだか、フィオリト岩原を思い出すような景色じゃな」
「そうだな。ここは【ベルナダ岩石高原】と呼ばれていて、フィオリト岩原と景観は近いな」
と俺は同意した。
【ベルナダ岩石高原】は、あちこちに岩石や断崖が存在する高原だ。
アルプス感のある高原地帯である。
高原という名のとおり、山のうえに存在する草原。
つまりベルナダ王都も山のうえに存在するというわけである。
その点についてヴィシーが述べた。
「山のうえにある王都……戦争を想定した立地ということかニャ」
ベルナダ岩石高原は、峻厳な地に広がる草原である。
自然の要衝でもあるため、攻めるに難く、守るに易い。
つまり戦争において有利な立地といえるが……
「いいや、そんな御立派な理由ではないだろう」
と俺は告げた。
ベルナダ武人国の基本的なメンタリティは脳筋である。
ゆえに合理的な理由で王都の立地を決めたわけではなく。
『峻厳な地にあったほうが修行できる場所が多い』
とか。
『山のうえにあったほうが、王都を訪れる際に足腰を鍛えられる』
とか、そんなところだろう。
(だいたい、こういう立地だと、よその都市との連携も取りづらいしな。俺が王になった暁には、遷都してもいいぐらいだ)
と俺は思った。