第4章122話:次なる旅へ
「ようやくダンジョンに潜る日々が終わったな。で……? 次はどこにいくのじゃ?」
とノルドゥーラが聞いてきた。
俺は答える。
「次の行き先は【ベルナダ武人国】にしたいと考えている」
「ベルナダ武人国……聞いたことがあるな。たしか戦士の国だとか」
「そうだ」
と俺は肯定した。
武人国という名の通り、ベルナダは武を重んじている国家である。
全ての国民が武術や剣術を学び、戦士として育てられる。
相手を殺さない範囲での私闘が合法であり、日常的に喧嘩や闘争、ストリートファイトがおこなわれている。
「ベルナダ武人国では、5年に1度、国王を選出するための闘技大会がおこなわれる。そこで優勝した者が、国王への挑戦権を得られ、国王を討伐することができれば、王となれるのだ」
ベルナダ武人国は、武を重んじているだけあって、国王さえも強さによって選出される。
国の統治者は最強の戦士でなければならない――――というのが国是だからだ。
5年に1度だけ開催される【総合闘技大会】に優勝し、そのあとで現国王を倒すことができれば、新しい国王に即位できるのだ。
「野蛮人のような国だニャ。強いからといって国を治められるとは限らないニャ」
「そうだな。だから実際のところ、国の統治は王や武官ではなく、文官たちがおこなっている」
ベルナダ武人国において、王になるための条件は『強さ』だけだ。
即位にあたって、政治や経済に関する知識や資質は問われない。
しかし現実問題、脳みそが筋肉でできている者に国の統治を任せられないだろう。
だから結局、国政については頭のいいエリート官僚たちがおこなっている。
官吏が縁の下を支え、そのうえで戦士たちが活躍する国なのだ。
「そして今年、【総合闘技大会】が開催されることになっている。俺は大会に出場し、国王を討伐しようと思う」
「なんじゃと? それはつまり、国王になるということか?」
「ああ。ベルナダ武人国の王室には、欲しいアイテムが眠っているからな」
そのアイテムを入手するために、王を目指すというわけだ。
「しかし王になるといろいろ面倒ではないかニャ? 仕事も多くて大変ニャ」
「いや……さっきも言った通り、政治については官吏がおこなう。俺はただ王になるだけで、国政については部下に丸投げするつもりだ」
「なんという無責任な王じゃ」
とノルドゥーラは呆れたような顔をした。
……まあ、王になった以上は、ある程度の仕事はすると思う。
基本、丸投げするつもりなのは事実だが。
「ともかく、次の方針はそんなところだ。だからまずはベルナダ武人国へ向かおう」
「転移魔法を使うのかニャ?」
「……いや、一度も行ったことが無い場所へ転移することは不可能だ。ベルナダ武人国には、ノルドゥーラに乗って向かうことになるだろう」
「ニャニャ! 竜の背中に乗れるのかニャ! それは楽しみニャ!」
とヴィシーが期待をにじませて、はしゃいだ。
かくして俺たちは、リュドラウスの大断崖をあとにする。
新たな旅が始まりを迎えるのだった。
第4章 完