第4章119話:戦闘後
「そうか。では契約を交わそう」
「わかったニャ」
と猫魔神ヴィシーが応じた。
俺は猫魔神ヴィシーに手をかざす。
魔法によって契約の紋章を与える。
ヴィシーがそれを受け入れ、契約が成立した。
これでヴィシーは俺の従魔となる。
「これからよろしく頼むぞ、猫魔神ヴィシー」
「こちらこそだニャ!!」
猫魔神ヴィシーは元気に返事をした。
俺はヴィシーにポーションを与えて、負ったダメージを回復させてやることにした。
ちょうどそのとき。
「終わったようじゃな」
とノルドゥーラがやってきた。
「ああ。無事にこいつを仲間にすることができた」
俺はヴィシーに回復ポーションをぶっかけながら、そう答えた。
ヴィシーが言った。
「ポーションありがとうニャ。ところでだニャ」
「ん?」
「わらわはお前たちの名前すら、まだ聞いてないニャ」
「ああ。そういえば名乗っていなかったか」
「ニャ!」
完全に忘れていた。
だから俺は自己紹介をすることにした。
「俺はアンリだ。こっちはノルドゥーラ。ちなみに俺は人間だが、ノルドゥーラは刃竜だ」
「ん? 刃竜? どう見ても人間だがニャ」
とヴィシーは首をかしげる。
現在のノルドゥーラは人間の姿をしている。
ゆえに俺は指示した。
「真の姿を見せてやれ」
「相分かった」
ノルドゥーラが応じてから、竜の姿へと戻る。
「ぬおおおお! 本当に竜だニャ! わらわよりもでかいニャ!!」
猫魔神ヴィシーは目を丸くして、興奮した。
竜の姿になったノルドゥーラは静かに答える。
「図体は大きくても、実力はおぬしのほうが遥かに上じゃ」
「んーむ、確かにわらわのほうが強いニャ。でもお前も悪くないニャ。ここのダンジョンの下層でも十分戦える強さはあるだろうニャ」
ヴィシーは、見ただけでノルドゥーラの力を看破している。
ノルドゥーラは強いが、ヴィシーほどではないのもまた事実だ。
「それはアンリのおかげじゃな。元の我は、今よりずっと弱い」
「アンリのおかげというのは、こいつに鍛えてもらったということかニャ?」
「その通りじゃ」
「ふむー。アンリは確かに実力がオバケだし、師事すれば強くなれるだろうニャ。けれどそもそも、アンリは何者なのニャ? ここまで強い人間というのは、過去に記憶がないニャ。はっきり言って異常な強さだニャ」
とヴィシーが尋ねてきた。
「俺のことは、そのうち知れるだろう。これから長い付き合いになるだろうからな」
と俺は応じた。