第4章118話:ボス部屋4
吹っ飛んだ猫魔神ヴィシー。
やがて地面に叩きつけられ、もんどり打ってから、受身を取る。
ヴィシーは理解しがたいといった表情で、言ってきた。
「わ、わらわが吹っ飛ばされるとは……なんという攻撃力ニャ」
「それほど強く殴ったつもりはないがな? 今のでも全力の30%ぐらいだ」
大げさに言ったわけではなく、実際に念力格闘術は、全力の半分にも満たない。
サイコキネシスの真骨頂は格闘ではないからだ。
あくまで格闘は俺にとって、手加減でしかない。
しかしそれを知らないヴィシーは鼻を鳴らす。
「ふン。いくらなんでも強がりだニャ!」
「……」
「たしかに強大な一撃でビックリしたニャ。でも、わらわに敗北を予感させるほどではないニャ! しょせんは人間、わらわに届くことなどありはしないのニャ」
猫魔神ヴィシーは自信と余裕に満ちている。
生まれたときから負けたことがない最強モンスターだ。
自分の勝利を微塵も疑っていない。
「そうか。ならば少しだけ本気を見せてやる」
と俺は告げた。
そして猫魔神ヴィシーに向かって、手をかざす。
「あらがえるものならば、あらがってみるがいい」
直後。
俺はサイコキネシスを発動した。
「ニャ!? ニャアアアアアアッ!!?」
サイコキネシスの圧力が、まるで重力のごとく、猫魔神ヴィシーにのしかかる。
四本足で立つヴィシーが、サイコキネシスの重圧に負けて、べたっと地面にへばりついた。
「お、重いニャ!? 動けないニャアッ!!?」
猫魔神ヴィシーはなんとか起き上がろうとする。
しかしサイコキネシスの圧力を跳ね退けることはできない。
完全に身動きが取れなくなったヴィシー。
そんなヴィシーの顔面を、俺はサッカーボールのごとく蹴り飛ばす。
「グフッ!!?」
ヴィシーがふたたび空中に打ち上げられる。
そんなヴィシーの身体にサイコキネシスをかけて、空中に滞空させ―――――
地面に思い切り落下させた。
顔面から地面に突っ込んだヴィシーが、大地を砕いて青いマグマに突っ込む。
ヴィシーはマグマにまみれても火傷を負わない耐性を持っているが、大地に勢いよく叩きつけられた衝撃で目を回している。
俺はそんなヴィシーの頭上に滞空し、その背にかかと落としを叩き込んだ。
「ウギャッ!?」
さらに側面に回りこんで脇腹を蹴りつけようとする。
このときヴィシーは俺の攻撃から逃れようとした。
しかし俺はサイコキネシスで、ヴィシーに金縛りをかける。
「!?」
ヴィシーが固まって動けなくなったところで、俺はヴィシーの脇腹を堂々と蹴りつけた。
「ヌグァッ!?」
もんどり打ったものの受身を取るヴィシー。
そこでヴィシーは魔法による反撃をおこなってきた。
いかずちと竜巻の攻撃だ。
「俺には効かんと知ったはずだ」
一笑に付したのち、俺はいかずちと竜巻を、サイコキネシスで霧散させた。
「ニャッ!?」
目を見開くヴィシーに、俺は近づく。
そのアゴにアッパーカットを叩き込んだ。
「アギャアッ!!?」
ヴィシーが空中で一回転し、再度、倒れた。
俺はいったん、そこで攻撃をストップする。
ヴィシーはぐったりした状態で、つぶやいた。
「わ、わらわがこんな一方的にやられるなんて……有り得ないニャ……」
「現実だ。このまま殺すまで攻撃してやってもいいが……どうする? まだ続けるか?」
尋ねると、ヴィシーは答えた。
「いいや……魔法も効かず、物理でも圧倒されるなら勝ち目はないニャ。わらわよりも、お前のほうが強いのはわかったニャ」
さらにヴィシーは続ける。
「負けを認めるニャ。約束通り、お前の仲間になるニャ」
その言葉に、俺は満足げに微笑んだ。