第4章114話:ダンジョン5
かくして俺たちは、リュドラウス・ダンジョンの下層に潜って、15日間ものあいだパワーレベリングをおこなった。
下層は20階がボス部屋なので、12階~19階を行ったり来たりしながら、ひたすら魔物を狩りまくった。
ノルドゥーラのレベルが劇的に向上する。
最終的にノルドゥーラは、俺のサポートやネリスヴォルンがなくても、ソロで下層の魔物を討伐できるようになっていた。
「どうだ? パワーレベリングを経た実感は?」
「ああ! 半月前とは比べ物にならんほど力がみなぎっておる。我は強くなった!」
と本人も、力の向上を感じているようだ。
実際にノルドゥーラから感じる圧力は、格段に強くなっている。
体格が変わったわけではないのに、威圧感が違うのだ。
「ならば、そろそろレベリングは終了でいいだろう。さすがに下層の景色にも飽いてきたところだしな」
15日も同じようなフロアに潜っていたので、下層の景色に飽き飽きしていた。
さすがに違う刺激が欲しいと思っていたところだ。
「このまま引きあげるのか?」
とノルドゥーラが尋ねてきた。
「いや、ダンジョンを出る前にボスを倒すつもりだ」
「ほう? 20階のボス部屋を攻略するということか」
「その通りだ。ボスを倒すと宝部屋があるが、そこには【スレネの鍵】で開けられる扉があるのだ。せっかく鍵を手に入れたので、使っておきたい」
先日殺した女盗賊から回収できたスレネの鍵は、このダンジョンの最下層で使うことができる。
ノルドゥーラが怪訝そうな顔で言った。
「ボス部屋で使う鍵なのか。ちんけな盗賊が持っていたにしては、かなり希少な鍵ではないか」
「まあ使い道がわからなかったのだろう。用途不明なものはガラクタと同じだ。ゆえにスレネの鍵は、世間では格安で出回っていたりする」
「なるほどのう」
スレネの鍵は、間違いなくレアアイテムではあるが、普通の人間には使う機会のない代物だ。
ゆえにゴミと変わらず、捨てられたり、捨て値で販売されていたりするのだ。
(あと、ここのボスと戦う目的はもう一つある)
と俺は内心でつぶやく。
それは、このダンジョンボスを仲間にすることだ。
このリュドラウスダンジョンの最終ボスは、倒すと仲間になるのだ。
殺してしまったら仲間にはならないが、殺さず制圧することで、味方パーティーに加えることができる。
「しかし、ハイレベルなダンジョンのボスじゃ……おぬしでも、さすがに苦戦するのではないか?」
「誰に言っている」
と俺は微笑みながら答えた。
「俺が苦戦することなど、万に一つもありえない」
そうして俺たちはダンジョンの最下層――――20階へとやってきた。
ボス部屋前。
高さ10メートルはあるだろう、巨大な扉がそびえている。
この扉の先に、ボスがいる。
俺はさっそく扉を開けて、ボス部屋の中に入るのだった。