第4章113話:ダンジョン4
ハバルデーモンの目的は、俺たちが着地できる足場を消滅させることだ。
(ダンジョンの足場は、一定時間が経てば再構築されるが……それまでは消えた状態が維持されるからな)
つまり、浮遊魔法や滞空スキルを習得していなければ、俺たちは着地する場所がなく、マグマに落ちて即死させられていたわけだ。
一応、ハバルデーモンの衝撃波は200メートル圏内にしか及んでおらず、その範囲外であれば大地は残存している。
が……普通の冒険者であれば、200メートルもの地面が消し飛んだ時点で詰みだろう。
「あのような魔物に勝てるのか?」
とノルドゥーラが冷や汗を浮かべて尋ねてきた。
俺は答えた。
「勝てる。とりあえず動きを止めるぞ。槍を準備しておけ」
「あ、ああ」
ノルドゥーラが霊槍ネリスヴォルンを取り出す。
大地が消失したことで、ハバルデーモンは翼をばたつかせて宙に浮いていた。
俺はサイコキネシスを発動する。
「―――――――!!」
ハバルデーモンが目を見開く。
サイコキネシスによる金縛り。
ハバルデーモンは空中に滞空したまま、硬直する。
サイコキネシスの束縛から逃れようとしているが、ハバルデーモンごときに俺の拘束を解くことはできない。
「よし。これで束縛完了だ」
「……相変わらず、規格外の能力じゃな。あのようなバケモノを拘束するなど」
「ああ、俺のサイコキネシスは最強だとも。……さあ、ネリスヴォルンで射殺せ」
「うむ。わかった」
ノルドゥーラが霊槍を振りかぶる。
そしてハバルデーモン目掛けて、投擲した。
ノルドゥーラが投げた槍がまっすぐハバルデーモンに飛来し、その胸に直撃する。
胸の周辺をえぐりちらしながら貫通した槍。
ハバルデーモンの胸に大穴が空いた。
致命傷だ。
ちなみに、そのまま槍はマグマに突っ込みそうになったが、直前で、俺はサイコキネシスを使って制止させた。
「やったな」
と俺は言った。
槍をサイコキネシスで引き寄せて、ノルドゥーラの手元へと返す。
ノルドゥーラは槍を受け取りながら、つぶやいた。
「我の力だけでは、あの魔物を殺せなかったじゃろう。さすが精霊の槍は強いな」
「そうだな。この世界に存在する最強の武器だろうからな。その一振りで国をも滅ぼす力を持っている」
だからこそノルドゥーラのパワーレベリングが成立するのだ。
たとえどれほど硬い敵が現れても、霊槍ネリスヴォルンの破壊力には耐えられまい。
「この調子で、下層の敵を狩りまくるぞ」
「うむ、承知したぞ!」
とノルドゥーラが朗々と返事した。