第4章109話:断崖
回収作業が終わる。
案の定というべきか、ほとんどの盗賊の持ち物は微妙だった。
しかし青髪の女盗賊の持っていたアイテムバッグの中に【スレネの鍵】と呼ばれるアイテムがあった。
うっすらと青色に発光する宝剣の形をした鍵である。
この鍵は、高ランクダンジョンなどにある特殊扉を開けるために使われるものだ。
「ちょうどいいな」
と俺は、手に持った【スレネの鍵】を見つめながら言った。
「何がちょうどいいのじゃ?」
「これから向かう高ランクダンジョンで、この鍵は使えるのだ」
「ふむ……高ランクダンジョンに行くのか?」
「ああ。お前のレベリングのためだと、さっき話しただろ」
「おっと、そうじゃったな。盗賊どもが現れたせいで忘れておったわ」
とノルドゥーラが得心する。
俺は、ノルドゥーラの背中に飛び乗る。
「さっそく行くぞ。南に向かって飛ぶがいい」
「南じゃな。わかった」
とノルドゥーラは了解して、翼をはためかせた。
空へと飛翔する。
しばらく空をゆく。
南へと飛翔し続ける。
数時間が経ち、日が暮れてきたころ。
その場所へと到着する。
「おお……ッ」
とノルドゥーラが声をあげた。
辿り着いたのは、そそり立つ断崖絶壁である。
天を突き抜けるほど巨大な断崖であり、高さは数百メートルものあろうと思われる。
天頂は雲の上にあり、俺たちがいる高度からでは確認することができない。
「壮観だろう? これが、目的地である【リュドラウスの大断崖】だ」
「大断崖……」
「ああ。まずはてっぺんまで昇れ。そこがダンジョンの入り口だ」
「わかった」
ノルドゥーラが了解し、上へ上へと飛翔し始める。
大断崖のそばを昇天していく。
やがて雲を突き抜けた先に、大断崖の天頂が存在した。
天頂を、さらに上から見下ろす高度までノルドゥーラが上り詰める。
大断崖の天頂は、円形の地平だ。
その中央に、下へと続く巨大な階段があった。
「中央に階段があるな」
「ああ。あれがダンジョンの入り口だ」
「なるほどのう」
「……当たり前だが、こういう秘境じみたダンジョンゆえに、難易度が高い。出てくる魔物も、お前より強いものもいるぞ」
刃竜は、生態系の頂点ともいえる強さを持つ魔物ではあるものの、最強ではない。
それを真の最強へと押し上げるには、レベリングが必要である。
【リュドラウスの大断崖】はクリア後のダンジョンとして位置づけられており、魔物は強いが、得られる経験値も膨大だ。
ゆえに刃竜のレベリングにはもってこいである。
「そんな魔物と戦って、我が勝利できるのか?」
「俺がサポートしてやる。いわゆるパワーレベリングだ」
「ぱわーれべりんぐ?」
「強いやつに手助けしてもらいながらレベリングすることだ」
と俺は説明しつつ、言った。
「さっそく着陸しよう。天頂に着地しろ」
「承知した」
とノルドゥーラは応じて、大断崖の天頂へと着陸する。