第4章108話:竜
「ぬんっ!!」
とノルドゥーラが変身のスキルを使い始めた。
ノルドゥーラの身体が発光し、みるみる巨大化していく。
人型から竜の姿へと、ノルドゥーラがへんげした。
「ええええええええーーッッ!!?」
と女盗賊は絶叫する。
数十メートルものサイズがある刃竜ノルドゥーラ。
上級の巨大竜だけあって、その偉容は凄まじいものがある。
女盗賊が召喚したグレートオーガも巨大ではあるが、ノルドゥーラに比べれば赤子のようなものだ。
俺は言った。
「こいつは刃竜。上級ドラゴンだ」
すると女盗賊が悲鳴じみた声をあげる。
「は、は、はりゅううぅぅぅううっ!!??!?」
どうやら刃竜のことを知っているらしい。
まあ、ノルドゥーラはフィオリト岩原をたった一匹で支配していたぐらいだし、この近辺の国々では有名な竜だろうな。
「ふンッ!!」
とノルドゥーラが呼気とともに、尻尾を素早く動かした。
ぎゅんっ、と伸びた尻尾がグレートオーガに直撃する。
ノルドゥーラは刃竜というだけあって、全身に刃がついており、尻尾もその一つだ。
尻尾の先端についた刃が、グレートオーガを真っ二つに両断する。
たった一撃でグレートオーガを即死させる。
俺は賞賛した。
「さすが刃竜だな。尻尾攻撃の切れ味も抜群だ」
「あ、あ……ッ」
と女盗賊が腰を抜かして、尻餅をついた。
自身が誇るグレートオーガが瞬殺されたことで、女盗賊の顔に絶望が立ちこめる。
「わた、私の、グレートオーガが……そんな……っ!」
「格の違いを理解したか? 人間」
とノルドゥーラが告げた。
「己の愚劣さを悔いて死ぬがいい」
「ひっ!!? ま、待ってください! なんでもします! だから許してください!!」
と女盗賊が命乞いをしてきた。
口調も敬語に変わっている。
「お願いします!! あなたがたに絶対服従します! ですから、どうかお慈悲を……ッ!!」
「俺は命乞いをするヤツが嫌いだ」
と俺が言うと、ノルドゥーラが告げた。
「だそうじゃ。諦めて、いさぎよく死ね」
「待ッ――――」
必死で命乞いをしようとする女盗賊の声がさえぎられた。
代わりに、肉が切断され、血が弾ける音がする。
ノルドゥーラが斬風を使って、女盗賊を切り刻んだのだ。
女盗賊が絶命する。
「終わったな」
と俺はつぶやいた。
「一応、戦利品だけ回収しておくか。……まあ、ろくなものを持っていなさそうだが」
そう述べてから、俺はサイコキネシスを使って、盗賊たちから戦利品を回収するのだった。