第4章104話:ため息
竜玉の入手が完了したので、俺たちは外に出ることにする。
穴から落下してきた俺たちは、帰りは穴を登らなければならないが……
俺もノルドゥーラも飛行能力があるので、特に支障なくダンジョン入り口まで帰りつくことができた。
そのままダンジョンを出る。
「次はどこへ行く?」
「そうだな。次はお前のレベリングをおこなおうと思う」
「レベリングじゃと? 前にも言ったと思うが、我はレベルが上がるのは極めて遅いぞ」
竜は初期ステータスが高いものの、成長速度が遅めに設定されている。
特に刃竜は上級ドラゴンなので、レベルアップまでの必要経験値が膨大である。
だが……
「高ランクダンジョンへ向かう。そうすれば、多少は速くレベルアップが可能だろう」
「ふむ……まあそれはそうじゃが」
「だから可能な限り、レベルを上げておこう。ついでに目ぼしいアイテムも確保して――――――」
「いたぞ!」
と。
いきなり声があがった。
俺たちは声のしたほうを振り向く。
すると、森の中からぞろぞろと盗賊たちが現れた。
「また盗賊か……」
とノルドゥーラが呆れ顔でつぶやいた。
さきほども4人の盗賊に絡まれたが、今回は少し状況が異なる。
とにかく数が多い。
10人。
20人。
いや、それ以上いるだろうか?
大勢の盗賊に取り囲まれていた。
「で? こいつらが、仲間を殺ったって?」
リーダー格とおぼしき青い長髪をした女盗賊。
彼女が、スキンヘッドの男盗賊に尋ねていた。
スキンヘッドの男は答える。
「そうです! 間違いねえ、この二人が俺のパーティーを殺したんだ!」
あのスキンヘッドには見覚えがある。
さきほどの4人組の男盗賊たちの中にいた一人だ。
仲間がやられたことで、おびえて逃亡した彼を、殺さずに放っておいたのだ。
察するに、スキンヘッドの彼は逃げ延びたあと、俺たちのことを盗賊団の団員たちに報告し……
こうして復讐にやってきたというわけだ。
「そうなのね。全く、うちの盗賊団に手を出すなんてさあ……とんだ命知らずがいたものね」
と青髪の女盗賊は微笑んだ。
俺は告げた。
「仲間の復讐にきたか」
「ええ、そうよ」
と女盗賊は答えた。
俺は弁解した。
「さきほどのアレは正当防衛だ。いきなり斬りかかられたもので、つい反撃して殺してしまっただけだ」
するとスキンヘッドの男盗賊が怒鳴った。
「ふざけるな! 先に縄張りに踏み込んできたのはテメエらだろうが!」
それに対して俺は答える。
「縄張りといっても、お前たち盗賊どもが勝手に主張しているだけだろう? ここがお前たちの土地だと、国や領主に許可をもらっているのか?」
「もらってないわね」
と女盗賊。
俺は肩をすくめる。
「ならば、勝手に踏み入っても問題ないな」
「法的にはそうでしょうけど、そういう問題じゃないのよ。あたしたちが根城にしている場所に、許可なく立ち入ったことは、誰であれ罪。慰謝料として大金を払うか、相応の罰を受けてもらわなくちゃいけない。ましてやうちの仲間を殺したとあれば、タダで逃がすわけにはいかないわね」
そう述べたあと、女盗賊は以下のようにまとめた。
「簡単にいえば、舐めた連中はみんなぶち殺すってこと。おわかりいただけたかしら?」
俺はため息をつく。
ノルドゥーラも同様にため息をついていた。