「かけがえのないもの」
晴れてセイジ達は、魔術師ソシルの拘束に成功した。
離れ離れになっていたケイヤとクロと合流した後、拘束したソシルを警察隊へ渡して一同は帰路へつく。
猫耳女ことホーリーは、警察隊まで一緒にいた。彼女の蔓がソシルを拘束していたのだから当然だ。
魔術師ソシルの引き渡しが完了すると、ホーリーは己の主が待つ家へと帰っていった。
残ったセイジらが家へ無事に到着すると、ハクエが開口一番に頭を下げる。
「今回は本当にすいませんでした。貴方達に迷惑をかけてしまって…。」
「謝る必要はないんじゃないか?魔術師も倒せた訳だしな。」
「つぅか、これから似たようなことがあっても謝罪は無しにしようぜ。」
「そうだね!ごめんね、よりありがとうの方が嬉しいし!」
ケイヤの提案に、手を合わせてクロが同意する。彼らもまた、仲間に迷惑をかけて謝罪をした経験があった。
だからこそ、仲間ならば一々謝罪なんて要らないと主張。
セイジも異論はない。
頭を上げたハクエは恐る恐る前を向く。そこには、確かに怒りを見せている仲間など一人もいなかった。
むしろ、自身を受け入れてくれている。だったら話は早い。
「ありがとうございます!それでは今日は、私が腕によりをかけて夕飯を担当しましょう!リクエストはありますか?」
「僕、ステーキ!」
「俺はケーキだ!」
「ガキかオメェらは…。」
賑やかな仲間に囲まれて、ハクエは今一度決意する。
変化のない人間なんて居ないのだ。だからこそ、今日も明日もハクエは信じていける。
誰も彼もが変わっていけると。その為に、教師を目指すのだと。
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食事を終えたハクエは片付けをしていた。
料理は片付けまでも含まれるとよく言われるので、抜かりはない。
綺麗に平らげられた皿を運んでいると、脇からセイジが小皿を持ってきた。
「この量は一人だと大変だろう。」
「ありがとうございます。」
キッチンは居間とは別にある。比較すると手狭な場所だが、壁を隔ててすぐ横にあるので行き来はしやすい。
「そういえば、クロとケイヤが妙なことを言っていましたよ。」
「妙なこと…?」
「はい。魔術師ソシルと戦った時に言われたそうです。貴方は何か隠し事をしているから気を付けたほうが良い、と。」
セイジは泡立てて、皿を洗う手を止める。
隠し事をしている。仲間たちはそう忠告されたらしい。だが、生憎セイジ自身には心当たりなんてなかった。
洗った皿の水分を布巾で拭くハクエは、彼を見かねて言う。
「まぁ、2人は突っぱねたそうですが。隠し事なんて人間ひとつやふたつあるからって。」
「そ、そうか。」
「気にするなって言うのも変ですが。まぁ、そんなに深刻なことではありませんよ。」
だから悩む必要はない。そう言いたげに、ハクエは微笑む。
ケイヤとクロも気にしてはいないのだ。ならば、セイジだって気に病む必要はない。
そう自分に言い聞かせる。今は取り敢えず、目下の皿洗いをこなすことだけ考えよう。
部屋には皿が僅かにぶつかる音のみ響く。
カチャカチャと鳴る音に意識を委ねていると、何やら部屋の外が騒がしくなった。
走っているのか、忙しない足音が聞こえたかと思うとキッチンを区切る扉が開く。
「ハクエちゃん!これ!着けてほしいですにゃ!」
「ホーリーさん!?急にどうしたんですか!?」
「とにかく!これをあげますにゃ!」
いきなりキッチンへ侵入したホーリーは、息を整えながらもハクエへネックレスを渡す。
そのネックレスには小さな陶器の猫型人形がついており、金属製のチェーンで仕上げられた可愛らしい一品であった。
光るものにも目がないセイジは、きらりと光るネックレスを見逃しはしない。
小さくとも、光を反射した猫の人形。それを目にしたセイジは、ハクエへ近付きネックレスをよく観察する。
「この人形…焼き人形か?」
「そうですにゃ!お守り代わりに持ってて欲しいんですにゃ!」
「ありがとうございます、ホーリーさん。」
何故唐突にネックレスをプレゼントされたのか。イマイチ飲み込めないハクエであったが、ホーリーへ感謝をする。
そして貰ってばかりでは申し訳ないからと、彼女は己の部屋に何か返礼出来るものはないか探しに行く。
セイジとホーリーの2人はキッチンに残された。世間話にと、セイジは何気なく思ったことを話す。
「ホーリーは随分、ハクエを大切に想っているんだな。」
「にゃっ!?そ、それは、その、大事な友達ですからにゃ!」
「そうか。良いな。そういうの。」
大切な友人。それはセイジにも無論存在する。彼にとって、仲間たちはかけがえのない存在なのだ。
故にホーリーへシンパシーを感じて、彼は微笑む。そして、心の内で誓うのだった。
これからも自身の仲間を大切にしようと。




