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戦士の受難  作者: とんぼ。
第6章 聖女のヴェール編

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「かけがえのないもの」

 晴れてセイジ達は、魔術師ソシルの拘束に成功した。


 離れ離れになっていたケイヤとクロと合流した後、拘束したソシルを警察隊へ渡して一同は帰路へつく。


 猫耳女ことホーリーは、警察隊まで一緒にいた。彼女の蔓がソシルを拘束していたのだから当然だ。


 魔術師ソシルの引き渡しが完了すると、ホーリーは己の主が待つ家へと帰っていった。


 残ったセイジらが家へ無事に到着すると、ハクエが開口一番に頭を下げる。


 「今回は本当にすいませんでした。貴方達に迷惑をかけてしまって…。」

 「謝る必要はないんじゃないか?魔術師も倒せた訳だしな。」


 「つぅか、これから似たようなことがあっても謝罪は無しにしようぜ。」

 「そうだね!ごめんね、よりありがとうの方が嬉しいし!」


 ケイヤの提案に、手を合わせてクロが同意する。彼らもまた、仲間に迷惑をかけて謝罪をした経験があった。


 だからこそ、仲間ならば一々謝罪なんて要らないと主張。


 セイジも異論はない。


 頭を上げたハクエは恐る恐る前を向く。そこには、確かに怒りを見せている仲間など一人もいなかった。


 むしろ、自身を受け入れてくれている。だったら話は早い。


 「ありがとうございます!それでは今日は、私が腕によりをかけて夕飯を担当しましょう!リクエストはありますか?」

 「僕、ステーキ!」

 「俺はケーキだ!」

 「ガキかオメェらは…。」


 賑やかな仲間に囲まれて、ハクエは今一度決意する。


 変化のない人間なんて居ないのだ。だからこそ、今日も明日もハクエは信じていける。

 誰も彼もが変わっていけると。その為に、教師を目指すのだと。

 

―――――――――――――――――――――――

 食事を終えたハクエは片付けをしていた。


 料理は片付けまでも含まれるとよく言われるので、抜かりはない。


 綺麗に平らげられた皿を運んでいると、脇からセイジが小皿を持ってきた。


 「この量は一人だと大変だろう。」

 「ありがとうございます。」


 キッチンは居間とは別にある。比較すると手狭な場所だが、壁を隔ててすぐ横にあるので行き来はしやすい。


 「そういえば、クロとケイヤが妙なことを言っていましたよ。」

 「妙なこと…?」

 「はい。魔術師ソシルと戦った時に言われたそうです。貴方は何か隠し事をしているから気を付けたほうが良い、と。」


 セイジは泡立てて、皿を洗う手を止める。


 隠し事をしている。仲間たちはそう忠告されたらしい。だが、生憎セイジ自身には心当たりなんてなかった。


 洗った皿の水分を布巾で拭くハクエは、彼を見かねて言う。


 「まぁ、2人は突っぱねたそうですが。隠し事なんて人間ひとつやふたつあるからって。」

 「そ、そうか。」

 「気にするなって言うのも変ですが。まぁ、そんなに深刻なことではありませんよ。」


 だから悩む必要はない。そう言いたげに、ハクエは微笑む。

 ケイヤとクロも気にしてはいないのだ。ならば、セイジだって気に病む必要はない。


 そう自分に言い聞かせる。今は取り敢えず、目下の皿洗いをこなすことだけ考えよう。


 部屋には皿が僅かにぶつかる音のみ響く。


 カチャカチャと鳴る音に意識を委ねていると、何やら部屋の外が騒がしくなった。


 走っているのか、忙しない足音が聞こえたかと思うとキッチンを区切る扉が開く。


 「ハクエちゃん!これ!着けてほしいですにゃ!」

 「ホーリーさん!?急にどうしたんですか!?」

 「とにかく!これをあげますにゃ!」


 いきなりキッチンへ侵入したホーリーは、息を整えながらもハクエへネックレスを渡す。


 そのネックレスには小さな陶器の猫型人形がついており、金属製のチェーンで仕上げられた可愛らしい一品であった。


 光るものにも目がないセイジは、きらりと光るネックレスを見逃しはしない。


 小さくとも、光を反射した猫の人形。それを目にしたセイジは、ハクエへ近付きネックレスをよく観察する。


 「この人形…焼き(キュイ)人形か?」

 「そうですにゃ!お守り代わりに持ってて欲しいんですにゃ!」

 「ありがとうございます、ホーリーさん。」


 何故唐突にネックレスをプレゼントされたのか。イマイチ飲み込めないハクエであったが、ホーリーへ感謝をする。


 そして貰ってばかりでは申し訳ないからと、彼女は己の部屋に何か返礼出来るものはないか探しに行く。


 セイジとホーリーの2人はキッチンに残された。世間話にと、セイジは何気なく思ったことを話す。


 「ホーリーは随分、ハクエを大切に想っているんだな。」

 「にゃっ!?そ、それは、その、大事な友達ですからにゃ!」

 「そうか。良いな。そういうの。」


 大切な友人。それはセイジにも無論存在する。彼にとって、仲間たちはかけがえのない存在なのだ。


 故にホーリーへシンパシーを感じて、彼は微笑む。そして、心の内で誓うのだった。


 これからも自身の仲間を大切にしようと。

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