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非日常世界へようこそ  作者: 紫音
第一閉
4/28

「憎しみ---契約」

アリスには、一つどうしても確認したいことがあった。放課後一番親友の有数のもとにいき、

「ねぇ。有数一つ聞きたいことあるんだけどいい?」

「ん?なになに。別にいいよ。」

軽く挨拶を交わし、本題にはいった。

「私の手に持っているのもみえる?」

アリスは胸ポケットからシャープペンシルをとり有数の目の前に差し出した。

「?みえる?アリスなにもってるの?」

アリスの手をじっとみているが、有数にはシャープペンシルがみえていないようだった。

「なるほどね。ねぇ。ニカルなにか、しゃべってみてよ。」

小声でニカルに向かって、話した。

「うむ。了解した。おい、小娘よ我の声がきこえるか?」

ニカルをじっとみてる有数にむかって、声を発した。

「アリスどうしたの?なにか変なことでもあった?」

有数は首をかしげて、キョトンとしていた。

確かに側からしたら変なことだけど、有数には、ニカルの姿と声がみえていないことがはっきりとした。

「ううん。なんでもない、ごめんね。」

ニカルを胸ポケットにしまいながら、席を立ち帰宅の準備をした。

「んじゃ。今日わたし予定あるから、もう帰るね。じゃまた明日、バイバイ」

有数に向けて、手を振りながら帰路へと急いだ。


家に着き。自室にて、ニカルと話をしていた。

「とりあえず、有数にはみえてないのね。」

「なぜ、このようなことをする意味がある?」

「だって、もし親友が見えてていきなり。攻撃してくる可能性もあるでしょ。それをなくしておきたかったの。」

「なるほどな、一理ある。」

「でしょー。私って頭いいー。」

ふふんと鼻を鳴らし腕を組む。しかしそれは建前だ。もし、視えているのなら危険な目に遭っているかもしれない。それが心配だった。

「あと一つの問題は、どうやってあの先輩に近づくかよね。」

机に突っ伏して考え込む。もう少しすれば、3年生は卒業してしまう。そうなれば、目的を達成することができなくなってしまう。かといって浮かずに近付いて、怪我でもしたら大変だ。考えれば考えるほど、難しい。なんとかなると思いたい。


夜中誰もいない学校内に不自然に灯りが灯っている場所があった。静寂の中ブンブンと何かを振る音だけが響き渡る。

「あやつには、近づかんのか?」

「そうしたい気持ちはあるのだけどね、どうしてもきっかけというものをつくれないんだよ。」

汗を拭いながら、独り言のように喋る人物がいた。場所は運動場の中心部にある。剣道室。

「しかたないんだよ。僕たちももうすぐ卒業だからね、迂闊に行動もできないんだよ。」

ため息をつきながら、手に持っているものに話しかける。

「まぁ、あの子もこっちに近づきたいと思ってるだろうね。」

「なぜ、そう思うのだ?」

「簡単なことだよ。僕が、聴こえてしまったからだよ。」

ふふっと笑いながら、話す。

「まさか、お主。」

「うん。やらかした。」

腑抜けたようにもらした。

「お主な。少しは危機感というものを、」

「あはは、ごめん、ごめん。」

はぁっとため息をつく。

「ということは、始まるのか、救済が。」

「うん。そうなるね。だけど、あの子どっちにつくかなぁ。うまく、説得できればいいんだけど、わかりあえるかなぁ。」

腕を組み、考え込む。

「とりあえず、あやつと話ができればよいのであろう?」

「そうだけど?随分と簡単にいってくれるね?」

「それなら、一つ良い手があるぞ。」

「へぇ。面白そうじゃん。」

不敵な笑みを浮かべ夜がふけていく。


終業のチャイムが鳴り響く。

「んー。」

腕をグゥーっと伸ばして、凝り固まった体を伸ばした。

「今日も終わったぁー。」

あとは、帰りのホームルームが終われば帰宅出来る。暫くクラスメイトと談笑していると、ゴロゴロドッカーンと大きな音と共にザァーっと大雨が降ってきた。

「うぉっ!!」「急に雨?」「マジかよ!」「雨予報なんてあったか?」教室内が一気にザワザワしだす。

「傘持ってきてないよー」「やむまで学校いようかな。」各々雨が止むまでの時間潰しを考えていた。

「ねぇ。ニカル?聞こえてる?」

教室がザワザワしているのを利用して、胸ポケットにあるニカルに話しかけた。

「なんだ?お主から話しかけるとは、めずらしいな。・・・何様だ?」

アリスの雰囲気に合わせてニカルも小声で返答をしてきた。

「ちょっと気になる事あって、」

「ん?なんぞ?」

アリスがニカルに疑問を持ちかけようとした瞬間。

「全く、急に降ってきやがったな。にしても、今日雨予報なんてあったか?」

ガラガラっと教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。

「ん!ごめん。ホームルーム終わったらにする。」

急ぎ、背筋を伸ばし正面を向く。

担任が教壇に立ち、帰りのホームルームを始める。教室内に雨の音が響く。

「うっし、雨の音がウルセェが、ホームルーム始めるぞ。」

「はぁーい。」と生徒たちが返答する。

「とりあえず。これ一応課題だ。」

先生がプリントを配り始める。配布されたプリントに各々目を通す。

「うげぇ。もう考えないとなの?」「気が速くなぁい?」

プリントには、進路についての希望とかかれていた。

「まぁ、そうだろうな。こっちとしても、一応聞いておかないとなんだ。なくてもいい。親と相談してでもいい。なんでもいい、一応記入をしておいてくれ。」

担任が再度教壇に立ち、話を再開し始めた。

「まぁ、話は大きく変わるが。あと一週間で卒業式が取り行われる。おまいら2年には関係が無いが、ちゃんと出席だけはしてくれよな。」

「はーい。」

「つーわけでホームルーム終了だ。」

ポリポリの頭をかきながら話す。

「どうやらまだ、当分やみそうにはないな。お前ら傘は用意してあるのか?」

外を見るとまだ、ザァーっと大粒の雨が降っていた。

「今日雨予報なかったからもってきてないっすよー。」「一応家近いから、走っていけば済むかな。」「折り畳みあるからなんとかなります。」チラホラと声が上がる。

「そうか、各々気をつけて帰れよ。風邪ひくと大変だからな。雨が止むまで学校にいてもいいからな。親に連絡付くものは、迎え頼んでいいぞ。」

白衣のポケットに手を突っ込みながら話をする。

「長話するのもあれだ、今日は終わりだ。」

「キリーツ、レイ。」「さよーなら。」

号令がかかり、帰りのホームルームが終わる。

「どうする?」「雷遠くなったら、走って帰ろうかな?」「親に連絡してみるか。」「とりあえず、図書室いくか。」

ホームルームが終わると、教室内がザワザワとしだす。

「・・・おい。もうよいか?」

暫く黙っていた、ニカルが話しかけてきた。

「あぁ、ごめん。えっと。どこまではなしたっけ?」

ニカルとの話の途中だったことを思いだし、話を再開しようとした。

「教室で話して良いのか?周りにひとがおらぬと場所で話をせぬか?」

ニカルの声を聞いて、ハッとしてしまった。

「あっそうか。」

ここが教室で周りの目を1番気にするということを忘れていた。大きな雷が鳴っていれば不自然ではないだろうと思ってしまった。

「うーん。どこにしよう、。」

アリスが場所を考えていると。

「んじゃ、アリスまた明日。」

軽やかな足取りで、有数が教室を飛び出していった。

「あっ。いっちゃった。」

ゴロゴロドッカーン。地響きの様に雷が鳴っている。

「うるさっ。」

「放課後でも、幾人かは教室に残るのだな。」

ニカルに言われ周りをみるとチラホラと雨宿りのためか、教室にクラスメイトが残っていた。

「・・・そうね。これじゃ、まともに話ができないわね。」

ふぅっと軽くため息をつき、考え込む。

「とりあえず、人気のない場所にいきましょうか?」

帰る用意をして、トコトコと教室を後にする。

「放課後にあんまり人が来ない場所かぁ?どこかあるかな?」

ぶつぶつと考えるながら廊下を歩く。

「あっ、あそこなら。」

放課後人気がない場所を思いつき、早足で向かう。

「ついたついた。」

「こんなところで良いのか?」

アリスがたどり着いた場所は、美術室だった。アリスの教室から一階上がり三階の角教室となっている。普段は、デザイン部の生徒や美術の先生が放課後にクラブの活動として利用しているが、週一の火曜日しか活動をしない為、クラブ活動がない日は空き室になっている。部屋の電気をつけ、適当な席に座り。机の上にニカルを置き話を始める。外ではまだ雷とともに大雨が降り続いているた。

「これじゃ暫くやみそうにないわね。」

外を見ながら呟く。

「親に迎えを頼めば良いではないか?」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、今日両親共に帰りが遅いのよ。」

スマホに来ていた。両親からのメッセージを見て、アリスは机につっぷした。

「そうか、それは残念だな。我も濡れるのは最小限にしたいからな。」

「あんたは、胸ポケットにずっとはいってるから楽でしょ。濡れのはわたしなのよ。」

遠い目をして、ニカルに話しかける。暫くの沈黙の後。

「・・・して、話とはなんだ?」

ニカルが本題へと話を振った。

「あっそうだ。その件でここまできたんだった。」

思い出したかの様に、アリスはニカルに向かって話をはじめる。

「話っていうより、確認したいことなのかな?」

アリスが話を始める。

「確認?今更なにを、」

「あんたについては、わからない事だらけでしょ」

「うむ。確かにそうだな。」

はぁっとため息をつき話を再開する。

「それでね、確認なんだけど、雷が鳴る前あんた、謎の声聞こえなかった?」

ニカルに向かって質問をする。

「声?ワレは学校では声を出すのを禁止されているではないか。出すわけなかろう。」

確かに学校では、独り言をいって距離を置かれないために、ニカルにはずっと黙ってもらっている。

「だよね。」

「声がどうしたのだ?」

ニカルが不思議にアリスにきいた。

「前にも確認したけど、あんたの声は視える者にしかきこえないのよね?」

「あぁそうだ。どういう理屈でそうなっているか、わからないがな。」

「そうよね。有数にも聞こえてないんだし。」

アリスが深く考え込む。

「ええぃ、もったいぶらずに話をせんか」

ニカルが声を荒げた。一人で考えていても仕方ない。

「そ、そうね。ごめん。ごめん。」

両手を合わせて、ニカルに向かって謝る。

「あの雷が鳴る前に、聞こえたの。」

「聞こえた?」

アリスがコクリと頷く。

「ハッキリとじゃなかったけど、さぁ救済を始めよう。って。」

「・・・幻聴ではないのか?」

ニカルが問う。

「わたしだって、幻聴だとおもったわよ。でも、鳥肌がたっちゃって。あれが、幻聴ならハッキリしすぎだと思って。」

「とりあえず落ち着け。」

あたふたと話すアリスをなだめる。

「お主にしか、きこえなかったのだな。」

「あんたが聞こえてるなければ、そうなのかもしれないわね。」

不思議な事だ。確かに、片方だけに聞こえてしまっていては、確証がもてない。

「考えられるとすれば一つしかないと思うのだが。」

ニカルの言うとうりだ。数日前にあったあの人物の行動。

「やっぱり、早乙女さんって人。」

やはり、怪しい。

「我の姿が視れていたのであれば、あの時の行動は」

アリスはニカルを見つめて頷いた。直ぐにでも向かいたいところだが・・・

「危険よね。どう考えたって、」

「そうだろうな、無策で突っ込んだら逆に相手の思うツボだろうな。」

アリスが腕を組み悩む。

「雨、少し弱くなってきたわね。」

外を見ると雨が弱くなってきていた。

「考えても無駄よね。とりあえず今日は帰ろうかしら。」

ニカルを胸ポケットにしまって、美術室を後にした。校門を出て、帰路につく。

「小雨でも濡れるのはイヤね。えーっと時間はっと。」

時刻は夕方5時半を指していた。小走りで家に着いた。家のドアを開こうと手をかけた瞬間。ポケットにしまっていたスマホが振動した。

「うわわぁ。」

ガチャっと家のカギを開け玄関に入る。スマホをポケットから取り出し画面を確認する。

「有数?」

なんの疑いもなく、電話に出る。

「もしもし?どうした?」

「やぁ、どうも。」

電話口からは、有数ではなく男性の声が返ってきた。

「誰? 有数じゃないの?」

「おっとこれは失礼。でも君たちが今1番会いたい人物だと思うけどな。」

「・・・っアリス・・きちゃ・・」

耳を澄ませると、かなり遠いが有数の声が聞こえてきた。

「有数?どこにいるの?ねぇ」

電話の向こうにいる有数に向け呼びかける。

「まぁまぁ。そう慌てずとも合わせてあげるよ。」

電話口の男性が口を挟む。

「貴方、目的はなに?」

怒り口調で話す。

「おぉー。友情だねぇ。」

笑いながら返答が返ってきた。

今すぐにでも殴ってやりたい。アリスが電話を耳にかけながら、拳をグーにして強く握りしめる。

「学校の運動場の剣道棟にこい。」

電話口から返答が来た瞬間、アリスが玄関を飛び出た。

ツーツーツーっと電話が切れた。

「どうやら、向かってきてるみたいだね。よかったよ。」

男性が電話口から耳を離す。

「それにしてもうまくいくものだね。」

「まだ、作戦は終わっておらんぞ。むしろこれからが本番だ。」

「あぁ。そうだね。」

「それにしても、いつ見ても友情というのは、美しいものだね。」

ニヤリと笑う。


通学路を必死に引き返して、学校へと走る。水溜りがいくつもできていた。雨は小雨になっていた。

「はぁ、はぁ」

髪が濡れようが、制服が水溜りの跳ねで汚れようが、必死に走る。

「有数、ハァ、待ってて、すぐにハァ、いくから、」

パシャパシャと音を立てて急ぐ。

「着いた。」

肩で息をしながら、学校内へと入っていく。流石にほとんどの生徒は帰宅していた。職員室の方には、灯りが灯っていてまだ数人の職員が残っている様だった。

「急がないと、えっと、運動場は」

電話で指示された、場所へと急ぐ。部活に入っていないアリスにとっては、運動場は無縁と言える様な場所だ。体育の授業などで何回かきたことはあっても、数える程度だ。どの建物がどこにあるが把握できていない。

「わかんないわね。えっと案内板っと。」

運動場の入り口にある案内板を見る。運動場には、剣道棟の他サッカー、野球、バスケなどさまざまな部活の施設がある。その中で剣道棟は運動場の中心の場所にあった。

「あそこか、有数まってて、もうすぐ着くから。」

案内板を後にして剣道棟へと向かう。他の部活は活動していないのか、どこも電気がついておらず、部活をやっている人たちの声も聞こえない。

「なんだか、不気味ね。」

あまりにも静かすぎる。雨が降ったせいだろうが、ここに来るまでに、誰ともすれ違がわなかった。

「考えすぎなのかな?」

今はそんなことを考えてられない。とにかく急がなければいけない。

「見えた、あれだ。」

アリスの視線の先には、運動場の建物で唯一灯りがついている。剣道棟が目に入った。剣道棟に入り、靴を脱ぎ捨てて、中へと入っていく。

「有数!!」

バンっと扉を開いた。

「おや、意外と早かったね。びっくりだよ。」

中には一人の男性が立っていた。

「やっぱり貴方だったのね。元生徒会会長

早乙女 ジュリア!!」

アリスが叫んだ。

「ふふっ。そうだよ、んでも少し気づいてたんじゃないのか?」

不敵な笑みを浮かべながら返答してきた。

「有数は、無事なの?」

「あぁ、彼女ならまだ無事だよ。ほら」

早乙女が手を後に向けた。

「有数!!」

その先には、両手が縛られていて、移動もできない姿があった。

「今助けに!」

「おっと!そうはさせないよ。」

足が動き出しそうになったが、行く手を阻まれている。

「っ!何が目的なの?」

早乙女を睨みながら、話す。

「おぉー怖いねぇ。・・・まぁいいや、」

くるりと、後ろに振り向き、あるものを取り出してきた。

「さて、一つ質問だ。君にはこれがみえるかい?」

スッとアリスの目の前にそれを取り出した。アリスが首を傾げる。

「えっと、剣道で使う竹刀じゃない?それがとうたのよ。」

早乙女がニヤリと笑う。

「え?アリス?何言ってるの?早乙女先輩何も持ってないでしょ?」

後ろで有数が動揺した声を上げた。

「っ!」

アリスが視線を早乙女に向ける。

「まさか、それ」

「ふふっ、そのまさかだよ。まさか君が選ばれしもとはね。ちょっと驚きだね。でもまぁこれで、やっと役者が揃った。」

「何を言ってるの?」

「長かった、この世界が作られたて10週だ。やっと、やっとだ。ようやく、ようやくだ。ようやく我らの救済が始められる。」

地団駄を踏みながら早乙女が叫ぶ。

「姿を表せ!イーズンよ!」

突如竹刀が黒いオーラに包まれ、姿が変貌していく。

「え?なにあれ?どういうこと?」

アリスが困惑する。

「竹刀なんて仮の姿。こっちが本来の形だよ。」   

黒い霧がはれ、早乙女の手には大きな剣が握られていた。刃の部分がとても長く、真っ赤に染まっている。

「紹介するよ。彼の名はイーズン。普段は竹刀だけどね。」

早乙女が剣の紹介をした。どうやら、アリスの持っているニカルと同じで普段は姿を変えているらしい。

「何が目的なの?」

アリスが早乙女を睨む。

「そう身構えないでよ。僕はね君たちに協力をしてほしんだよ。」

「協力?」

「我らの主人の為のことだ。」

「なにをするの?」

「簡単なことだよ。この世界を救済する。ただそれだけだよ。」

「どういうこと?」

「小娘、あまり耳を貸すな。こやつ危険すぎる。」

ニカルがアリスに応える。

「これは、僕と君の交渉なんだから邪魔しないでもらえるかな?」

ため息をつきながら早乙女が話を続ける。チャッキッと刃先を有姿の顎あたりに当てる。

「忘れちゃ困るね。君は何のためにここにきたのかな?」

「有数!!」

有数は、恐怖でガタガタと震えていた。

「早く助けないと!」

「人の話は最後までききなよ。」

「貴様らの話は何一つ真実ではないではないか、救済?ふざけたことをぬかすな。それは、貴様らの都合ではないか!」

ニカルが叫ぶ。

「どうやら、まだ、契約すら、していないようだな。」

イーズンが呟く。

「うそ?まじかぁ。」

「どうやら、お前は作られた意味をわかっていないようだな。」

イーズンがニカルに向かって話す。

「記憶などないわ。」

「はぁー。参ったねこの手は使いたくなかったんだけど。」

早乙女が呟いた瞬間。

「これも必要な犠牲なんだよ、許してね。」

「え?」

ほんの一瞬だった。アリスの目の前で、早乙女が有姿を切ったのだ。

血だらけになった有数を黒い霧がかこう。

「やはり、生有るものは、うまいな。」

イーズンが呟いた後。一才の痕跡すら残らずに、有数の姿が消えていた。

「え?え?」

ボーゼンと見ているしかなかった。

「ははっ!これが力の使い方だよ!」

早乙女がアリスに向き直し話を進める。

「さぁ!君も契約をして、救済を始めよう!」

「ふざけんな。」

アリスが拳を握り震える。

「小娘?小娘?しっかりしろ!!」

ニカルの呼びかけにも反応しない。

「怒りで我をわすれておるのか?これは、まずいか、小娘!しっかりせぇ!」

「・・・ニカル、アンタもあれできるの?」

ふぅーっと息を吐き、怒りに震えるような声でアリスがといただす。

「あれとは、変形のことか?」

アリスがコクリと頷く。

「バカ言うな、奴らの口車に乗るつもりか!」

ニカルが叫ぶ。

「そう言うわけじゃない、奴らのために戦うんじゃない、私は、親友のためにニカル!アンタとの契約を結ぶ!」

ニカルを胸ポケットから取り出し、叫ぶ。

「ニカルよ!私、アリスと契約を結び、その真なる姿を解放せよ!!」

「汝魂との契約承った。その真意、意志をうけつけよう。」

身体が熱い。

ニカルが白い光に包み込まれる。

「うっ!眩しっ!」

早乙女が目を覆う。

「白い光ということは、抗いか!」

イーズンが呟く。ニカルが剣のような形に姿を変えていく。しかし、イーズンとは異なり、刃先はとんがって細長くなっている。光がだんだん収まってきて、姿が見れるようになってきた。

「これが、我の姿なのか?」

「素晴らしいね!それでこそだ!まだ何色にも染まっていない純粋な姿、形、そして色。どれをとっても素晴らしい!」

早乙女が興奮をしたように叫ぶ。

「この武器は確か、レイピアだっけ?」

「どうやら、そのようだな。これが我の真なる姿のようだ。」

アリスの手には、変形したニカルが握られていた。

「ふーん。そうなるんだ。」

遠くの方で、声が聞こえたような気がした。

「さて、改めて聞かせてもらおうか、僕達と一緒にこの世界を救済する気にはならないかい?」

早乙女がイーズンを構えて聞いてきた。

「そんなのはっきり言ってノーよ!アンタは私の1番の親友を殺した!それだけでアンタたちに協力する気なんて一切ないわ!!」

アリスが力強く応える。変形したニカルをしっかりと持ち、フェイシングのような立ち振る舞いをして構える。

「やはり、記憶なしで生まれるのは厄介だな。」

二人の間に沈黙が生まれる。

「その信念いつまでもつかな?」

チャッキっと剣を構えて一気に詰め寄ってきた。キィィィーンっと甲高い剣同士がぶつかる音が静寂の中響く。

「くっ!」

「やはり不慣れなだな!」

ドォーンっとアリスが飛ばされる。

「イタタタ。」

「大丈夫か!小娘!」

痛みに耐えながらなんとか立ち上がる。

「小娘!血が!」

飛ばされた衝撃だろうか。アリスは頭から血が流れている。

「大丈夫!これぐらい!有数の痛みに比べれば、どうってことない!」

ニカルを握る手にさらに力が加わる。深呼吸をして、一気に間わいを詰めた。

「アンタら、なんかに絶対に屈するもんですか!アンタらの価値観を私に押し付けるなぁー!」

「攻撃が単調だね!読みやすい。」

アリスの一撃を受けよと剣を構える。

「え?・・・な・・・」

アリスの放った一撃は、寸前のところで早乙女の一筋をかわし、早乙女の腹を貫いた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

肩で息をする。二人とも膝から崩れ落ちる。

「カラン」と音を立てて

早乙女の手からイーズンが落ちる。

「こんな、奴に負けるとはらしくないな。主よ。」

「ハハッ、返す言葉もないね。久しぶりすぎて、腕が落ちたかな?」

だんだんと早乙女の呼吸が小さくなる。

「誇れ、君たちを認めよう。前に進め、争って見せよ、その信念で、我が救済を止めてみせよ。」

早乙女が白い光に包まれる。

「なんだ、これは・・・」

「勝者は、敗者を力にできる。・・・ただそれだけのことだ。」

イーズンが力なく呟く。

光が収まると同時にニカルはいつものシャープペンシルの姿に戻っていた。

「私がこの手で、」

アリスの手がガクガクと震えていた。

「小娘よ、汝はこの世界の理に巻き込まれた。逃れることは出来んぞ。」

その言葉を最後に聞き、アリスはどこかに走り去った。




「気配が消えたか、どこにいくつもりなのか。しかし、主の消えた我に存在意義はないハズなぜ消えないのだ?」

暗闇の中争いが起こった現場にぽつんと一つの竹刀が放置されていた。

「何者だ?」

誰も来ないはずの入り口の方から誰かの気配を感じた。足音がだんだんと近づいてくる。

「随分と派手に暴れたもんだな。こりゃすげぇや。」

「汝は何者だ!!!」

イーズンは剣へと姿を変えた。

「おおー!あったあった。って剣?そんなんつくったっけな?」

暗闇のせいだろうか、姿をはっきりと捉えることができない。

「近づくな!貴様!」

イーズンが声を荒げる。

「はぁー」

大きなため息をつく。月明かりが差し込み。少し姿が見れた。ローブを被っていて性別が分からないが、片目だけ捉えることができた。

「なんだ、その目は、」

「作ったかどうかなんて覚えてねぇんだが、主にさからってんじゃねぇよ!」

謎の人物の目が紫色のオーラに包まれる。

「ぐっ!なんだ?これは、力が、失われていく?」

イーズンが紫の光に包まれていく。

「全ては、彼の方のために、黒き旗の糧となれ!」

「ぐっ!グワァーー」

イーズンが叫んだ瞬間跡形もなく。姿が消えていた。

「用事はすんだ?」

暗闇からまた一人、歩いてくる人物がいた。

「最初から見ていたのか?」

「そんなわけ、たまたま近くにいただけよ。」

「だったら、キサマが参戦すれば逃げられることなくおわっただろう。」

「バカなこといわないでよ、私に戦闘能力はないの。前にもいったでしょ!」

「そうだったか?えーっと、」

「そうね、アンタはすぐ忘れるのよね。まぁいいわ。それより扉が見つかったみたいよ。」

「!!なに?場所はどこだ?」

「まずは、場所を変えましょう。」

暗闇の中二人の人物は闇へと消えていった。


「やっと見つけたわね。」

「まさかこんなところあるとはわね。」

燦々とした地に大きな存在感のある物体なぽつんと建っていた。

「やっぱりぼろぼろだな。」

「鍵も、力もないみたいだからね。」

「でも、この世界でも役者は揃ってるみたいだね。」

「それじゃ、あとは彼らにお任せしようか。」

「我々は、来る時を待つとしよう。」

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