「目覚めー。」
龍莉の世界ー。
翌日。目を覚した紫薔薇は2階から降りてきた。扉の向こうからはテレビの音が聞こえていた。一呼吸おいて、ドアノブに手をかける。
「ガチャ」とリビングの扉が開かれる。
「おはよーう・・・ございます。」
紫薔薇が挨拶をして、リビングに入ってくる。龍莉と龍莉の母親の視線が向けらせる。
「あら!紫薔薇ちゃん!体調は、もう大丈夫なの?」
龍莉の母親が椅子から立ち上がり紫薔薇に駆け寄る。
「っ!!」
紫薔薇が後ずさる。
「母さん。少し落ち着いて・・・・」
龍莉が制する。
「えーっと・・・。とりあえず。体調は良くなりました。ありがとうございます。」
紫薔薇が龍莉の母親に頭を下げる。
「服もお借りさせていただきまして・・・」
「良かったわー。龍莉の昔の体操着取っておいて・・・でも、ちょっとブカブカかしら?」
龍莉の母親が首をかしげる。紫薔薇は上下白を基調とした体操着を着ていた。体操着のズボンのポッケ付近には龍莉の名前が黒色で刻まれていた。
「いえ、サイズは特に問題はないですよ。」
紫薔薇が身体を少し動かす。少し大きいように見えるが、生活には支障がないようだ。
(・・・まじで、俺の古い体操着じゃねぇかよ。)
龍莉がため息をつく。
「下着とかは、後で私が用意しておくわね。」
「・・・なにから、何まで、ありがとうございます。」
再び、紫薔薇が頭を下げる。
「いいのよー。気にしないで」
龍莉の母親が両手をブンブンとふる。
「・・・それに、ご家族のこともあるしね。」
龍莉の母親の表情が暗くなる。
「・・・・・」
3人の間に沈黙の空気が流れる。
「・・・お2人が気にしても仕方ありません。あんな事態誰も予想することなんで出来ないので・・・」
紫薔薇が言葉を詰まらせる。
「そりゃ自分の住んでる世界が壊れる?崩壊するなんで誰にも予想することなんで、できねぇし、襲われることも考えねぇよ。」
龍莉が頭をかきながら口を開く。
「龍莉の言う通りです。悔やんでも仕方ありません。」
紫薔薇が龍莉の母親に向き直る。
「改めて、暫くお世話になります。」
紫薔薇が頭を下げる。
(・・・世界が壊されるか・・・家族もろとも、でもそれなら、なんで紫薔薇だけ生き残れたんだ?)
龍莉が考え込む。
「・・・ところで、龍莉・・・学校は?」
紫薔薇が龍莉に視線を向かわせる。
「あぁ。それなら。」
龍莉がテレビに視線を向ける。紫薔薇と龍莉の母親が椅子に座る。テレビでは、緊急の記者会見の様子が中継されていた。
「・・・記者会見?なにがあったのですか?」
紫薔薇が呟く。
テレビに映った。スーツを着た男性が国旗に向かい頭を下げてからマイクの前に立ち会見を始めた。
「カシャ、カシャ」テレビからカメラのシャッター音が響く。
「えー。現在。各地で起こっております。学生が狙われている無差別殺人事件につきまして、政府の対策といたしましては、全国各地の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学などを臨時で休校処置するといたしました。」
カメラのシャッター音と共に多くの記者の手が上がる。
「では、手前の緑色のネクタイをしている方。」
司会者が記者をあてた。
「はい、縁語新聞の者です。」
司会者に当てられた記者が立ち上がり質問をした。
「えー。今回無差別殺人事件とのことですが、犯人の目処などは判明しているのでしょうか?」
「えー。犯人につきましては、現場付近にあった監視カメラなどにより目星などは立っておりますが、この世界が暗闇のせいなのか監視カメラの映像にも人物は映ってはいるのですが、姿がはっきりしておらず黒い影のようなものが写っているとのことです。」
淡々と男性が記者の質問に答えていく。
「はい、では次の方ー。」
「学生連続殺人事件ー。」
紫薔薇が記者会見を見て呟く。ふと、紫薔薇の方に視線をむけると、小刻みに震えているように見えた。
「あなた達はたまたま運が良かったから軽い怪我程度で済んだけど、もしかしたら・・・殺されてたかもしれないんだもんね。」
龍莉の母親が紫薔薇と龍莉を交互に見て発言する。
「・・・・・」
紫薔薇と龍莉が下を向く。
テレビでは記者会見が続いていた。この事件の被害者人数。SNSに上げられている動画ー。各報道についての誤報、真実などー。様々な説明をしていた。
「ん?電話?」
龍莉のスマホが電話の通知が来ていた。画面のディスプレイには「先生」と表情されていた。
「ちょっと電話に出てくる。」
龍莉が立ち上がり、自室に向かった。
「すみません。シャワーをお借りしていいでしょか?」
紫薔薇が、莉龍の母親に聞く。
「ええ。いいわよ。お風呂は、ここを出て左よ方にあるからね。」
龍莉の母親がお風呂の場所を説明する。
「ありがとうございます。」
紫薔薇が頭を下げてリビングを出て行く。
(ふぅ。とりあえず。シャワーを浴びて気持ちを落ち着かせよう。色々あって、頭が混乱する。)
紫薔薇がゆっくりとお風呂に向かっていった。
龍莉がリビングを出て、自室に向かった。階段を上がり、自室に入り鍵をかけベットに腰をかけ電話に出た。
「はい、もしもし?」
「あー。もしもし、夜迷学校の、本葉です。えーっと。龍莉君の携帯番号であってるかな?」
電話口からは、龍莉の学校の担任の声が聞こえた。
「あー、はい。あってますよ。龍莉です。」
担任の声に答えた。
「あー。良かったぁー。」
担任の声が安堵しているのがわかった。
「・・・今回の事件ですよね。」
龍莉が先生に質問した。
「・・・ニュースや記者会見もありましたからね。いやでも目に入りますよね・・・。」
電話口で、担任の先生が息を呑んだ音がした。
「はい。その件です。」
一呼吸置いて、先生が本題に入った。
「今回政府が出した対策により、我が学校も臨時休校の対策を取ることになりました。」
「・・・やっぱりそうなりますよね。」
龍莉が落ち着いて、応えた。
「期間は決まってるんですか?」
「・・・・・」
電話口の先生が無言になる。
「先生?」
沈黙に耐えられなくなり、龍莉が呼びかける。
「あっ!あー。すまん。政府の答えとしては、児童たちの安全が保証されるまでは解除することができない。っていう回答がきててだな。」
電話口の先生が頭をかいているように感じた。
「・・・それってつまり。犯人が捕まるまでは、解除は無いってことですね。」
「・・・そうなってしまうなぁ。」
電話口から大きなため息が聞こえた。
「リモートワークとかにはしないんですか?」
「こっちも提案してみたのですが・・・」
電話口で言葉を詰まらせる。
「国の回答としては、リモートワークでもどこから情報が漏れるかわからない。児童の安全を考えると、危険なことは推奨することはできません。リモートワークは安全だと思いますが、無差別に狙われているとなると必ずしも安全とはいえないので、ご理解ご協力の程をよろしくお願いします。・・・だってよ。」
「・・・リモートワークが安全とは言えない・・・。」
龍莉が絶句する。
「こっちとしても色々と困るんだよなぁ。勉強も遅れるし、学校行事とかも遅れる。最悪進学問題にも関わってくる。・・・早く解決してもらいたいものだよ。」
「・・・・・。」
今度は龍莉が無言になった。
「おーい。龍莉?大丈夫かぁー?」
電話口から先生の呼びかける声がした。
「あっ、すみません。」
慌てて、呼びかけに応える。
「そういえば、噂で聞いたんだが、お前と紫薔薇襲われそうになったんだってな?」
「情報源がどこかわかりませんが、襲われそうではなく、襲われました。」
「!!そうだったのか?怪我はなかったのか?」
電話口の先生が声を荒げる。龍莉が電話を耳から少し離す。
「運が悪かったのか、良かったのかはわかりませんが、俺も紫薔薇も軽い怪我ですみました。」
電話を耳に当て戻し、先生に応えた。
「・・・それなら、よかった。」
電話口で安堵しているような声がした。
「・・・おっと、流石に長電話しすぎたな、とりあえず連絡事項としては、この無差別連続殺人事件が解決するまでは、学校は臨時休校。不要不急の外出は基本控えること。もし、どうしても外出する用事がある場合は、1人では外出しないこと。もしくは、親同伴で外出してくれ。」
担任が淡々と説明をする。
「・・・わかりました。臨時休校中は学校に誰かいるんですか?」
「基本的には、校長先生とその日の担任教師がいることになっている。」
龍莉の質問に先生が答える。
「わかりました。」
「それじゃ。くれぐれも体調管理には気をつけろよ。それじゃ、また学校が再開する時に。」
電話が切れた。龍莉がベットに横になる。枕元の近くにある時計を見ると9時を回っていた。
「臨時休校ねぇ・・・。」
龍莉の渇いた声が部屋に消えゆく。
お風呂では、紫薔薇がシャワーを浴びていた。
「ゴッホ。ゴッホ!!」
シャワー中紫薔薇が咳き込み、手で口元をおさえる。
「っ!!これは・・・!」
口元をおさえていた手を見ると赤く染まっていた。
(・・・2人を心配させるわけにはいかない・・・。)
血をシャワーで洗い流した。
リビングには、電話を終えた龍莉とシャワーを浴びて首にタオルを巻いた紫薔薇が椅子に座っていた。
「・・・・・」
2人の間に沈黙の空気が流れる。龍莉の母親は、仕事のため家を空けていた。
「学校の先生はなんて?」
重い空気を切り開くように紫薔薇が口を開いた。
「あぁ。暫く学校は臨時休校だとよ。」
龍莉が淡々と答える。
「それに、犯人が児童を狙っているから、一人での外出は不要不急以外は禁止だとよ。」
龍莉がため息混じりに話を続ける。
「ゔっ!!」
紫薔薇が頭を抱えてうずくまる。
「紫薔薇!!大丈夫か?」
龍莉が紫薔薇に駆け寄る。
「あっっがっ!、ゔっ。」
紫薔薇は言葉にならない声を出しながら、うずくまる。
「だ、だれ、だれだ!」
「紫薔薇?どうした?ここには、俺しかいないぞ。」
紫薔薇が全身をブンブンと左右に振る。
「落ち着け!紫薔薇。」
紫薔薇を落ち着かせようと、身体を押さえ込む。
「がぁ!!!」
龍莉が吹き飛ばされる。短い叫びをあげ、紫薔薇が外に走り出した。
「お、おい!どこいくんだよ!!!」
腰を摩りながら立ち上がり、大急ぎで紫薔薇を追いかける。
紫薔薇が無我夢中で何処かにはしる。少し後を龍莉が必死に追いかける。
「ハァ、ハァ・・・。どこまで、行くんだよ。
」
息をきらしながら、とにかく紫薔薇を追いかけていた。
「ゔっ。私を呼ぶのは・・・誰だ?」
相変わらず紫薔薇は小さく言葉を漏らしていた。気がつくと、雨が降ってきていた。アスファルトが湿りはじめ、ところどころに水溜りができはじめていた。
「パシャ、パシャ。」と足元から水が跳ねる。靴が濡れるのも気にならない様に紫薔薇は走り続けていた。
どれくらい走り続けただろう。紫薔薇が足を止めた。
「ハァ、ハァ・・・。やっと追いついた。」
龍莉が紫薔薇に追いついた。両膝に手をついて、呼吸を整える。
「あーーー。」
紫薔薇が声を出す。あれだけ走ったのに呼吸が乱れておらず、疲れも出ていない様だった。よく見ると、龍莉は額に汗をかいているが、紫薔薇は汗ひとつかいていなかった。
「ここは・・・。」
龍莉が汗を拭い顔を上げる。
龍莉と紫薔薇の視線の先には、1つのビルがそびえ立っていた。ビルはところ処壁がボロボロになっており、入り口はガラスが割れており外枠しか残っていなかった。明らかに廃ビルだった。天井に穴でも空いているのだろうビルの中には雨が打ち付けていた。
「だれなの?」
紫薔薇が何かに導かれる様に廃ビルに足をすすめた。
「お、おい!流石に危ねぇぞ!!」
紫薔薇を止めようと、龍莉が声をかけるが聞こえていない様だった。
ビルの中はパソコンとデスク、電話などが転がっていた。火災が起こったのだろうか?中には黒焦げになっているものもあった。足元には瓦礫と小さなガラスがキラキラと光っていた。
「おっと!」
龍莉が足を滑らせた。瓦礫が雨で濡れていた。足元も気にしないでスタスタと紫薔薇が奥に進んでいく。
「どこまで行くんだ?」
紫薔薇を見失わないように龍莉が後を追いかける。
どれくらい奥に進んだだろう。紫薔薇がひとつの部屋の前で足を止めた。
「ゔっ。」
紫薔薇が部屋の前で頭を抱えてうずくまる。
「おい。大丈夫か?」
龍莉が紫薔薇に駆け寄る。
「がぁ・・・グゥ。・・・ぁ。あれ・・・が・・・わた。わたしを・・・」
紫薔薇が小さく声を漏らした。苦しみの表情を浮かべながら部屋の中に視線を向けていた。
「?なにかあるのか?」
龍莉も紫薔薇の視線を追う様に部屋に視線を向かわせた。部屋の中には天井の穴からの明かりに照らされている何かがあった。
「・・・なんだありゃ?」
龍莉が目を細めてよく見る。
「ほう。面白いことになったな。」
「・・・!!」
龍莉と紫薔薇の脳内に直接謎の声が届いた。
「ゔっ。」
龍莉と紫薔薇が頭を抱えてうずくまる。
(・・・なんだ今のは・・・頭が割れるかと思った。)
「ゴロゴロ・・・ドッカーーーン!!」
大きな雷が部屋の中に照らされていた何かに落ちた。辺りの瓦礫によって砂煙が巻き起こる。
「うおっ!」
「ぐっわぁ!!」
龍莉と紫薔薇が吹き飛ばされた。砂ぼこりが落ち着き視界が晴れはじめる。
「あれは・・・コンボウか?」
龍莉の視線の先にはフワフワと浮いているコンボウがあった。
「人の姿の参考にできれば良いと思い、呼び寄せたが・・・2人もくるとは思わんかったな。・・・まぁ。良い。」
コンボウが声を発しているのがわかった。コンボウから1人の女性のような姿が段々と形創られていた。
「・・・こんなものか。」
コンボウから現れた女性は全身が黄色に包まれており、表情などがわからなかった。
「さて、用済みには消えてもらうとするか。」
女性が龍莉と紫薔薇に視線を向けたように見えた。コンボウがビリビリと音を立てて、雷をまとわりはじめた。
「っ!!」
龍莉が逃げようと立ち上がる。
「紫薔薇!!逃げるぞ!!」
「うっ!!ガァーー。」
龍莉は紫薔薇に声をかける。紫薔薇は頭を抱えて悶えていた。
「・・・ほう。面白い。」
女性が笑ったように感じた。
「グッっ!!ガァー。」
「うお!!」
紫薔薇が急に立ち上がった。
「いて!」
紫薔薇の周りにはあの時と同じく、雷が発生していた。紫薔薇の目は血走っており、呼吸も荒れており、全身で息をしている感じだった。
「ぐぅ。」
紫薔薇の視線は、コンボウの女性に向かっていた。
「キサマは・・・いったいナニモノだ?ナゼそのチカラが使える?」
女性が首を傾げた。
「わたし、わたし、わたし、わたしわぁーー!!!」
紫薔薇が叫びを上げる。
「がぁー、!!」
紫薔薇が女性に向かって行く。
「素手で争うか!」
女性がコンボウを振り回す。
「にぎゃあ!!」
紫薔薇が雷で剣のようなものを創り出しコンボウと迎え撃つ。
「ビリビリバリィーーン」と雷と雷がぶつかり合う。龍莉が耳を押さえる。
「あまいわぁ!」
紫薔薇が吹き飛ばされる。
「どぉーん。」紫薔薇が瓦礫の中から直ぐに立ち上がり、再びコンボウの女性に向かって行く。狭い室内で雷と雷がぶつかり合う・・・その音だけが響く。雷の影響だろうか、雨足が強くなっていた。紫薔薇とコンボウの女性にはいっさい気にする様子がなかった。
(俺は・・・何もできないのか・・・)
龍莉が力込めて握りしめる。
「ぎにゃぁ!!」
何度目かわからないが、紫薔薇が吹き飛ばされていた。紫薔薇の着ている。龍莉の古い体操着はところどころ穴があきはじめていた。
(もう・・・紫薔薇が傷つくのをみるのは・・・嫌だ!!)
龍莉がコンボウの女性に視線を向ける。
(・・・なんだ?この言いようのない・・・恐怖心は?)
コンボウの女性に身震いがはしる。
「ぐぁあ!!!」
紫薔薇が瓦礫の山から立ち上がり、何度目かわからないコンボウの女性に向かおうとしていた。
「もう、やめてくれ!!」
龍莉が両手を広げて、紫薔薇の前に立ち塞がった。
「・・・ほう。どうやら、死に急ぎたいようだな。」
コンボウの女性がコンボウに力を込めて、龍莉に向かってきた。
「にぎゃぁーー!!!」
「しねぇーー!!」
紫薔薇とコンボウの女性が龍莉に襲いかかってくる。
(あぁ。俺はここでー。)
龍莉が覚悟を決め目を閉じた。
「こんなところでーー死んでたまるかぁー!!!」
龍莉が叫びをあげる。何かできないかと龍莉が両手を前にだす。瞬間ーー。紫薔薇と龍莉の間の空間がグワンと歪む。
「・・・!?」
「ドォーーン。」
コンボウの一撃が空を切る。
「何処にいった?」
パラパラと瓦礫の山が落ちる。いつのまにか紫薔薇と龍莉の姿が消えていた。
静かなビルの一室に雨の音だけが響く。
「パチパチパチ」と拍手と共に1人の影?がコンボウの女性に近づいてきた。
「ダレだ。テメェ。」
女性がコンボウを構える。
「いやはや、素晴らしいものをみせてもらったねぇ。」
声の人物が近づいてきて姿が確認できた。
「影?」
コンボウの女性が声を漏らす。
「うーん。否定できないのが残念だねぇー。」
両手を広げいるのだろう。全身が黒く大きな影のため男性の様な声以外わかるものが何も無い。
「ウサンクセェ野郎だなぁ。」
女性がコンボウに雷を纏わせ、影の前にやる。
「おっと。こわいこわい。」
「・・・いいから、さっさと要件を話せ、・・・じゃ無いと殺す。」
女性が影を睨む。
「はいはい。わかりましたよー。」
影がため息をつく。
「とりあえず。そのコンボウ・・・一回引っ込めてくれないかな?」
影が表情をうかがっているように感じた。
「単刀直入に言うと、私は、キミを探していたんだよ。」
「オレを探していただぁ?」
女性が首を傾げる。
「そう。僕らが救済のためにねーー。」
影が不敵な笑みを浮かべている様に思えたー。
「う。うーーん。」
龍莉が目を覚ます。
「・・・ここは?」
見慣れた天井、龍莉はいつのまにか自分の家に戻ってきていた。
「あれ?いつの間に・・・」
ふと横を見ると紫薔薇が龍莉のベットの上で寝息を立てていた。
「寝てるのか?」
紫薔薇の近くに寄り、状態を確認する。龍莉の体操着が少し穴が空いている状態で、特に目立った怪我は確認できなかった。
「よかった。」
龍莉が安堵の息をついた。
「・・・一体何が起こったんだ?」
龍莉が両手を目の前にやり、何度も閉じたり開いたりを繰り返した。
「ちょっとー。龍莉?いるのー。」
ドアから龍莉の母親が呼び鈴を鳴らしていた。
「何で鍵閉めてるのよー。」
「あぁ。ごめん。今開けるよ。」
龍莉がドアを開けるために玄関はと向かっていった。
「ふぅ。なんとかなりましたねぇ。」
「すみません。お手数をおかけしてしまいまして・・・」
「いやいや、君も大変なんだから・・・こういうときは1人1人の理解と協力が必要だよ。」
「・・・・・」
「それに面白いものも見れたからボク的には大満足だよ。」
「面白いもの?」
「ふふっ。」
「?」
「扉のない核だけど、その分楽しみはあるものなんだねぇ。」
「まさか・・・」
「目覚めみたいだよ。遊び人と、バグが・・・しかも同時に。」
「・・・・・」
「これから、もっともっと、楽しく面白いことになっていきそうだねぇ。」




