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非日常世界へようこそ  作者: 紫音
第ニ閉
33/41

「雷」

不思議なー夢を見たー。

「ーーー。」

「ーーー!!!?」

誰かが話しをしている?ノイズがすごくてわからないー。

「・・・・・ピース。」

(ピース?)

かろうじて一言だけ聞き取ることができた。

ノイズがひどくなってきた。

(!!っつ!)

頭痛がひどくなり、目が覚めた。


「・・・」

天井には見慣れた景色が広がっていたー。

「・・・どれくらい寝てたんだ?」

ローンがベットから上体を起こす。

「よかった。目が覚めたのね。」

魔女がローンの近くに寄る。  

「大丈夫?起き上がれる?」

ローンがコクリと頷く。

「皆は?」

ローンが魔女に問いかける。

「大丈夫、安心して、皆無事よ。」

魔女の問いかけにローンが胸を撫で下ろす。

「歩ける?」

ローンが首を振る。

魔女がローンの腕を肩にかけて立ち上がらせた。

「大丈夫?・・・それじゃ、歩くわよ。ゆっくりでいいからね。」


ガチャと扉が開く。アリスと梨杏、シールズが扉の方を振り向く。

「「ローン!!」」

「ローンさん。」

3人がローンの元に駆け寄る。

「3人共気持ちはわかるけど、まだ目が覚めたばかりなのよ。」

魔女が寄ってきた3人を制した。魔女がローンをソファに座らせた。ローンが魔女に頭を下げる。

「とりあえず。意識が戻ってよかったです。あの遊園地での戦い以降ずっと寝てた状態でしたから心配でたまりませんでしたから・・・」

須藤が奥の部屋から出てきた。手にはコップ一杯の水を持っていた。

「・・・お水どうぞ。」

須藤がローンの前にコップに入った水を置いた。

「・・・すまねぇ。」

相当喉が乾いていたのであろう。ローンが一気に水を飲み干した。コップを机に置いて辺りを見渡す。

「色々と聞きたいが、オレは何日寝ていた?」

「・・・そうねぇ。大体あの遊園地の戦いから戻ってきて、ローン、梨杏、シールズは気絶したように寝てたからね。」

ローンの問いかけに魔女が答える。

「あのー。私は気絶までとはいかずに、数時間ほどで目がさめたのですが。」

シールズが申し訳なさそうに手を上げる。

「あら?そうなの?」

魔女が首を傾げた。

「私は3日経って目が覚めたわ。」

梨杏が答えた。

「・・・3日か。」

ローンが呟く。

「ローンさんは、1週間ほど寝てましたね。でもよかったです。」

須藤が水を再度持ってきた。

「なるほどな。」

ローンが納得したように頷く。

「次にコインはどこに行った?」

ローンが自分の服をパンパン叩いた。

「我ならここにいるぞ。」

ローンの後から声が聞こえたー。ローンが振り返ると魔人がいた。

「・・・その姿・・・」

ローンが呟く。その声に反応するように魔人が頷く。

ローンが前に向き直った。

「ふぅ。大体わかった。・・・そういえば、山上さんは?さっきから姿が見えないんだが。」

周囲を見渡して須藤に問う。

「あっ。先輩なら、今もう一つの事件の調査のため最近は警察署に勤めてぱなしです。」

須藤が元気よく答える。

「いや、いや、お前は行かなくていいのかよ。」

ローンが冷静に返した。

「私も調査チームに加わろうとしたのですが・・・想像以上にメンバーが集まったみたいで、私は外されてしまいました。」

頬をぽりぽりとかきながら須藤が答えた。

「事件?なにか起こってるのか?」

ローンが須藤に質問した。

「そうですね。遊園地で起こった戦いの前に今起こってる事件の説明をしましょうか。」

須藤が机の上に幾つかの資料を広げた。ローンが資料に目をやった。

「なんだこれ?停電事件・・・建物崩壊?」

資料に書いてある文字を見てローンが呟く。資料には停電発生件数。落雷による建物崩壊件数。などと書かれていた。

「・・・落雷で建物が崩壊することなんてあるか?」

ローンが呟いた。

「崩壊しそうなビルとか建物とかならありえるのでしょうかね。調査中なので詳しくしらべているのですが。」

須藤が答えた。

「これって・・・」

ローンの資料をみていた手が止まった。ローンの見ている資料にはこの一連の事件の関係者?として周辺で目撃された人物の特徴が記載されていた。資料には男性、高身長。黄色の服装。剣を持っていた。着物を着ていた。トゲトゲの武器のような物を持っていた。白の着物を着てた。男性にも女性にも見えた。などと様々なことが書かれていた。

「・・・ライメイ?」

ローンが静かに呟いた。

「確信は持てないのですが、特徴が一致しておりまして・・・」

須藤が答える。

「アリス達はこの資料に目を通したのか?」

ローンの問いかけにアリス、梨杏、魔女、魔人、シールズが頷く。

「だろうな。オレより早く目覚めてるんだんだもんな。」

ローンが力無く声を出す。

「・・・・・」

「・・・・・」

沈黙の時期が流れる。

「・・・なんでライメイが?」

沈黙を破るようにローンが口を開く。

「それも兼ねて、遊園地で起こったことをそれぞれ話して貰えませんか?事情を知りたいので。」

須藤が話を切り出した。

「そうね。あの時私たちは謎の霧で離れ離れになってしまったからそれぞれ何が起こったかわからないもんね。」

魔女が話しに乗ってきた。

「なるほどな。我らは、ここに残っていたのだから是非聞きたいものだな。」

机上に置いてあったニカルが声を出した。

「それぞれ話してたんじゃないのか?」

ローンが梨杏、シールズに目をやった。

「どうせ話をするなら皆さんが揃ってからの方がいいのかなって思いまして・・・」

シールズが申し訳なさそうに声を出す。

「それじゃ、短くすみそうな私から・・・」

梨杏が話を切り出した。

「私は、霧で皆さんと離れた後いつのまにかジェットコースターの場所にいました。そこで私たちはキュルアーと戦いました。キュルアーは小さい影の蛇とジェットコースターの乗り物を大きな蛇に変形させました。」

「・・・あれを蛇に変形させられるのか。」

ローンが呟く。

「力をつけ始めればできないことはなかろう。」

ローンの呟きにニカルが答える。

「私達が力をつけているように、救済側も力をつけ始めてるってこと?」

アリスがニカルに聞く。

「その可能性があるということだ。だが、そう考えるのが妥当だろうな。」

アリスとニカルがそれぞれ会話をする。

「話を戻しますね。」

「あぁ。すまぬな。」

「いえいえ。暫く蛇と戦っていたのですが、急に雨が降ってきましたね。」

「雨?」

「はい。」

「雨なら私も降ってきましたね。」

「オレもだ。」

梨杏の雨発言にシールズ、ローンも共に共感した。

「遊園地全体に降っていたみたいですね。」

「そうみたいですね。それで暫くしたら、キュルアーの方からひきました。」

「向こう側からひいたのか・・・」

ニカルが考えこむ。

「その後は、霧が晴れてシールズとローンと合流しました。」

「次は私が話しますね。」

咳払いをして、シールズが話を始めた。

「私は最初皆さんと同じで孤立しました。霧の中から魔獣をぶっ飛ばしたライメイさんと合流して、そこから2人で行動をしました。私たち2人は突如現れた魔獣を追いかけるようにしたら観覧車?というアトラクションの前にいました。観覧車の前にはエポカがいました。」

「観覧車でエポカ・・・と。」

須藤が紙にサラサラと書いていた。

「エポカは今回私たちと戦いました。暫く戦闘していたのですが、突然私の前に急接近したと思ったら・・・私は、謎の泡に包まれてました。」

「泡とな?」

ニカルがシールズに聞き返した。

「はい。泡です。」

シールズがコクリと頷いた。

「破壊は試みなかったの?」

梨杏がシールズに聞いた。

「しようとはしたのですが・・・泡は水でライメイさんの攻撃は雷を使うので・・・」

シールズが俯いた。

「なるほどな。水は電気を通すからできなかったと。」

シールズが頷く。

「泡からはこっちの声は一切届いていないようでした。逆に向こう側外側からの声ははっきりと聞こえていました。」

「泡、外部からは声が聞こえ、内側からの声は聞こえない。」

須藤は、シールズの説明をスラスラと紙に書いていた。

「それから暫く、ライメイさんとエポカが戦っていたのですが・・・エポカが突然つぶやいたと思ったら、ライメイさんを観覧車の乗り物?の1番上まで吹き飛ばしました。」

「1番上ってゴンドラの1番天辺ってこと?」

魔女の問いにシールズがコクリと頷く。

「どれくらい高さがあるのよ?」

アリスが声を出す。

「物にも寄るとは思いますが・・・確か直径100メートルを超えるものもあると記憶しておりますが。」

須藤が考えながら答える。

「そしたら倒れているライメイさんに何かをしました。」

「何か?」

アリスが問いかける。

「はい。何かです。遠くて泡に包まれてまれている状態だったので・・・何もわかりませんでした。」

「なにもわからないか。」

アリスが呟く。

「そのあとどうなったのだ?」

ニカルがシールズに聞いた。

「その後は、ライメイが突然起き上がって観覧車の周りに幾つもの雷が落ちました。ライメイさんは叫びと共にどこかに姿を消しました。」

「・・・・・」

「・・・・・」

アリスと梨杏が言葉を詰まらせる。

「それで、今発生してる。停電事件にライメイが関与してる可能性があるってことか。」

ローンの問いに須藤が頷いた。

「はい。そうなりますね。」

「エポカもそのあと姿を消した感じかしら?」

「はい。あのあと観覧車から降りてきて、私の前に来ました。何か呟いた気がするのですが・・・声をはっきりと聞くことができませんでした。」

シールズが申し訳なさそうに話す。

「泡からはどうなったのだ?」

ニカルが聞く。

「泡はエポカが降りてきたと同時に消えて私は解放されました。その後は、梨杏さんと同じで霧が晴れて皆さまと合流しました。」

「・・・最後はオレか。」

一呼吸置いて、ローンが遊園地であった出来事を話し始めた。

「俺は霧でお前らと別れたあと何かに導かれるように進んでいった。」

(ローン・・・何か喋り方というかなんか雰囲気が変わった?)

「オレはコーヒーカップの前に誘導された。コーヒーカップの前には、ローブを被って顔を布のような物で隠した奴がいた。奴はサントクと名乗り、自分の事を放遊者と名乗った。」

「自分から名乗った?」

魔女が声を上げる。

「あぁ。なんでかわかんねぇけど。」

ローンが頭をかいて答える。

「・・・放遊者で救済側についているってことよね。」

梨杏の問いに魔女が頷く。

「話を続けるぞ。オレはサントクと戦闘を続けていた。だけど、サントクは戦闘の意志は全く感じなかった・・・。」

(戦闘の意思がない?)

「しばらくしたら、サントクをあの少年が殺した。」

「え?」

梨杏が声を漏らした。

「奴は仲間じゃないの?」

「オレもそう思っていたんだが、あの少年は躊躇いもなくサントクを殺した。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

それぞれが絶句する。

「・・・それでどうしてコインと契約するに至ったのだ?」

ニカルがローンに聞いた。

「それは、少年が殺した人物がオレが前にいた核の親友だった・・・アラク・・・だったからだ。」

ローンが言葉を詰まらせて話した。

「アラクって確か、ローンの前の核にいたっていう人物?」

魔女の問いにローンが頷いた。

「・・・ということは、アラクという人物はあの核にいる時から放遊者だったという事だな。」

ニカルが考えこむ。

「その時の怒り、感情が抑えられなくなって、どうしてもあの少年をあそこで殺したいっていう衝動が抑えられなくなったんだ。・・・それで、コインとの契約をしたんだ。」

「・・・・・」

「小娘と状況が似ておるな。」

ニカルがアリスに話しかけた。

「私?どんな状況だったっけ?」

アリスが首を傾げる。

「・・・いや、なんでもない。忘れてくれ。」

「それで契約完了して、このオレ魔人が完成したわけ。」

ローンの後に立っていた魔人が声を出した。魔人の姿はローブを羽織っており大きな男性のような見た目をしていた。

「俺は、コインの表と裏の姿が一体になった姿だ。契約の代償としては、ローンの目の色が変わったぐらいだと思うぞ。」

魔人の言葉を聞いて、ローンを見てみると確かにアリスと同じく片方の目の色が紫のような赤色に変化していた。

「確かに契約してるみたいね。」

魔女がつぶやいた。梨杏の目の色が変わっていない辺りどうやら、梨杏は魔女とは契約をしていないのだろう。

「とりあえず。今まで通り、コインって呼んでもらってもいいし、アゼグでもいいから好きに読んでくれや。」

魔人が挨拶をした。

「よく見るとコインの絵柄も変わっているのね。」

魔女がコインを見る。魔女の言う通りコインは両面とも絵柄が変わっていた。片面は3体ほどの天使が描かれていて中央には大きな階段が描かれていた。天使には小さなラッパを持っていた。もう片面はカマをもった悪魔のようなイラストが描かれていた。


「・・・」

沈黙の空気が流れる。

当然部屋全体の電気が消えた。

「きゃぁ!!」

「なんだ?」

「停電?」

それぞれが声を出す。須藤の携帯電話が着信を告げる。画面には山上と名前が表示されていた。

「はい。もしもし。須藤です。」

須藤が山上からの電話に出た。

「須藤!そっちで動ける人いる?」

山上の声は焦っていた。

「動ける方ですか?一応全員目が覚めていますが・・・」

須藤がアリス達の方を見て電話口と会話をする。

「よかった。ローンも目覚めたのね。」

電話の向こうで山上が安堵しているように感じた。

「なにがあったのですか?」

須藤が山上に説明を求めた。

「停電事件が起きたのだけど、今回は発電所自体が狙われたのよ。町外れにある。発電所が爆発事件が発生したから街全体が停電騒ぎになってるのよ。」

山上が声を荒げる。

「発電所が?」

須藤が電話口で首を傾げる。

「そうなのよ。だけど、ライメイが関わってる可能性もあるから誰か助けを求めたいのだけど、動ける方はいるかしら?」

山上は電話の向こう側呼びかけた。

「「それなら、私が行きます!!」」

須藤の電話を奪い取って、アリスとシールズが同時に声を出した。

「アリスさんと、シールズ?・・・シールズはこの前の遊園地の時も戦ったでしょ?疲れは大丈夫なの?」

山上が電話口でぶつぶつ言葉を出していた。

「でも今はどうこう言ってる場合じゃないわね。・・・わかったわ。2人とも急いで気をつけてきなさい。運転は・・・須藤頼めるかしら?」

電話口から山上が問いかけてきた。

「はい!お任せください!!」

山上の問いかけに大きく返事を返した。



表では須藤がパトカーに乗って準備をしていた。

「2人とも、ライメイを頼んだわよ。」

パトカーに乗り込むアリスとシールズに梨杏が声をかける。

「うん。」

「はい!!」

シートベルトをして2人が力強く頷く。

「それじゃいきますよぉー!!」

サイレンを鳴らしてパトカーを走らせた。

「アリスもこんな気持ちだったのか・・・」



街中は停電の影響で真っ暗になっていた。信号も灯りが付いておらず。警察官が手信号で車の誘導をしていた。

「裏道を使って急ぎますね。」

発電所が近くにつれて、消防車や、パトカー、救急車などの緊急車両が増えてきた。発電所の周りでは雨は降っていなかったが、雷が幾つも落ちていることが遠くからでも確認することができた。

「火災も発生してますね。」

須藤が指差した先を見てみると発電所の何箇所から火の手が上がっているのがわかる。


発電所ー。

「着きました。お2人はパトカーの影に隠れていてください。」

須藤の声かけでパトカーから降りた2人はパトカーの影に隠れるようにしゃがんだ。

「須藤!!」

遠くから山上が声をかけてきた。

「先輩!!」

須藤が山上の近くに駆け寄る。

「アリスさんと、シールズは?」

山上が小声で話を始めた。

「パトカーの影に隠れてもらってます。」

首をパトカーの方に向けて答える。

「了解。」

山上が頷く。

「発電所の中ではあんな感じで雷が何度も落ちているー。危険な状況ー。・・・言わなくてもわかるか。」

「あの中にライメイさんが?」

須藤の問いかけに山上が頷く。

「さっき確認した時に、ライメイが中にいることが判明したわ。」

「なら、早く何とかしないと。」

「そうしたいけど、正面から入るのは危険よ。回り込んで行かないと、2人のことはわたしたちしか知らないのだから。」

山上と須藤が話しながらアリスとシールズの近くにやってきた。

「アリス、シールズ・・・2人を危険なことに巻き込んでしまうことは本当に申し訳ないわ。本来なら大人が守るべきなのでしょうけど、2人とも覚悟はいい?」

山上が2人の目をじっと見て話した。

アリスとシールズが大きく深呼吸をして頷いた。



発電所敷地内ー。

電柱の線の上で1人の女性 エポカが見下ろしていた。

「・・・記憶がないだけで、こんなにも暴れるとはねぇ。これも人間と関わったせいなのかしら?」

エポカがため息混じりにつぶやいた。


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