「空白」
山上の家ー。
ローン、梨杏、ライメイ、シールズはそれぞれ山上の家でリラックスしていた。
「いつぶりかに長い時間横になれますね。」
ソファに横になっているシールズがつぶやく。
「休める時にしっかりやすんでおいたほうがいいですからね。」
少年と遊んでいる須藤が応える。
「・・・ところで?今日は何日の何曜日になるのかしら?」
いつのまにか出てきていた魔女が質問する。
「いつのまにでてきたのよ!」
梨杏が叫ぶ。
「ごめんなさいね。」
魔女が軽く謝る。
「んー。何日経ったですか。」
須藤が首をかしげる。
「なんでそんなことが気になるの?」
梨杏が魔女に質問する。
「ちょっとね。」
魔女が微笑んだ。
「皆さんがここにきてからは、2週間ぐらい経っております。」
須藤が答える。須藤の答えに魔女が考え込む。
「どうしたの?考え込んで。」
梨杏が魔女の顔を覗き込んで聞いていた。
「え、ええ。・・・ループが無くなってるとおもってね。」
魔女が答えた。
「ループ?」
須藤が首をかしげた。
「前に魔女さんが言ってたことよね。何度も同じ時間軸を繰り返し違和感がない様になってるっていうあれ。」
入り口の方から山上が入ってきた。
「あっ!先輩お疲れ様です。」
「お疲れ様。須藤。日番だったのに申し訳ないわね。」
山上と須藤が軽く会話をした。
「ループしてるっていうけど、その記憶とかわあるわけでしょ?」
山上が梨杏、ローンの方をみて聞いてきた。ローンと梨杏が静かに頷いた。
「・・・なら、本当に違和感なく同じことを繰り返してたってことになるけど。」
山上が考え込む。
「そんなことが可能なんですか?」
「結局はその考えにいきつくのよね。」
山上が静かにため息をつく。
「あぁ。そうなるな。」
ローンが答える。
「どうしてループする必要があるのか、ループを壊して記憶などをどう補っているのか謎のままってことよね。」
山上がつぶやく。
「確かに・・・わざわざ同じ時間軸を繰り返す必要なんてないですもんね。」
須藤が考え込む。部屋がシーンとなる。
「・・・ところで、アリスさんは?」
山上が辺りにを見渡しながら話す。
「小娘なら、体調が悪いから奥の部屋で寝ておるぞ。」
テーブルの上に置かれている。シャープペンシル、ニカルが応える。
「・・・そう。なのね。」
山上がつぶやく。
「呼んできましょうか?」
魔女が山上に聞く。
「いや良いわ、無理させるのもダメだしね。」
山上が魔女を制した。
「・・・なにか話があるのか?」
ニカルが山上に聞いた。
「・・・わかったことが二つあるってことね。」
それぞれの視線が山上に集まる。軽く咳払いをして話を始めた。
「先ず一つ、その子の名前が書類にて判明したは、隣街の家族から行方不明の届けが出されていた。名前は、石山 将。」
それぞれの視線が少年に、集まった。
「石山、将・・・・」
石山と呼ばれた少年が静かにつぶやく。
「隣街のご両親によると、数日前に突然家から出て行ったっきり、連絡も取れなくなった・・・と情報があるのだけど?あっているかしら?」
山上が石山に質問した。
「僕は・・・我は・・・」
石山が頭を抱えてうずくまった。
「大丈夫ですか?」
須藤が倒れ込む石山を支えた。
「・・・どういう経緯があったか、わからないげど・・・無理に思い出させるもの違うわよね。」
山上が考え込む。
「とりあえず、奥の部屋に寝かしてきます。」
須藤が石山を寝かすために奥の部屋に駆け込んだ。
須藤が石山を寝かして部屋に戻ってきた。
「ありがとう。須藤。」
山上が須藤に礼を言った。
「話を続けても良いかしら?」
山上が周りを見た。二、三秒静かな時間が流れて、ローン達がそれぞれ頷いた。
「・・・それじゃ続けるわね。こっちの方が重要なんだけど。」
机の上に何枚もの資料を置いて話を始めた。
「その隣街についてのことなのよ。」
ローン達がそれぞれ首をかしげた。
「なんで、隣街のことが気になるんだ?」
ローンが山上に聞いた。
「そうなのよ。普通は気にならないのよ。だけどね。不思議なのよ。」
「不思議?」
須藤がすっとんきょうな声を上げる。
「それでこそ、アリスさんに伺いたかったのだけど・・・」
「・・・躊躇わず話さんか。」
ニカルが声を上げる。
「えぇ。そうね。ごめんなさい。」
ニカルに謝りながら、話を続ける。
「私の記憶が正しければ、隣街なんて存在してなかったのよ。」
「「え?」」
ローンと梨杏が声を漏らす。
「街が存在しない?」
魔女が声を振り絞る様に出す。
「・・・そんなことあり得るんですか?」
須藤が山上に聞く。
「その気持ちもわかるのだけど・・・須藤あなたもこの資料に目を通してみなさい。」
山上に言われ須藤が机の上に置かれている資料に目を通した。机の上の資料には隣街の詳細が書かれていた。沢山の大型ショッピングモールが建っており、ビル群、も並んでいた。街の中心には大型の遊園地がそびえたっていた。
「・・・」
須藤は資料に目を通していた。
「こんな街・・・」
振り出す様に声を出していた。
「街を作り出すってかのうなのか?」
ローンが山上に聞く。
「・・・できるであろう。」
ニカルがボソリと声を出した。ニカルの言葉に合わせる様に、魔女が頷く。
「え?魔女?なにか心当たりあるの?」
梨杏が魔女に質問した。
「説明をするべきだな。・・・その前に小娘入ってこい。」
ニカルに促される様にアリスが奥の部屋から出てきた。
「体調は大丈夫なの?」
ローンがアリスに聞いた。
「なんとか動ける程度には、それになんか私もいないといけない気がして。」
ヨロヨロと歩きながらソファに座った。
「揃ったな。我が話すのは魔女の説明の補足だ。」
前置きをニカルが話した。
「・・・私も説明するの忘れてたわ・・・ごめんなさいね。」
魔女がしゅんとしていた。
「きにすることは無かろう。この核では起こっているが、ローンと梨杏の核では起こってないことだから説明する必要もなかったであろうからな。」
「どう言うことかわからないのだけども。説明してもらえるかしら?」
山上がニカルに聞いた。
「わかった。・・では小娘よ。お主、あの場所で、生徒会長と戦った記憶はあるか?」
ニカルがアリスに質問した。アリスが首を横にゆっくりと振った。
「それと何が関係してるのだ?」
ずっと黙って聞いていたライメイが質問した。
「お主4人があの場所に行った時、ガレキだらけで本当に建物があったのかと思うところであったであろう?」
ローン、アリス、梨杏、ライメイがそれぞれ考え込む。
「そう言われてみれば、あんなところにとはおもったはね。」
梨杏が答える。
「正直、あの場所に行った時。全くって言って良いほど、あそこでの記憶がないの・・・ともてつもなく悲しい思い出だったはずなのに全く思い出せない。」
アリスが絞り出す様に答える。
「・・・簡潔に言おう。奴らが行っていることだ。建物、街を壊すことでその場所での記憶を消していると言うことだ。」
ニカルが話した。それぞれが驚き声を殺した。
「そして、消した記憶の枠を埋める様に新しい記憶を作ろうとする。」
「・・・それじゃ、アリスさんがあの日の記憶がないということは、」
「おそらく、街を消したことによりその記憶すら必要がないということになった、それにより小娘の記憶から消したのであろうな。」
アリスが絶句する。
「軸がずれたというのもニカルの説明と同じ原理よ。人々の記憶を消すことによって、ループしていることを違和感なくしている。それに繋がるわ。」
魔女がニカルの説明に付け加える。
「・・・消えた記憶には同じ核に住んでいる人にも適応されるのね。」
魔女が頷く。
「それなら、納得か。」
山上が静かにつぶやく。
「それじゃ、消えた記憶の枠にこの建物が?」
須藤が魔女に聞いた。
「おそらく、今回のケースではそういうことだろうな。」
ニカルが応える。
「それじゃ、この街は記憶に突然造られたってこと?」
「そうなるな。」
「人は、嫌なことや記憶を忘れようとする。その真理を利用してこのようなことをやっているんでしょうね。」
魔女が静かにつぶやく。
「記憶の穴埋め・・・」
「・・・そんなことをできるやつがいーー。」
「いるのよね。こっちには、」
いつのまにか、アリスの目の前のソファにエポカが座っていた。
「どこから入ってやがった!」
ローンが声を上げる。ライメイ、シールズがそれぞれ棍棒、盾を構える。
「あらあら、歓迎されてないわね。」
エポカが見渡して話す。
「するわけないでしょ!」
警戒態勢を怠らずに、梨杏も声を上げる。
「魔女!」
「えぇ!」
魔女が杖に姿を変える。
「こんなところで暴れて良いのかしら?」
エポカが不敵に笑う。
「ニカル、魔女。あなた達の考えは大方あってるわよ。」
「「なぜ、こっちの話していることがわかる?」」
ニカルと魔女が同時に声を上げる。
「簡単なことよ。私はあなた達の行動を見ることができる。ただそれだけ。」
エポカが不敵に笑う。
「・・・要件は何かしら?」
山上が周りに武器を下ろす様にジェスチャーをしてエポカに視線を合わせる。
「大人がいると話が早くて助かるわね。」
周りをみて山上に視線を合わせて話を続ける。
「簡単なことよ。隣街の遊園地にきなさい。」
全員が息を呑んだ。
「・・・わざわざ敵の誘いに乗るわけ無かろう。」
ニカルの答えにそれぞれ頷く。
「あら?せっかくのチャンスを与えようとしてあげているのに釣れないわね。」
ため息をつきながら首を横に振る。
「ローン、梨杏・・・ここは大人しく従いなさい。」
山上がつぶやく。ローンと梨杏が山上の方を見る。
「「え?なんで、どう考えで罠でしょ!!」」
梨杏とローンが声を上げる。
「気持ちはわかるわ・・・でもこのまま大人しく、世界が壊されるのを見守るの?」
山上が声を震わせながら応える。全員が黙ってしまった。
「ふふっ。ありがたいわね。こうしてわかってくれる人がいると。」
エポカが山上をみて応える。
「それじゃ決まりね。明日から一週間後の夜、隣街の遊園地で待っているわね。」
エポカがニヤリと笑った。
「それと、お嬢さん。あなたは体調が悪いみたいね。やすんでいたら?」
アリスの方をチラリと見てつぶやく。
「あなた達の抗いが勝つか、我らの救済が勝つか楽しみね。」
ソファを立ち、その場で跳ねるエポカの姿が消えた。
(・・・ライメイとシールズの方を見た?)
エポカが立ち去った後ー。
「どう考えても罠よね。」
山上が冷静に応えた。
「あの場では、仕方なかったと思うぞ。」
ニカルが山上に応えた。
「そう言ってもらえるとありがたいわね。」
「先輩、私たちも行った方がいいのでわ?」
須藤が山上に問う。
「そうよね。一般人を巻き込むと思うから警戒はしておかないといけないわよね。」
山上が考え込む。
「小娘。お主はあの女の言う通り、休んでおれ。無理に行く必要はないであろう。」
ニカルがアリスに話した。アリスがコクリと頷いた。
「当日のメンバーは、私とローン。それとライメイ、シールズの計4人でいいかしら?」
梨杏が皆に向けて話した。
「その時まで充分に、準備しておくことー。」
それぞれが頷く。
遊園地ー。
「いいのですか?情報与えてー。」
ザッリアーグが話す。
「救済も抗いもー少しぐらい楽しみがないとね。」
エポカが応える。
「結局あのビルつかわねぇよ。」
遊園地をキョロキョロ見渡しながら少年が頭を描く。
「それは次の作戦ね。」
「我、命を全うすべしー。」
少年の後ろからサントクが歩いてきた。
「さぁ。あいつの力を解放させましょうか。」