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非日常世界へようこそ  作者: 紫音
第一閉
16/37

「ひかれたレール」

夏エリアー

アラクは、ローンの見舞いにやってきていた。

「失礼する。体調は大丈夫か?」

アラクがローンの体調を心配する。

「あぁ。なんとか。大分熱も下がったぞ。」

ローンの視線が下に下がった。視線の先には手のひらに置いてあるコインに目が行っていた。

「どうした?ローン。一点なんて見つめて、」

アラクがローンの様子を見て聞いてきた。

「ん?あっあぁ。このコインを見てたんだよ。」

コインをアラクの目の前に持っていった。

「コイン?なんのことだ?」

アラクが首を傾げる。

「え?見えないのかよ!このコインが!」

ローンが、コインをアラクの目の前で振る。しかし、アラクには見えていないようだった。

「あら?アラクちゃん。きてたの、今お茶出すわね。」

ローンの母親、久留くる 離浪りろうが帰ってきた。服装は白一色のワンピースを着用していた。髪は白色。

「いえいえ、すぐに帰るのでお気になさらず。」

「あら?そうなの?気おつけて帰ってね。今日はありがとうね。」

「それじゃまた、元気になったら遊ぼうな。これで失礼する。」

アラクがローンの部屋から帰っていった。

(・・・見えてないのかよ。)




警察署ー。

「はぁー。」

タバコを咥えながら。机の上に置いてある資料に男性警察官が目を通していた。書類にはたくさんの個人情報と写真が記載されていた。

「失礼します。」

ドアがノックされて、1人の女性警察官が入ってきた。

「・・・おう。矢野やの何かわかったか?・・・なんだその資料は。」

「これ、連続失踪事件の失踪者です。」

矢野やの めぐる。この警察署の女性警察官だ。ドンと資料を机の上に置いた。

「これ、何枚あるんだ?」

資料をみて、男性警察官が問いかける。

「えーっと。確かこの1週間だけで、54人ですね。」

「そんなになのか。参ったな。」

「容疑者は分かっているんですよね。」

「あぁ。分かってはいるんだが・・・目撃しても何度も逃げられてるんだよな。」

ため息をついて男性警察官が話す。

「危険人物だから、目撃しても1人で追うんじゃねぇぞ。」

男性警察官が矢野に警告する。

「はい、わかりました。それでは失礼します。」

敬礼をして、所長室から出ていった。

矢野が出ていったあと、椅子に深く座り直した。

「随分とお疲れのようね。」

ドアの前に1人の少女が立っていた。

「エポカか。ことわりは見つかったか?」

「全然、気配も全くないわ・・・困ったもんよ。」

エポカが首を振りながら、男性警察官の側に歩いていった。

「あなたもご苦労様ね。この核では、息吹いぶき 童市郎とうしろうと呼んだ方がいいのかしら?」

「やめてくれ。」

息吹いぶきと呼ばれた、男性警察官がため息をつく。

「この容疑者・・・放遊者ほうろうしゃなのよね。こっちも捕まえないと・・・」

机の上に置かれてる資料に目を通してエポカが話す。

「やっぱりこいつが、放遊者ほうろうしゃなのか。」

息吹所長も資料に目をやる。

「事の時。失礼する。」

息吹とエポカがドアのほうに目をやると、1人の男性が立っていた。服装は、紫を基調のポロシャツを羽織っており、ズボンは黒色の長ズボンをきていた。顔は布に覆われていて、表情を伺うことができない。

「あなたは、確か、放遊者ほうろうしゃの・・・」

「サントクさん!あなたもこの核にいたのですね。」

「我、核の理、判明せしー。」

サントクが話した。

「「え?」」

エポカと息吹が同時に声を上げた。

「核の理、分裂せしー。」

サントクが2枚の紙を机の上に置いた。その紙に写真と、個人情報が記載されていた。

「・・・2つに割れてるとは、めんどくさいな。」

「あの子がアイテムを渡したことで表に現れたのかしら?」

息吹とエポカがそれぞれ意見を出す。

「ん?」

エポカがドアのほうに視線をやった。

「どうした?エポカ?」

息吹が問いかける。

「いえ。なんでもないわ。」

(ネズミが一匹迷い込んでたのかしら?)

「汝、一つ解いて良いか?」

サントクがエポカに問いかける。

「?何かしら?」

エポカが聞き返す。

「救済の物。提供、理解ー不能ーー。」

サントクが質問する。

「あぁ。それね。面白いからよ。」

エポカがニヤリと笑う。サントクが机の上に置いた紙には男女が写っていた。女性は、久留 離浪 男性は、久留くる がんせきと記載されていた。



中央エリアー。

ローンと父親、久留くる がんせきは中央エリアにある病院にやってきていた。中央エリアは春、夏、秋、冬、4つのエリアの中央に位置している。病院や市役所などの施設が建っている。

「よかったな!大分熱も下がって。」

ローンの背中を石がバンバン叩く。

「いてぇなぁ。止めろよ!」

ローンが小走りで石から離れる。ガッハッハと笑いながら石が歩く。

「そんじゃ。帰るぞ。えーっとここから近いテレポートマシンはどこだ?」

病院内にはテレポートマシンがないため近くにある場所を探して、ローンと石は帰路に着いた。



冬エリアー

ローンはアラクの家にやってきていた。

「もう。体調は大丈夫なのか?」

ローンが体調回復してから数日経っていた。

「おう!もう大丈夫だ!」

胸をドンと張って答える。

「なら、よかった。」

アラクが安堵した様子で答えた。

「んで?何のようだ?急に呼ぶなんて」

ローンがアラクの家にやってきたのは、アラクに誘われたからだ。体調が回復したらでいいので話がしたいとアラクから電話があった為、訪問したという経緯だ。

「ローンに、聞きたいことがあってな。」

アラクがローンに向かって話を始めた。

「お主、あれ以来トランプの女性を目撃してはいないのか?」

「え?あぁ。あの時以来一度も見ていないな。」

ローンが腕を組み考え込んだ。

「んじゃ、俺も一つ聞いていいか?」

今度はローンがアラクに聞き返した。

「アラク、お前。俺がトランプの女性を追いかけて時どこにいたんだ?」

「そのことか?あの男性警察官と同じで、濃い霧でお主を見失ったぞ。そして、秋エリアの大通り付近で倒れている汝を見つけたということだ。」

アラクが答えた。

「・・・そうだったのか。」

ローンが考え込んだ。

「ん?ローン、電話がきているぞ。」

ローンの耳元についている小型の電話機が振動していた。

「あーもしもし?」

小型電話機のビジョンに電話の相手のローンの母親が投影された。

「あっ繋がった。ごめんね。ローン。あなたに様があるって言うお客さんがきててね。戻ってこれる?」

「客?」

ローンが首を傾げた。

「わかった。今、戻る。」

電話を切ってアラクの家を後にする。

「この核に終焉しゅうえんの時ーー来たりてー。」



夏エリアー

ローンは急いで自宅に帰ってきた。

「ただいまー。母さんお客さんってのは?」

母親にお客さんの事を聞いた。

「あら?以外と早かったのね。なんか大事な話しがあるみたいだから、あなたの部屋に案内しておいたわ。」

「話?」

母親と話を切り上げ、自室へと向かった。

「すみません。お待たせしましたぁー。」

自室に入った途端ローンが固まった。

「・・・急に押しかけてしまって申し訳ないわね。」

ローンの視線の先にはトランプの女性が座っていた。見た目は茶色の大きめのローブを羽織っていた。ズボンは黒色の長ズボンを着用しており、杖を机の上に置いていた。

「・・・どうしてここが?」

恐る恐る。ローンが女性に質問をした。

「・・・そうね。とりあえず。座ってもらえるかしら?」

ゆっくりと、ローンは女性の前に座った。

(・・・なんで、俺の部屋なのにこんな緊張してるんだ?ってか何でここにいるんだ?わけがわからねぇ。どうしてだ?)

ローンが色々と考え込んだ。

「・・・」

「・・・」

重い空気が流れる。

「・・・あなた、私がやっていたことみてたのよね?」

女性が重い口を開いた。ローンが静かにコクリと頷く。

「やっぱり見られてたのね。」

一息ついて話を続ける。

「信じてもらえないとわかってるけど。まず、私はこの世界の住人ではないわ。」

「へ?」

ローンがすっとんきょうな声を上げた。

「あなた、あの時コインを拾ったわよね。」

ローンがコクリと頷く。

「それは、闇のアイテムっていう物で、一般人には視ることができない物なの。」

「一般人にはみることができない?」

「そう。現に私のこのトランプも闇のアイテムなんだけどね。」

女性が机の上に何枚かのトランプを置いた。

「・・・あなたにも心当たりあるかしら?」

ローンが暫く考え込んだ。

「・・・そういえば、コインがアラクに視えてなかった・・・。」

あの時のアラクとの会話を思い出した。

「結論から言わせて貰うわ。・・・私と協力関係を結んで欲しいの。」

「協力?」

「・・・そのためには、まず奴らの救済について説明しないといけないわね。」

女性がローンに説明しようとした時ー。「ピンポーン」と呼び鈴が響いた。

「はーい。今でまーす。」

ローンの母親がモニターを確認する。

「あら?警察官?何の様かしら?」

ローンの母親の声が自室まで聞こえてくる。

「・・・警察官?」

「後をつけられた?」

女性がボソリとつぶやいた。

「あなたー。一緒に出てもらってもいい?」

ローンの母親が父親を呼んだ。

「・・・なんだ?どうした?」

部屋の奥からローンの父親が出てきた様だ。

(・・・なんで、家に警察官が?)

ローンが考え込む。

「ちょっと待って!迂闊に動いちゃダメ!」

女性が声を上げる。よく見るといつのまにか霧が立ち込めていた。

「家の中なのに霧?」

ローンが声を上げる。

「この霧・・・あの時と同じ・・・。」

女性が静かに呟く。

ローンの両親が玄関に出た。

「はいはい、何様ですか?」

ローンの父親が警察官に尋ねた。

「私かいう者ですが、」

ローンも様子を見に玄関に行った。玄関に立っている警察官が手帳を広げていた。

「息吹所長?警察官の所長が何用でしょうか?」

ローンの父親が再び尋ねる。

「あぁ。こちらの女性を探してまして・・・」

息吹所長は1枚の紙を取り出した。

「あっ!この女性。さっきいらっしゃった方だわ。」

「なるほど、では呼んできてもらえますか?」

ローンの母親が女性を呼びに行くためにローンの自室に向かった。

ーーーローンの両親が、所長から視線を外した瞬間ー。

「まっ。呼ぶなんて必要ないんだがな。」

チャッキっと息吹所長が拳銃を取り出した。

「危ない!父さん!母さん!」

ローンが叫んだ。

「「え?」」

ローンの両親が息吹所長の方を向いた。

「させるかぁー!!」

息吹所長の後ろから1人の女性が近づいているのが見えた。

バァーンと銃声が響くーー。銃声は一気にローンの両親を貫いた。

後ろから走っていた、女性が息吹所長の持っていた拳銃を蹴り上げた。

「え?」

目の前の光景が信じられないー。

(なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?)

色々とローンの思考がグルグルと周りめぐる。

「ダメ!行ってはいけない。止まって!」

ローンの後ろから女性が叫んだー。しかし、ローンには届いていないようだった。

「少し、喋りすぎのようね?」

女性の後ろに1人の少女が立っていた。

「っ!あなた。エポカ!!どうしてここに?」

「ふふっ。放遊者ほうろうしゃには大人しくしてもらおうかしら?」

「くっ!しまった。」

女性の姿が消えた。

ローンが両親の元に走り出した。ーーローンの前に少女が立ちはだかった。

「そこを!どけ!」

目が完全に血走っていて、興奮している状態だった。

「あなたにはまだ、利用価値がある。簡単には殺さない。少し眠って貰うわよ。」

少女がローンの前に手をかざすと同時にローンの意識が遠のき始めたー。


「理ー。破壊されしー。核ー終焉。ーーせし。」

ローンの自室から1人の人物が歩いてきた。

「・・・そうね。やっと終わった。時間がかかってしまったけど。この核でも収穫はあったわ。このローンとかいう人利用させてもらいましょうか。」

少女の視線がローンに向かった。

「我、送る。」

「あなたはできるけど、あっちは無理ね。残念だけど・・・」

少女の視線が息吹所長のほうに向かう。

「あなたこれだけ離れると流石に遅れないわよ。」

パリパリと何処からともなく音が聞こえてきた。

「核。破壊。ーー確認。」

「さっさと行きましょうか。」

少女が何かを拾って話を続けた。

「この核も悪くなかったわ。」

2人の会話を薄れゆく意識の中ー。ローンは聞いていた。


現代ーー。アリスの時代ーー。

「ハッ!」

ローンが目覚めた。周りをみるとアリス達も寝ていた。

「・・・嫌な時間に目覚めたな。」

壁に立て掛けてある時計に目をやると夜中2時を差していた。

(・・・外の空気でも吸ってくるか。)

起き上がり、アリス達を起こさない様に静かにドアを開け表に出た。暫く歩いて、山上の家の外にでて、小さな丘までやってきた。

「眠れないのかしら?」

魔女がローンの後を追う様にやってきた。

「すまん。おこしまったか?」

「大丈夫よ。元々私にはあまり睡眠は必要ないしね。」

「そうなのか?」

ローンの横に座って座り込んだ。

「・・・詳しく、話をするつもりなのか?」

ローンが魔女に質問した。

「・・・これだけ、一般人も巻き込んだらね。流石にもっと詳しく説明しないといけないと思うわ。アリスに話した以上に・・・。救済のこと、放遊者ほうろうしゃのこと・・・あなたの核で起こったことは、多分・・・あなたの両親が理だったから。だと思うのだけど・・・。」

魔女が答える。

「それに、あなたにお願いがあるの。」

「願い?」

ローンが首を傾げる。

「・・・それは、あなたにーーーを・・・ーーーーして欲しいの。」

「え?」

夜の冷たい風が丘に吹き荒れる。夜がふけていった。



扉の前ー

「うーん。やっぱり。あの放遊者ろうろうしゃを生き残したの失敗だったかしら?」

エポカが首を傾げていた。

「・・・どんなやつでも、邪魔するやつは殺すまでだ・・・。」

少年が答える。

「・・・確かにその通りなんだけどね。」

肩をすくめて答える。

「そんなに、残しとくのは悪い影響なんですか?放遊者ほうろうしゃというのは?」

キュルアーが聞く。

「私たちの救済に協力してくれることもあるんだけども、たまに抗い側に回ることもあるからね。」

エポカが曖昧に答える。

「そうなんですね。」

「ん?ザッリアーグが呼んでる?・・・この核?・・・今向かうわ。」

エポカが暗闇に消えていった。

「・・・さて、俺も作業に戻るか。・・・色々と頼んだ。」

少年も暗闇へと消えていった。

「皆さま。ミッションがあるのですね。僕も何かあるまで、休んでますか。」

キュルアーが立ち去った。

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