「反乱ー」
夏エリアー
あれから数日たった。あの日以降トランプの女性を見ることは一回もなかった。
(・・・やっぱり気のせいだったのか?)
「どうした、ローン?」
アラクが話しかけてきた。夏エリアにアラクが遊びにきていた。
「いや、なんでもない。少し考えことしてただけだ。すまんな。」
ローンがの答える。
「・・・トランプの女性のことか?」
アラクが小声で問いかけてきた。ローンが息を飲み込んで静かに頷いた。
「あれ以来目撃していないのだろう?気にすることないとおもうのだが・・・」
「そうなんだけど・・・どうしても脳裏から離れなくて、今でも思い出すんだ。あの時の光景を。」
ローンが身を震わせながら話す。
「見つけた!オメェか!」
大通りから裏路地につながる通りで声が聞こえた。ローンとアラクは声のする方を振り返った。声のする方をみると、1人の女性が警察官に追いかけられていた。警察官は指定の服を着用していた。
「!!あの人!」
ローンが声を上げた。
「あの女性か。」
「追うぞ!アラク!」
ローンは走り出した。
「まて!ローン。」
アラクはローンを追いかけていった。
「ハァ、ハァ、先輩!どこにいったんですか?」
1人の女性警察官が走ってきた。
裏路地ー。
「行き止まり?」
女性が裏路地の行き止まりまで走ってきた。
「やっと追い詰めたぞ!」
警察官が追いついた。ローンとアラクは気づかれないようにゴミ箱の隅に隠れた。
「あの女性か?」
アラクが小声で問いかけてきた。ローンが頷いた。
「なんで?私を追いかけるの?」
女性が警察官に問いかけた。
「それはテメェが1番わかってるだろ。お前を連続失踪事件の容疑者として、確保する!」
警察官が女性に向けて話した。
(あの女性が?)
気がつくと辺り一面に霧が広がっていた。
「・・・いつのまにか霧が。」
女性が呟く。
「この霧・・・」
霧が濃くなり、警察官と女性の姿を捉えることができなくなってきた。
「今のうちに!」
女性が声を上げ颯爽と走り出した。
「ち!逃すか!」
警察官が追いかけようとするが、霧が濃すぎて追うことができなかった。
「ちっ!どこ行きやがった。」
霧が晴れると女性の姿が消えていた。
「あらら。まさかの事態ね。まぁいいわ。エサも移動したみたいだし。」
建物の屋上で女性が先程の光景を見ていた。
裏路地からでて大通りを女性が走っていた。
「今すぐ、人目のつかないところに行かないと・・・」
逃げている間にも、何人かの住人に手を触れ、トランプに変化させていった。
(やっぱり、あの女性が・・・)
その光景をローンが追いかけながら目撃していた。あの時、逃げていく女性の姿を見ることができ、追いかけることにした。
(・・・どこまで逃げるんだ?)
裏路地ー。
女性が去った後。男性警察官が裏路地から大通りに出てきた。
「ち!完全に見失った。」
「あっ!いたいた。先輩探しましたよー。」
女性の警察官が走ってきた。
「・・・どこにいた?」
「すみません。先輩が急に走り出すから見失ったんですよ!」
両腕をブンブン振りながら話す。
「そうか、すまんかったな。容疑者を見つけたから今すぐにでも捕まえたくてな。」
女性警察官の頭をポンポン叩きながら話す。
「この核にいるのか、」
男性警察官がボソッと呟く。
「何か言いました?」
女性警察官が聞き返す。
「いや?なんでもない。今日は戻るぞ。」
2人組の警察官はもどっていった。
秋エリアー。
女性は大分走っていた。いつのまにか、夏エリアから秋エリアまで移動していた。ここに来るまでにもざっと数えただけでも20人程度トランプに変化させていた。
「ここまで来るれば、」
女性の足は裏路地奥で止まった。
「これで何枚集まったかしら?」
手元をよく見ると、数多くのトランプがあった。
(あれが、住人達の姿?)
かすかに動いた時大きな音を立ててしまった。
「だれ?」
女性が振り向く。
「あっ!えっーと・・・」
しどろもどろになりながら出てきた。
「貴方は?」
女性が顔をこわばらせながら質問する。恐怖のあまり何も答えることができない。
「どうやら、何も知らないみたいね。変に事を荒らげても大変なことになるから、ここで口封じでもしましょうか。」
女性がローンに襲いかかろうとした瞬間。濃い霧が立ってきた。
「また霧?」
「汝、力を求めるか?」
濃い霧の中どこからともなく声が聞こえてきた。
(どこから?なんだ?)
ローンが辺りを見渡す。しかし人影は見つからない。
ローンの足元に何かが転がってきた。
「なんだこれ?どこから?」
よく見るとローンの足元にコインがあった。あまりこと時代では見ることができない絵柄だった。
「綺麗なコインだな。」
ローンがコインを拾おうとした。
「っ!ダメそれを拾っては、後戻りできなくなってしまう!」
女性が声を荒げる。一瞬ローンの手が止まる。
「汝、ここで命。終了させるか?」
また謎の声が聞こえた。
「このままじゃあ。」
女性が杖を取り出し、攻撃を仕掛けようとする。
「見つけた。」
女性の前に1人の少女が現れた。
「!アンタは、エー」
「あら?名前を覚えてもらってるなんて光栄ね。」
「邪魔すんなぁ!」
女性が少女に向かって攻撃を仕掛けた。
「・・・なにも学習しないのね。」
ため息をついて攻撃を打ち消した。
「邪魔なのは貴方の方なのよ。」
少女がくるりと振り返り、ローンの方を見た。
「さぁ。この核で生き残りたいなら、それを拾いなさい!それが貴方を導くでしょう。」
少女が呼びかけた。
「だめ!拾ってはいけない!」
女性が声を荒げるが、ローンの耳には届いていない。ローンの腕がコインに伸びる。
「あ。」
女性が小さく声を上げる。少女がニヤリと微笑む。ローンがコインを拾った。
「さて、私の役割はここまでね。」
少女が姿を消した。
「そんな・・・」
女性が静かに声を漏らした。気がつくと辺り一面にまた濃い霧が広がっていた。
「ローン、どこにいる?」
遠くの方でアラクの声が聞こえる。そこで、ローンの意識が途絶えたー。