『南無阿弥陀仏』は何語か 参考文献一覧&解説
こんにちは! 江古左だりです。
現在連載している拙作「お釈迦様って本当にいたの?~文字は隠されたメッセージを投げかけているという話~」を解説します。こちら読まなくても大丈夫なので、興味のある方だけどうぞ。
https://ncode.syosetu.com/n5924iv/
【本小説のテーマ】
『文字は私たちに隠れたメッセージを教えてくれる』ということ。
そのとき、そのとき、生きた人々が書き残した文字を読めばさまざまなことがわかる。それをスリリングな推理小説形式で紹介することが狙いです。
【南無阿弥陀仏について】
■『南無阿弥陀』の発音について 氏平明
https://core.ac.uk/download/291366716.pdf
本書ではさら~っと書いただけの『南無阿弥陀仏』ですが、サンスクリットの『ナモアミターユスブッタ』がなんで最終的には『なんまんだぶ』になったかの論文です。難しかった。
【般若心経のサンスクリット語について】
■日本仏教学院 『仏教WEB講座』
https://true-buddhism.com/
◾️ 般若心経のサンスクリット原典と対訳(カタカナの読み方付き)
https://true-buddhism.com/sutra/heartsutra/sanskrit/
ほんとーーーーーにお世話になりました。サンスクリット語をローマナイズしたものに読み仮名まで振ってくれる新設設計。こちらを読まなければ小説は完成しなかったというくらいです。ありがとうございます。
■サンスクリット語で大本を読む 大崎正瑠
https://www.bus.nihon-u.ac.jp/wp-content/themes/nichidai/assets/img/unique/laboratory/kiyo/oosakimasaru.pdf
■インドの般若心経を聴く(サンスクリット語)
https://youtu.be/rp90SqFKKVI?si=P2Z6sw3lwr7U8WzA
法隆寺貝葉経を修正を加えたうえ、読んでいます。最後の方に
「ガテー ガテー パーラガテー パラソーガーテー ボディスワーッハー」 「プラウジニャーパーラミッターフリダヤム サマーサム」がでてきます。
『羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶 般若心経』ってホントに言ってる! サンスクリット語だ! と感動しました。
■心經 摩訶般若波羅蜜大明咒經(無音樂女聲版) 最早的漢譯本 鳩摩羅什譯本
https://youtu.be/4ZfbltPGTK8?si=R4NDj82u0INRLe-9
マジ助かった!
日本の『般若心経』はほぼ玄奘三蔵訳をとっているようで、クマラジーヴァ訳がどこにもでてこない。唯一、中国のサイトで見つけました。ありがたかった。
■中国人日本のお経に驚き!お経は中国語?中国人は意味わかる?
https://youtu.be/UiB19H7Em6w?si=4giTfgyLzeemnvpo
3分30秒当たりで『プージャー プートゥア ミートゥア シンジン!』って言っているんで聞いてみてください(全然違うんで笑える)
日本は1400年近く元の発音を『保管』しているのです。日本すごいな(笑)
こちらに『街のお坊さん』という方が降臨して、怒涛のように知識を披露してくれているのですが、『中国の発音』についてひとしきりいろんな方が参加しています。こんなに『街の知識人』がいるとはびっくりでした。
そこで玄奘三蔵訳を『呉音』て発言していらっしゃるんです。
『え! 唐の人なのに「唐音」じゃないの!?』と焦りまくり、本稿では『唐の時代の音』とふわあ~~とした書き方になってます。中国語についてほぼ知らないんで細かく書けませんでした。
『遣隋使』のときは玄奘はまだ帰国してませんが、『遣唐使』では玄奘三蔵に直接会っているそうですよ!文化交流~。
■「日本で人気のお経の新しい見方」佐々木閑
www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/19_heart-sutra/guestcolumn.html#
般若心経は釈迦入滅後に発生した大乗仏教の考え方であり、釈迦の教えそのものではないという話です。
本稿は釈迦ではなく玄奘三蔵の『翻訳』について焦点をあてたものであり、この説をとりませんでした。
【貝葉経について】
■梵本心経并尊勝陀羅尼(貝葉)
https://emuseum.nich.go.jp/detail?langId=ja&webView=&content_base_id=100625&content_part_id=0&content_pict_id=0
これが『貝葉経』の本物です! 何書いているかわかりますか!? わかるわけない(笑)
■貝葉による般若心経の秘密 中田良作
http://baiyo.g1.xrea.com/index.html#home
なんとこの『貝葉経』を『貝葉原文』『校訂梵文』『発音』『校訂訳文』『玄奘訳文』に並べて掛け軸にされた方がいまして……(スゴイ)
『帰命一切智者』はこちらからとりました。玄奘もクマラジューも訳していないので、おそらく『古訳』からとられたのだと思います。
なぜ訳さなかったかというと(あくまで私の考えでそういう論文があるわけではないのですが)
帰命一切智者=拝啓
だからだと思います。日本の文書に必ずつける『拝啓』です。つまり儀礼的なもので、そこに深い意味はないから訳を飛ばしたんだと思います。そんなところにも翻訳者の『考え』がでてきて面白いです。
■仏教復元プロジェクト 第18回 「法隆寺貝葉写本」を読み解く・・・その1
https://note.com/bukkyoufukugenn/n/n10ee8502f9d1
貝葉写本をローマナイズしたものが載っています。また法隆寺貝葉写本は(世界最古は2世紀)(に次ぐ)のサンスクリット語写本だという記述はここから取りました。
■法隆寺貝葉『般若心経』写本についての一報告 矢坂秀臣
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chisangakuho/50/0/50_KJ00009324654/_pdf/-char/ja
貝葉写本がインドではなく、日本または中国で書かれたと推測されるという論文。
インド人なら間違えないところを間違え、かつ日本や中国でならこのような間違えはよく見られるものなのだそう。ウイキペディアだと、伝承ではインドの僧が書いたとのことですが、この論文は違う説を取っています。書き間違えから国が特定されるなんて面白いですねえ。
◾️ 米澤嘉康准教授(『般若心経』法隆寺梵語写本の特徴)| 大正大学
https://youtu.be/JOU_sw4niI4?si=yjMARpGs2stjccLB
9分12秒より。
具体的にどこを書き間違えていて、なぜ漢字文化圏の人がサンスクリット語のお経を写本したとわかるかについて説明されています。
■仏教復元プロジェクト 第20回 「法隆寺貝葉写本」を読み解く・・・その3
https://note.com/bukkyoufukugenn/n/n9b361a4db396
法隆寺貝葉写本はスッタニパータと同時期に書かれた梵文が元になっているのではないか? という話
大乗仏教の『観自在菩薩』がでてこないからだそうです。玄奘三蔵訳『観自在菩薩』とクマラジューヴァ訳『観音菩薩』が違うのはそれぞれ異なるテキストを使っているからでは? と考察されています。
テキスト(原典)に使われた単語が違えば、翻訳も当然変わってきます。
*ただし私はこの説を取りませんでした。
『法隆寺貝葉写本』と『スッタニパータ』が同時期と断じている論文を見つけられなかったからです。
エビデンスがない以上『事実』と認定しませんでした。(『スッタニパータ』は初期の経典なので、その写本を遣隋使が持って帰るっていうのはしっくりこないです)
■中国梵語研究と貝葉経の保護現状 (お名前が難しすぎて打てませんでした)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bukkyobunka/2010/19/2010_L117/_pdf/-char/ja
インドが宗教戦争や高温多湿なため、貝葉が残っていないというのはこちらの論文からとりました。
中国では翻訳したら原本は捨てていたそうです。もったいな~~い。
【お釈迦さまが話していた言語について】
◾️マガダ語とパーリー語
https://www.y-history.net/appendix/wh0201-061_3.html
◾️釈迦はマガダ語を使いパーリー語は使っていなかった。
http://www.koinonia-jesus.sakura.ne.jp/shaka/2shkawords.htm
実は最初『お釈迦さまが話していたのはパーリー語』って思っていた(そのように書いているサイトもあったのですが)
現在の学説では違うようです。
お釈迦さまはマガダ語が話されている範囲内のみの活動だったようです。
ただ言語的に非常に似ているので、例えるなら『お釈迦さまは名古屋弁で布教したけど、入滅後弟子たちは大阪でも布教して大阪弁を話しました!』的な『確かに違う言語だけど日本語としては同じだよ』ってくくりらしいです。
今はそのパーリー語も話されてなくて上座仏教の典礼にわずかに見られるだけらしい。サンスクリットはバリバリ生きた言語です。
■ヤシの葉研究ノート 安江明夫
https://www.gakushuin.ac.jp/univ/let/top/publication/KE_57/KE_57_012.pdf
貝葉経って墨が薄くなって読めない箇所がたくさんあるそうです。
ここで「!?」てなったのは、そもそも貝葉は鉄筆でひっかくと、文字が浮き出てくるものだから、墨はいらないのでは!? ということでした。
調べたところ「鉄筆で書いた上に、墨を流し込んでいた」んだそうです。
なるほど! 長く文字を読むため、墨で補強していたということです。なんでも調べてみるものですね~。
■【般若波羅蜜多】の翻訳について
Pañāñā パンニャー 智恵
pāramitā パーラミッター 完全な
hṛdaya フリダヤ 心 心臓 肝心 精髄
中国語で音写したものになります。
なぜ『ハンニャー』ではなく『パンニャー』なのかといいますと、日本語の発音が変わったからです。
これを『ハ行転呼音』といいまして、拙作『16万年前の隣人』〜『母』はなぜ『ハハ』と発音するのか?〜に詳しくあるので良かったら! 読んでくださいね!(ダイマ)
https://ncode.syosetu.com/n4947ie/
簡単に説明すると日本語の『はひふへほ』の発音が『パ(Pa)』→『ファ(Fa)』→『ハ(ha)』と変わったからなんです。
つまり日本に入ってきたときはちゃんと『般若波羅蜜多』は『パンニャパラミッタ(PANNNYAPARAMITTA)』だったんです! 聞こえた通りだ~~。
これが戦国時代の人に読ませると『ファンニャファラミッタ(FANNNYAFARAMITTA)』って読むんですよ! 日本語おもしろ~~い。
ちなみに昔は『hahifuheho』の発音がなかったので、そう聞こえる中国語は『かきくけこ』って書いてました。だから『貝葉経』は『かいようきょう』ではなく『ばいようきょう』と発音するんですね。中国の読み方なんです。へ~。
般若波羅蜜多を私は『完全な智慧のエッセンス』と訳したのですが、最後の『フリダヤ』は『心』って意味なんですね。でも『心』って『気持ち』って意味もあるじゃないですか。これはそうじゃなくて『膨大な量のお経の一番大切なところ』って意味になるので『エッセンス』と書きました。
『心』だとなんか意味がぼやけて、『精髄』だと難しすぎてす~~っと読者の頭にはいらないなとおもったのです。
それで私はたった3単語の翻訳にこんな悩んだんだから、玄奘は1100万字も翻訳してどんなに大変だったんだろうと思いました。
以上です。
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