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BURNING Ⅴ

「よう、久しぶりだな。武藤、柳生」

 笑顔で二人を出迎える、ように声をかける朝倉。だが、ふたりは何の応えも示さない。

 しかし、組に殴り込みとはいい根性をしているもんだ。

 警察にも匿名でヤツらのことをたれこんだが、どうやら間に合わなかったようだ。間に合ってれば、ただひたすら逃げ惑うことしか出来ないのだから。

 と、朝倉は思った。もちろん、外れなのだが…。

「ははは、そう怖い顔するなよ、と言っても。無理だよな」

 確かに、無理な状況だった。

 控え室の壁には数個黒く小さな穴があいていた。その壁を背に、ふたりに向けてトカレフを構える子分たち。

 銃撃戦をした割には、最初に撃たれた子分を除き他の子分たちには傷一つ無かった。

 朝倉はまた笑った。すると史孝ら子分どもも一緒に笑う。

「弾切れか、ん? そこまで撃って、一発も当てられなかったのか。いや、壁には全部当てたか」

 と、嫌味を言いながら三度笑った。

 奥歯を噛み締め、拳を握り締め、石化したままのふたり。何も出来ない。

 畳み掛けるように続ける朝倉。

「武藤、お前はストリートレーサーだろう。どこで手に入れたか知らないが、それがトカレフなんざ持って何をしようって言うんだ。なあ、柳生」

 突然振られた零、だが、反応無し。

「結局このザマだ。おめおめと犬死にしに来たのか、阿呆が。まったく、お前らは大阿呆だ」

 好き放題の罵声と嘲笑を浴びせ、悦に浸る朝倉。史孝らも面白おかしそうに、腹を抱えて大声で笑い出した。

「そうそう。今グレンダがいるんだ」

 わざとらしく、今ふと思い出したように言う朝倉。その言葉に、目を見開き反応を示す零。朝倉はそれを見逃さなかった。

「みんなで楽しもうと思って呼んだんだ、が。良い事を思いついた。柳生、もう一度、人生の最後に、グレンダとやらせてやるよ」

 にやけ面の朝倉。本当に可笑しそうだ。対する零は、血が沸騰したように顔を真っ赤にしている。

 馬鹿にするな……。と、思っても、どうしようもない。裕二は、まさか零がそのグレンダと肉体関係にあったなどと初めて知ったが、それだけだ。この状況の中では、どうしてなどと疑問など持ちようも無い。

「それを、オレらが見守ってやる」

 フィニッシュ。決まった、とばかりに胸を張る。子分どもが進み出る、トカレフを構えたまま。

「トカレフを捨てろ」

 と、命令する。裕二は歯を食いしばり、それに従おうかと言うとき。

 突如としてサイレンの音が鼓膜を突いてきた。


「なんだと!!」

 朝倉はまた驚くことになってしまった。

 突然のサイレン。パトカーがこっちに向かっている? 断定は出来ないものの、外では事故は起きていないようだし。

 なにより、来ているであろうかと言うパトカーのサイレン音からして、やけに数も多そうだ。

「なぜだ、銃声は漏れてないはずだ」

 組事務所は、中で何が起こっても、もとい何を起こしてもいいように。完全防音を施しており、外に銃声が漏れることはありえない。

 なのになぜ、パトカーが来ているかというと…。朝倉はにわかに不安を覚え、裕二と零の方を向いた。

「ああ、そうそう。ここに来る前に、うちにおまわりが来たがな」

 サイレンの音を聞き。間一髪助かったと、してやったりと、どうにでもなれと、応える裕二。

「な、なに!」

 自分の思ったことが外れて、またまた驚きの朝倉。

「じゃあ何か。お前らおまわりから逃げて、そのままここに来たってのか」

「そうだ。オレらの車を見つけたんだろ、きっと」

 と、馬鹿にされたお返しとばかりに毅然と応える零。そこに裕二が、自慢げに続く。

「おまけに婦人警官を人質にしてやった。着く前に、近くで開放したがな。ま、そんななめたことされたんだ、やっこさんブチ切れてるだろうな」

 能面顔が白くなるのを面白そうに眺める裕二と零。

「容疑のかかっているヤツの車がヤクザの組事務所の前に停まっている。どう申し開きするつもりだ?」

 今度は零が可笑しそうにたずねる。近くでトカレフを突きつける子分も顔が白くなっている。

 今ここで撃てば、駆け込んだ警官たちに殺人の現行犯で逮捕されるのは明らかだった。

 そのころ。サイレンの音はグレンダのいる朝倉の部屋にも聞こえていた。

 グレンダを押さえつけている子分どもは、サイレンの音に驚いていた。どうしてサツがきているのか、皆目見当がつかなかった。

 そのせいか、グレンダを押さえつける力が抜けたことにも気付かない。

 それこそ、グレンダの脳裏に希望の光が閃いた。

「あ!」

 と叫んだときにはときすでに遅く、グレンダは自分を押さえつける腕を払いのけ、素早く立ち上がり部屋から逃げ出す。

 突然のことに、女にまんまと逃げられた子分どもは慌てふためき統率の取れた動きが出来ない。

 ドアを開け、出口向けてダッシュすれば。控え室にはサイレンの音に驚くヤクザども。それと裕二と。

 零の姿。

「れ、レイ!!」

 驚くグレンダ。まさかここに来て、零と再びあいまみえようとは夢にも思わなかった。

「グレンダ!!」

 それは零も同じだった。さっき、朝倉がグレンダがいるとは言ったが、こうして実際にその姿を見て。今のこの慌しい状況にもかかわらず、体の奥底に眠るものがこみ上げてきた。

 裕二は、呆然としている。マジかよ、またあの女だ…、と。

 しかし、事態はゆっくりと再会に浸る猶予は与えてくれない。グレンダは咄嗟に零の手を引っつかむ。

「逃げるのよ!」

 と、言うやいなや、玄関向けて零を引っ張り猛ダッシュ。一瞬呆気に取られた朝倉たちだが気を取り直して、トカレフを突きつけようとする、が。

「おっと待った! オレも同じの持ってるぜ!!」

 と、弾切れの二丁のトカレフを投げつける。それが朝倉の手に当たった。弾を撃っても当たらなかったのに、本体そのものを放り投げて当てるとは、まだまだツキは残っていると思っていいかもしれない。

「うお…」

 と、トカレフを落としてしまった朝倉。拾っている間に、裕二もまんまと逃げ出す。史孝ら子分どもは不必要に罪を重ねたくないのか、ただ見送るだけだった。それを見て、朝倉は憤慨し。

「何をしている。何で撃たなかった!!」

 と、怒鳴りながら拾ったときには、もう三人は事務所から出ていた。

「す、すいません…」

 と、恐る恐る詫びる史孝。朝倉は舌打ちし、張り裂けんがばかりの大声で史孝と昂次郎と賢に号令を出した。裕二と零を追いかけられるのは、この中ではこの三人しかありえなかった。他では、置いていかれてしまうのがオチだ。

「車を出せ! 追いかけるぞ!」

 だが、三人はびびっているのか。素直に、はい、と言わなかった。

「な、本気ですか? サツが来ているんですよ」

「知るか! とにかくアイツらを始末するんだ、そうしなきゃオレの気が治まらねえ……」

「しかし」

「オレの言うことが聞けないのか。なら、ムショより良い所に連れてってやろうか?」

 朝倉は苛立って、素直に言うことを聞かない史孝らにトカレフを突きつける。

「捕まっても、後のことはオレが何とかしてやる。だから早くしねえか!」

「は、はい!」

 観念したのか、もうやけくそとばかりに、組事務所内にある屋内駐車場に向かう史孝。昂次郎も同じだった。賢は、ちきしょう、を小声で繰り返す。それに朝倉が続く。

「東条、オレを隣に乗せろ。ヤツらはオレ自身の手で始末する」

「わかりました……」

 四人がそれぞれの車に乗り込み、他の子分が屋内駐車場のシャッターを開ければ。エンジンを掛けられた三台のマシンが大声上げて一斉に飛び出した。 



「Hurry up!」

 と、零を急かすグレンダ。パトカーの集団、十台くらいいるだろうか、がこっちに向かってサイレンを響かせ猛スピードで向かってきているのが見えた。怒りを表すように、これ以上出ないとばかりに音を最大量にしてる。おかげで到来に気付くのが早かった。

「うほ、来てるぜ来てるぜ!」

 それを見て、急いでプリメーラに乗り込みイグニッションをスタートさせる裕二。

 同様に零もグレンダもスカイラインに乗り込む。

 すると、事務所玄関横の屋内駐車場のシャッターが開いた。GTOと34スカイラインとスープラが、こっちにむかって飛び出してきた。

「あいつら、おまわりが来てるってのに追いかけるのか!」

 零が苦々しく言った。おまわりなんか怖くない、という状態になっているのは、どうやら自分たちだけではないらしい。

 さんざん向こうを挑発した結果。そうなってしまったようだ。

「ストリートレーサーとヤクザとおまわりの、バトルロワイヤル、ってか!!」

 アクセルを踏みつけながら裕二が叫ぶ。

 そう。今まさに、バトルロワイヤルが催されようとしているのだ。

 その先頭を切って、プリメーラが飛び出し。スカイラインが続く。それを追うGTOと34スカイラインとスープラと、十台のパトカーと。

「いたぞ! 森野の言ったとおりだ!」

 先頭のパトカーをドライブする警官が叫ぶ。森野とは、裕二が人質に取った婦人警官のことだ。

 裕二に降ろされてから署に連絡した彼女は、彼らは降ろされた場所から察するに朝倉組事務所に行ったんだろうと、対応した警官に言った。まさにその通りだった、が一足遅かったようだ。

「追いかけろ! なんとしても逮捕するんだ!!」

 助手席の警官も声を張り上げる。当たり前だ、警官に銃を突きつけた上に、人質も取った。

 とんでもない重大犯罪者だ。そんなヤツを許しておけるわけもない。なんとしても逮捕して思い知らせないといけない。

 ついでに、そいつらを使った朝倉組も一網打尽だ。

「事務所から三台出てきた。こいつらも一緒に逃げる気だ!」

「見ろ! 赤いのには朝倉が乗ってるぞ!!」

 GTOに朝倉が乗ってるのを見止めた警官は、さらに猛然として追撃を開始した。

「朝倉さん、ホントに何とかしてくれるんでしょうね?」

 バックミラーを見た史孝が、GTOをドライブしながら朝倉に言った。

「ああ、何とかしてやる。どうした、不満なのか!?」

「いえ、ならいいんですけどね。それじゃあ、行きますよ!」

 ままよ、と。GTOのアクセルを踏み込む。3リッターツインターボ6G72が唸りを上げる。

 四輪駆動のGTOは。後ろから押され前からも引っ張られ、背中をどつくような加速を続ける。そのグラマラスなワイドボディとあいまって、まさにモンスターマシンとして、GTOは地を這う大魔神のようだった。

「うお、く…」

 朝倉は思わずうめいた。その加速力から来る圧力は、乗るものの体をシートに押し付ける。

 後ろの34スカイラインとスープラが、あっという間に置いてかれてしまいそうだった。 

 だが、史孝は平然としている。それどころか獲物を狙い済ました狩人のような冷たい目をしていた。

 伊達にGTOをドライブしているわけではなかった、ということだった。

 逃げるプリメーラとスカイラインとともに、一般車をかわしながら走るGTO。史孝は不気味につぶやいた。

「待ってろよ。ふふふ……」


 

 バトルロワイアルは始まった。

 田舎の地方都市のメインストリートを駆け抜けるマシンたち。

 信号無視もなんのその。一般車を追い越し追い抜き、すべてそこのけの勢いで、怒涛のごとく。

 街の人々は突如始まった『怪物たちの追いかけっこ』を、怯えながら見送るしかなかった。

 一日が終わろうとする、憩いのひと時の時間を引き裂く咆哮。パトカーのサイレン。

 その真っ只中に巻き込まれた運の悪い車が、完全に血が頭に上ってのぼせ、正気を失ってしまったパトカーと激突してしまった。

 法の番人でさえ、一瞬にして犯罪者となってしまった。そんな出鱈目なバトル。

「くそ! これじゃまともに走れねえ!!」

 裕二が叫ぶ。

 街中は帰宅の車で溢れ、抜いても抜いても次々と、わらわらと現れる一般車。とてもじゃないが、アクセルが踏めなくて邪魔でしょうがない。後ろから追われてるってのに。

 まるで、出来の悪い3Dシューティングゲームをしているみたいだ。 

 どうする? この状況で後ろをブッちぎれるか?

 そう思った時。ひょいと、不安が顔をのちらつかせてくれた。それが胸のあたりを妙にまさぐり始める。

 それがまた手を伸ばし、胸の内側をつまんでくる。

 そうだ、ここで今停まろうか。この街の真っ只中、朝倉らに追われているとはいえ、その後ろには十台ほどのパトカーの群れがいる。

 だから、朝倉らも一緒に捕まるし。

 進んで今までのことをゲロすれば、つまり情報提供をし捜査に協力すれば、警察もそう悪くはしないだろう。

 今まで散々悪いことをしたが、人は殺していない。数年で出てこられるだろう。

 と、甘い誘惑が蜜のように、ねっとりとからみつこうとする。

 もうどうでもいいんだよな。何がどうなろうと知ったこちゃねえんだ。

 だから、なにも無理して逃げ回ることも無いんだ。朝倉にイッパツかませたことだし。

 なによりム所に入れば、メシに困ることも無い。入らなければメシに困ることもあるだろうが。ム所ならそんなこともない。

 そんなことを思いながら、アクセルを踏む右足は内側から揺さぶられるように痙攣するように震えていた。



 スカイラインもプリメーラに続いて街中を突っ走る。零は目を血走らせ、ハンドルを握りアクセルを踏む。

 ハンドルを曲げたりシフトチェンジをしたりのたびに、余計に力がこもる。そりゃそうだ、隣にグレンダがいるんだ。

 今彼女は心配そうに後ろと零をきょろきょろと見回している。

 その心配そうな潤んだ彼女の瞳。振り向くたびにゆれるバスト。

 昂ぶりを覚えずにはいられない。

 零は今、怪物に囚われていたお姫様を助け出した、騎士のような気分だった。

「大丈夫だ。逃げ切ってみせる」

 グレンダを安心させようと声をかける。その声に応えるように、零の方を振り向く彼女。

「大丈夫。オーケー、オーケー」

 少し横を向いて精悍な顔をつくり、頷く。

 オレに任せろ、と。

 グレンダは瞳を潤ませたまま、頷いた。

 それを見、バックミラーを覗けば。GTOのヘッドライトの光がミラーに入り込んでくる。

 その光はミラーを占領せんとするばかりに、大きかった。かなりスカイラインに近付いているようだ。

 忌々しく、零は舌打ちした。

 プリメーラとともに邪魔な一般車をかわしながら逃げ、後ろも同じようにかわしながら追ってきて。

 さあ、どうやってブッちぎるか。を考えいた。

 その後ろのGTO、史孝はにやにやとにやけながら前を追っていた。その隣には、顔を真っ赤にした、能面から般若の顔になった朝倉。

「追え、逃がすな!」

 と、わめきちらす。それをBGMに、ハンドルを握る史孝は。

「任せてくださいよ」

 と、スカイラインのテールを睨みながら、口元をゆがませる。

 そのまた後ろの34スカイラインの昂次郎とスープラの賢は。バックミラーに映る赤い光を受けてか、半狂乱敵にアクセルを踏む。

「ちきしょうー!! もうどうにでもなりやがれ!」

 昂次郎はGTOになんとか追いつきながら我知らず叫んでいた。

「くそくそくそ、くそくそくそくそ!!」

 同じように賢も叫んでいた。今の彼の脳は、馬鹿の一つ覚えのように「くそ」を連発するしか出来なかった。

 ふたりとも、史孝の下につき、朝倉の子分に正式採用されて。これからたんまり美味しい思いが出来ると思っていたのに。まんまと裏切られた気分だった。

 それがいやで、例え今逃げたとしても、別の支部の子分どもに裏切り者として付狙われるだろうし。そうでなくとも警察に追われつづけ。そうでなくとも、行く当てもない。だから逃げることも出来ず、こうしてGTOに着いて行かなければいけない事態に。どうしようもない気分だった。

 まさに地獄のどん底に突き落とされそうな気分だった。

 警官たちはその後ろで。追え、逮捕しろ、そればかりを繰り返す。

 それを率いるように、プリメーラとスカイラインが先頭を走っている。そのプリメーラが、突然、おかしな動きをし始めた。



 クレイジーな車の集団が、スタンピート=暴れ牛の群れのように、街の中を突っ切り。メインストリートは大混乱に陥っていた。

 道路わきの歩道には野次馬がたかり、野次馬たちはそれを呆然と眺めるしか出来なかった。

 車道の車たちは慌てて隅っこに逃げ込み、スタンピートが通り過ぎるのを身をかがめてやり過ごす。

 その中には、運転席から、助手席で怯え泣く子供をかばい抱きしめる母親の姿も見受けられた。

 動体視力が優れているのは、良い事だが。それはいつもではなかった。

 不意に裕二の目にそれが見えてしまった。思わず歯軋りし、歯がかちっと鳴った。

「アホンダラが…」

 我知らずつぶやく。自分たちのしていることは、そういうことなのだ。今更ながらそう思った。

 右足の力が、するりと抜け落ちる。

 スピードメーターの針が、反時計回りに回る。

「うお!」

 後ろの零は、突然スピードを緩めたプリメーラにオカマを掘りそうになり。慌ててかわす。

「どうしたんだアイツは!」

 慌てて後ろに振り返る。プリメーラはスカイラインの後ろになった。そのプリメーラは抜かれる直前、再びスピードを高めてスカイラインについていた。

「いきなりアクセルを抜くなんて、何考えてるんだ」

 ミラーにプリメーラのヘッドライトの光があるのを確認し。零は、わけがわからんとつぶやいた。

 今度はプリメーラのテールが目の前に来た史孝は、朝倉に目配せして笑った。

「どうやら、武藤のヤツかなりキレちまっているようだな」

 おかしな動きをしたプリメーラの様子を見て取ったふたりは、裕二が限界に近いことを悟った。

「このまま追いかけりゃ、勝手に自滅するかもしれませんよ」

 期待満々に、史孝は言った。

「見てください。プリメーラのテール、ぶるぶる震えているようだ」

 右に左に一般車をかわすプリメーラ。その動きは、まったくキレがない。何度も何度も危うくオカマを掘りそうになる。一般車との距離もつかみづらいのか、抜く前に躊躇しているようにも見える。

「そのようだな」

 と、薄ら笑みを浮かべる。後ろのパトカーの存在など、もう忘れてしまっているようだ。

 今はただ、阿呆三人を追い、始末することしか頭に無かった。警官に捕まり、阿呆三人を殺した罪が上乗せされようとも構わなかった。とにかく阿呆三人を殺せれば、それでよかった。

 子供をかばう母親の姿が脳裏に焼きついて離れない、そのせいか、裕二の体の動きはぎこちなくなる一方だった。

 ちなみに、その母親はショートカットの似合うきれいな女性だった。あの婦警も、ショートカットの似合うきれいな女性だった。

「結構好みだったのにな……」

 なんとかスカイラインにつけながら、ぼそっとつぶやいた。



「普通に暮らしてりゃ、今頃は、好みの女みつけて。その女と家族をつくっても、いい年頃なんだよな。オレって」

 こんな時にいきなりなんだ、と思わないでもない。でも、そう思ってしまう。

 車に狂っちまったばっかりに、こんなことになっちまって。本当に馬鹿丸出しだ。朝倉に阿呆呼ばわりされても仕方が無い。

 その時、目の前にはカローラのテール。はっとして慌ててかわす。カローラはなす術も無くスタンピートの中に飲み込まれ、吐き出される。

 他の車たちも同じように飲み込み吐き出ししながら、その雪崩の中の一つになりながら。

 裕二は焦っていた。

「くそ、どうしちまったんだ。うじうじ考えてる場合かよ。どうするんだよ」

 どうするんだよ。それは、走るか、それとも止まるか。ということだった。

「どうする、どうする」

 さっきアクセルを抜いた、と思ったら。また踏みつけたりして。自分でもわけがわからない。

「オレは何をしているんだ。何を……」

 朝倉は言った。お前はストリートレーサーだろう、それがトカレフなんか持ってどうする、と。結局、トカレフはプリメーラのように使いこなせなかった。

 プリメーラに搭載されたパルサーGTiRのSR20ターボエンジンの声がなんだか頼りなかった。今の自分の気持ちを反映しているようだった。

 いや、そんなもんじゃないだろう。お前の力は。

 心の中でプリメーラにそっと語りかける自分。そんな自分がなんだかしぶとく胸の中でねばっているのも、また事実だった。

 揺れ動く心にだっこされたように、裕二は焦り。なんとか、プリメーラを走らせていた。そんな状態だった。

「武藤、トロいことしてたら置いていくぞ」

 ミラーを覗きながら零は苛立たしそうにつぶやいた。組事務所に乗り込む前、散々エラそうにしてたくせに、それが今はどうだ?

 なんとかスカイラインについていくのが精一杯のようだ。

 それでも後ろのGTOや34スカイライン、スープラ。はたまたパトカーどもから逃げられているのが不思議なくらいだった。どうやら、逃げたいと言う意思はあると思ってもよさそうだ。

 いや、いざとなったら……。

 可哀想だが、仕方が無い。自分だって、自分が可愛いし。なにより、せっかくグレンダと一緒になれたのだ。どうせ、普通の生活ってやつを捨てたんだ、元に戻れないくらいに。

 こうなりゃとことん、グレンダとふたりで逃げてやる。ああ、地の果てってところまで、とことんとな。

 そう思い、ちょっとグレンダの方を見た。グレンダは逃げ切れるかどうか心配そうに、焦点の定まらない瞳を潤ませ後ろのスタンピートを見ていた。自分の後ろにスタンピート、あまりいい気分ではなかった。

 自分が信頼できないのか、あの時のオレのドライビングを見ただろう。

「グレンダ、オレを信用してくれ。必ず逃げ切ってみせる。逃げ切って、自由をつかんでみせる」

 と、零はグレンダに言った。しかし、グレンダは反応が無い。

「逃げ切れば、自由になれるんだ。カネもある、ちょっとじゃない、いっぱいだ。軽く……」

 零がなんとかグレンダから言葉を、自分に全てを任せるという言葉を引き出そうと、ドライビングよりも必死になっていれば。

 突然、潤んだ瞳が光を取り戻した、と思ったら。

「シャラップ!」

 と言う、グレンダの声。

 零は突然のその声に驚いたようだ。その後、グレンダは零を見て。

「ソーリー、レイ」

 と、言った。その後にまたグレンダが出した言葉は、また零を驚かせた。

「私。自首するわ」



「なんだって、自首する!?」

 どうして、と零はグレンダに詰め寄った。

「何を考えているんだ。自首したら、ム所行きだぞ。それだけじゃない、強制送還だ。アメリカに帰されるんだ。そこでまた、ム所に何年もいなきゃいけないんだぞ。それでもいのか」

「いいのよ、それで」

 零の言葉が終わらぬうちに、グレンダはあっさりと応えた。

「レイ、自由ってなに?」

 えっ、と。零は言葉を詰まらせた。その間にも、グレンダは続けた。

「ヤクザからも、ポリスからも、逃げ回って。それで私たち、どこに行くの? どこに行けば、私たち、ヤクザやポリスから逃げなくて済むようになるの。レイはそれがどこかわかっているの?」

 もちろん、わかるわけもない。グレンダはさらに続けた。その間も、零はグレンダの言葉を聞き逃すまいとしながらも、限界走行で他車をかわし後ろから逃げている。

 確かに、ウデはいいのだろうが。

「レイ、そのドライビングテクニックでどこまで行けるの? そのライスロケットは、どこまで行けるの? ヤクザやポリスから逃げ回りながら……。それが自由と言えるの?」

 零は答えられなかった。もちろん、心の中では「NO」と言っていた。

 それより、どうして彼女がいきなりそんなことを思いついたのか、それが気になって仕方が無かった。が、それはおのずとグレンダから出た。

「自首して、何年も刑務所に入ることになっても、なにも死ぬまでいなきゃいけないことはしていないのよ。なら、自首して刑期が過ぎるのを待てばいいのよ。刑期を終えればヤクザからもポリスからも逃げなくてもいい、本当の自由が、手に入るのよ。闇に紛れなくてもいい、太陽の下を堂々と歩けるのよ。わかる?」

 ああ、と零は小声で応えた。確かにその通りだった。

 この混乱の最中、グレンダはそんなことを考えていたのだ。欲に駆られた、騎士気取りの自分とは大違いだ、零は自分が恥ずかしくなった。

 そんな零を横目に、グレンダは語った。

「シンゾウと初めて会ったのは、三年前。ワシントンの裏路地でコールガールをしているときだったわ。お金が無くて、仕方なくしてたんだけど…。私、何のとりえも無いから、どの仕事も長続きしなくて…」

 コールガール云々のところで、グレンダは恥ずかしそうに頬を紅らめた。コールガールと言えば聞こえはいいが、ようは売春だ。それについて彼女は今も、罪悪感を感じているようだった。

「そこへ、女漁りに来たシンゾウと会ったのよ。きっと、ギャングやマフィアとの取引にアメリカに来てたんでしょうね。そこでシンゾウは私を気に入ってくれて、お金を弾んでくれた上に、帰国後に私を日本に呼んでくれたわ……」

 グレンダは一息ついて、しばし押し黙ったが。再び語り始めた。

「シンゾウの愛人になって、それでお金が一杯もらえて、派手な暮らしが出来て。その時は楽しかった。まるでそれは、プリティーウーマンのよう。でも、用済みになれば捨てられる。そうね、シンゾウはヤクザだものね。リチャード・ギアじゃないのよね」

 自嘲気味に言うグレンダ。また瞳は潤んでいた。

「よくよく考えれば、自由だなんてなかった。いつも子分に見張られていた。昼も夜もめったに外に出られず、シンゾウから呼ばれなければ外に出られなかった。それでも、子分の運転する車の中。まるでバードケージの中にいるようだったわ。それがわからなかった私も、馬鹿だったわね」

「グレンダ……」

 零はなんとか言葉をかけようと思ったが、グレンダの名を出すのが精一杯だった。気が付けば、瞳を潤ませていた涙が溢れ、頬を伝っていた。ジュリア・ロバーツになり損ねた自分がいたたまれなさそうだった。

 そんなグレンダを欲望と言う色眼鏡を通してでしか見ようとしなかった自分に、零は情けない気持ちだった。

「レイ、あなたとはお別れになるけど。あなたの事、忘れない。あなたは、私のヒーローだったわ」

 それから。FJ20のがなり声の響くスカイラインの車内は、まるでしーんと静まりかえってしまったようだった。ふたりとも、何も言わなかった。それよりもなによりも、もう朝倉らから逃げ切れたみたいな雰囲気だった、が。もちろんそうではない。

 零は、グレンダの言葉に、熱い矢を心臓にまともに食らったような気分だった。

 ハンドルを握る手に、力がこもる。

「そうか……」

 歯軋りしながら、なんとか言葉を出した。

「レイ…」

 グレンダは、零を見つめていた。イカすライスロケットをドライブする、ストリートレーサー。グレンダのヒーロー。その横顔は、精悍で逞しかった。

 そのヒーローは、突然おかしな行動を取りだした。



 おもむろに、零は携帯電話をポケットから取り出し。どこかへとかけているようだった。

「レイ、なにしてるの?」

 この状況の中、零の行動に驚いたように涙を流しながら眼を丸くするグレンダ。

 だが、零は何も言わない。グレンダは零の行動が理解できず、呆然としていた。

 携帯電話を耳に当て、相手が出るのを苛立たしげに待つ。その間も、限界走行だ。よくそんなことが出来るものだと、グレンダは思わずにはいられなかった。

「早く出ろ、早く……」

 我知らず出るつぶやき、それが通じたか。相手が出た。

「柳生、こんなときに電話かけてくんな!」

 相手は、裕二だった。と、いうことは。裕二も同じように、携帯電話片手に限界走行をしているということだ。なんともかんとも、とんでもないテクニックの持ち主だと。グレンダは驚いていた。

「そういうお前こそ、電話出たじゃないか!」

「うるせえ、ベルなってついとっちまったよ!」

 お互い通話相手に怒鳴りながら、それぞれの車を走らせる。やはり、運転に集中しきれないのか多少のふらつきは否めなかった。

 それは後ろの史孝と朝倉にも見て取れた。

「あいつら、何してんだ?」

 不思議そうにつぶやく朝倉と史孝。史孝は目をこらしてよく見れば。

「あいつら、ケータイでなにやら話し合ってるようです」

 窓越しに見える裕二の右手。それはかすかではあるが、携帯電話を手にしているように見えた。

「なんだと?」

 朝倉も驚き、目をこらせば。史孝同様、裕二が携帯電話でなにやら話しているようにも見える。

 右手に携帯電話。左手でシフトチェンジ。シフトチェンジの間、ハンドルは危ないフリー状態になる。それでも自分たちから逃げている。

「なめた真似してくれるじゃねえか」

 朝倉のみならず、史孝の顔も真っ赤に染まった。この、追撃の最中、まさかよりにもよって追いかけてるヤツらが電話で話し合うなどと。なんとも余裕なことではないか。

 まさかまさか、いやまさか。ここまで自分たちはなめられているのかと。頭の血管がブチ切れそうだった。

 一番驚いたのは、当の裕二だ。まさか朝倉らから逃げている最中に零から電話がかかってくるなど夢にも思わなかったのだから。

「ええい、今はそれどころじゃない。切るぞ!」

 と、電話を切ろうとしたが。

「待て、話を聞け! 今からレースだ。いいな、レースだぞ! オレとお前、あとはおまけだが。レースをするぞ! いいな!」

 一方的な零の言葉。裕二はわけがわからなかった。

「何考えてるんだ! こんな時にレース!? 馬鹿か!」

「ああ馬鹿だ、大馬鹿だ。だがな……、武藤裕二!!」

「ん、な!」

 突然、零は裕二の名をフルネームで呼んだ。裕二はさすがにこれには驚いたようだ。

 思いっきり、言いたいことがあるということを強調しているのが嫌でもわかった。

 それでも零はまだまだと畳み掛ける、つばを飛ばしながら携帯電話に怒鳴り散らす。

「オレらストリートレーサーだろう。それが車に乗ってやることといえば、ただ一つ。レースだ! ストリートレーサーが車に乗って、レースをしないでどうするんだ。トカレフなんか持って、どうしようってんだ。それがわからねぇお前は、武藤裕二は、もっと大馬鹿野郎だ!!」

「女に骨抜きにされたおめぇに言われたくねえよ!」

「ああ、そうか。お前はそんなオレにも勝てないんだな。あん時、お前負けたもんな。悔しいか、おい、悔しいか。悔しかったら、リベンジかましてみやがれ!」

 あん時、二年前の、零がグレンダを乗せてレースをした時のことだ。一瞬にして全ての記憶が蘇えり、フラッシュバックする。

「っんだとぉ……!」

 携帯電話を握りつぶさんばかりに、右手に力がこもる。怒りが、熱湯のようにふつふつと沸いてくる。零は電話越しにそれを察したか、裕二の怒りを沸点に到達させるべく。とどめの一撃とばかりに。

「オレら、ストリートレーサーだろ! そうだよな!!」

 と、怒鳴った。腹の底から声を出し、怒鳴った。零も、携帯電話を握りつぶしそうなほど、右手に力がこもっていた。

「ああ、そうだ。オレらストリートレーサーだ!!」

 裕二もお返しとばかりに、怒鳴り返した。そこで電話を切った。携帯電話を握ったまま、ぶるぶると怒りに震えながら、言った。

「よぉーっし…。よぉーっく、わかった……。いいだろう、朝倉もお前もおまわりもふくめて、ブッちぎってやるわ!!」

 言い終えたそのその瞬間、携帯電話がついに握りつぶされた、それが破片を撒き散らしながら太ももに落ちる。それを助手席に払いのける。

 そうだ、そうだ。確かにそうだ。零の言うとおりだ。悔しいが、これだけは、朝倉の言う通りでもあった。ストリートレーサーがトカレフなんか持って何をしようというんだ。車に乗ってレースしなければ、ストリートレーサーじゃない。

 そうやって、生きてきたのではなかったか。そうやって、突っ走ってきたのではないか。決して陽の当たることのない、アンダーグラウンドの世界こそが、自分の居場所だった。

 今更、娑婆が恋しいなど、都合がよすぎるってもんだ。

 迷いは吹っ切れた。不安と格闘していた、もう一人の自分が、零との電話のおかげで勝ったのだ。それが、まさに己自身なのだということを裕二は感じていた。



 通話を終えた零は、携帯電話をうしろに放り投げた。

「聞いてたか?」

「い、イエス……」

 グレンダは、零が電話している間ただ呆然としていた。そして何を話していたかも、理解していた。

 レース? こんな時にレース? 一体何を考えているんだろう、と。思った。

 それに答えるように、零は、精悍で逞しい、かつてハンサムと言われた自分の顔に笑顔を浮かべて、言った。

「自首するにしても、どうせアイツらから逃げ切らないと出来ないだろ。そのついでに見せてやるよ、日本での最後の思い出に、とびきりのストリートレースをな」

 それを聞いて、グレンダは全てを察した。そうなのだ、零は自分のためにレースをしてくれるのだ。正直、何を考えているんだ、と思った。そう思いながら零の横顔を見た、その横顔は、あの時のストリートレーサーの横顔だった。

 スカイラインのFJ20ターボエンジンの唸りが徐々に大きくなってくる。胸が高鳴る、心が昂ぶる。

 こんな時にと思いつつも。そんな自分が、グレンダは好きだった。ワシントンにいるころ、夜な夜なストリートレースを見に行った、ただの車が好きな少女のころに戻ったようだった。

 心の中にまでも、スタンピートが縦横無尽に駆け回っているようで、湧き上がる興奮を抑えきれない。今の自分の気持ちを絵に表せば、それこそ荒野を駆け巡るスタンピートの暴走そのものだった。それはどこまでもどこまでも、心の奥底へと突っ走っていた。

 ヒーローは、ここ一番というときに、一番かっこいいところを見せてくれる。零もまた例外ではなかった。それはその笑顔が雄弁に物語っていた。

「行くぜグレンダ!」

「OK Let's go!!」

 スカイラインは激しくアフターファイアの火を噴いた。その火は、裕二のハートにも飛び火した。

「待ちやがれ! アタマを走るのはオレなんだよ!!」

 プリメーラに搭載されたパルサーGTiRのSR20ターボエンジンは、激しく唸りを上げる。頼りない声から、獲物を追う野獣のような咆哮になった。裕二がそうさせた。

「うぉ!」

 史孝は我知らず声を上げた。

 ひょろひょろと弱弱しかったプリメーラに、突如として精気がみなぎったのを感じ取ったからだ。それどころか、スカイラインを追いかけ始めているようにも見える。

 そのスカイラインは、プリメーラをブッちぎろうとしているようだ。

「どうした!」

「わかりません。だが、あいつら…」

 史孝は自分の目が信じられず、今一度目をこらし前の二台を見た。やはり、プリメーラはスカイラインの前に出ようとしているようだ。

 ラインを右に左に、己が通る隙間をうかがっているようだ。

「あいつら…、バトルしているような……」

「なんだと?」

 朝倉も同じように見た。確かに、そのようだった。

 スカイラインは、プリメーラが並ぼうとするものなら、すかさず進路を塞ぐ。

 様子がおかしくなったのは、後ろのスープラと34スカイラインにも感じられた。それはそのまた後ろのパトカーの群れにも感じられた。

「ど、そうしたんだ。武藤のヤツ、柳生を抜こうとしているのか…?」

「柳生のヤツ、プリメーラの前を塞いでいる? 追いかけられてる最中に、なんでそんなことを……」

 昂次郎にも、賢にも。訳がわからなかった。

「行け、逃がすな!!」

 パトカーのドライバーは、様子がおかしくなったのを認めつつも、とにかく前の連中を捕まえることしか考えてなかった。

 そんなのお構い無しに、裕二と零は突っ走る。突っ走ってなんぼ、のストリートレーサーだから。



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