<第98話> 大物政治家 ①
「『話を全て真実として』・・・ですか?」
青野の話を聞いた研究員達の顔つきは、みるみる怪訝そうな表情に変わっていった。
「どうした?
そんな曇った表情になるような事を、私は何か言ったのかな?」
青野は、研究員達の豹変ぶりに、少しだけ驚きを隠せず、そのまま素直に聞き返した。
「せっかくの刑事部長のご意見ですが、やはりその考察には無理がありませんか?
古閑村長は、村長という役職にまで上り詰めている大物政治家なんですよ。
つまり自分の保身の為ならばどんな嘘も厭わない、いや嘘とも思わず発言するような人物だとは思わないのですか?」
研究員達は、真顔で答えていた。
「一体どうしたんだい。
先程、そのような裏のあるような事実は村長から出て来ていないと私に教えてくれたばかりじゃないか?」
「確かに。
古閑村長は、現時点ではまだ何もボロを出してはいません。
ですが、それもやはり時間の問題だと思います。
今日の事情聴取で、彼はきっとボロを出すと思います。」
「ふむ、そうか。」
青野は、研究員達の真剣な顔つきを見て、これが彼らの答えだと受け取った。
そしてついに、そこに深い問題点がある事を発見した。
「うん、よく分かった。
今の話は、非常に実感がこもった話し方だった。
どうやら君達は、過去に政治家絡みで、苦い経験を積んだようだね。」
青野は、研究員達に優しく聞いた。
「いいえ、我々が直接経験をした訳ではありません。
でも実際にあった話を、我々は彼から直接聞いているんです。
これから青野刑事部長と同行する刑事は、以前政治家の調査を進めていた事があるんです。
もっとも当時はまだ新米で、パートナーの刑事補殿の足手まといになっていたそうです。
その事件では、あともう少しで立件出来る所まで捜査の手が伸びた途端に、政治家本人は、我々の過度な捜査による影響だと心労を原因に突然入院をしました。
もちろん政治家は、その病院の病院長とグルになり診断書も添えて提出してきました。
更に今後も捜査を継続するならば、むろん捜査自体は議員特権を最大限に利用して拒否し続けながら、なおかつ我々の捜査を不当な越権行為として訴えると脅してまできたそうです。
刑事達の捜査は、あと一歩という所まで追い詰めていながら結局打ち切りとなりました。
刑事殿は、まだ下っ端の新米だったので始末書で済んだそうですが、刑事補殿はその責任を負って、捜査一課から異動になったそうです。
それなのに当時県議会議員だったその人物は、現在では国会議員になっていて、今も現役で政治家をのうのうと続けているんですよ。
その話を刑事殿から聞いた時、我々は本当に酷い話だと思ったんです。」




