<第85話> 迷走する捜査 ①
村長からの通報を受けて、古閑家では、多数の警察官・検視官による現場の検視作業が進められていた。
その作業は翌朝になってもまだ続いていたため、現場は緊張と疲労の連続でいつの間にか殺伐とした雰囲気となっていた。
そんな時、麗子の遺体が検死をおこなう為に運びだされようとしていた。
麗子の身体は膝が折れ曲がり、背中も丸くなっている。
現場に到着した刑事は、その姿勢で横たわる麗子の姿に違和感を覚え、まず村長に『この現場は、あなたが発見した当時のままの状況ですか?』と確認をしていた。
「いいえ、発見当時のままではありません。」
村長は答え、刑事に説明を始めた。
村長が帰宅した時、自宅の電気は全く付いていなかった。
そしていつも玄関まで出迎えてくれる麗子の優しい声も姿も無かった。
(二人で遊び疲れて珍しく先に寝たのかな?
でも家の中が何処の電気も付いていないのは、どうした事なんだろう?)
2人が先に寝てしまった事が全くなかった訳では無い。
でも家の中の電気が付いていない我が家に村長が帰宅したのは、初めての事だった。
村長は、家の電気を付けながら寝室へと向かった。
村長は、麗子の寝顔に、彼女が起きないように心の中でだけ声を掛けようと部屋の扉を静かに開けた。
(ただいま。)
ところが夫婦の寝室に、麗子の姿は無かった。
(あれ?寝ていない・・・。
じゃあ麗子は今何処に?)
もしや子供部屋で一緒に寝落ちてしまったのかと曜子の部屋にも行ってみたのだが、やはり部屋はもぬけの殻だった。
真っ暗な家の中の一体何処に2人は今いるのだというのか。
妙な胸騒ぎを覚えた村長は、足早に家の中を歩いて探し回った。
そしてついに客間の障子を開けた時、廊下から差し込む明かりの先に二人の変わり果てた姿を見つけたのだった。
入り口近くで麗子と娘の曜子の二人は、折り重なるようにうずくまっていた。
明らかに麗子の背中は切られていた。そしてその血は二人の下の床にまで広がっていた。
二人を見つけた村長は、慌ててかけよった。
そして二人の生死を確かめようと抱き起こしていた。




