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<第82話> もうどうでもいい・・・

「まずここで、事件のもう一つの凶器について話をさせて下さい。」



「止めなさい!


 今度は、妻が殺された時の話でも始めるつもりなのか。



 事件の後遺症を持つ娘も一緒に話を聞いているんだよ。」


 村長は、青野が話し始めるのを遮ろうとした。



「村長さん、大丈夫です。


 今からお話しするのは、殺害された時の話ではありません。


 あくまでもナイフについての話です。




 凶器のナイフは、現場で黒部が握りしめたまま亡くなっていました。


 そして事件現場でそのナイフは、彼(・)の(・)手(・)元(・)か(・)ら(・)外(・)す(・)事(・)は(・)出(・)来(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)んです。



 それは死後硬直が起きていたからです。



 そうです。


 死後硬直が起きていると、亡くなった時や失神した時に強く握りしめていた物は、たとえその持っていた人物の意識が無くても、落とす事などなく、むしろ逆に強く握りしめられてしまうんですよ。



 さらに黒部と麗子さん、二人の死亡推定時刻は、解剖の結果ほぼ同時刻でした。


 だから麗子さんにだけ、死後硬直が取れ始めてしまう『弛緩(しかん)』という事象が始まっていたはずがないんです。


 つまり麗子さんを動かした際に石が手元から落ちてしまったというのは、作り話という事になるんです。


 こんな事は、起きるはずがないんですよ。」




「・・・そうか。


 でも凶器は、他(・)の(・)黒(・)曜(・)石(・)だった・・・。



 君は、さっきはっきりとそう言ったよね。




 ・・・という事は、麗子の手元から石が落ちた話など、もうどうでもいい事じゃないか。」


 村長は、ボソッと答えた。

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