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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編
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<第8話> 父の反応

 卒業旅行先は、場所がまだはっきりとは分からないという問題は残っているが、訪れる県まで決定した。


 僕は、その結果を直ぐに父に報告したくなった。

 そして僕は、決まったその日に夜遅くまで、父の帰宅を待っていた。



 日付が変わる時刻頃まで起きていると、父が帰宅した。



 「お帰りなさい。


 良かった、今日は家に帰って来たんね。

 もう少し待って駄目だったら、諦めて寝ようと思っていた所だったんだよ。」


 僕は、父の帰宅を素直に喜んだ。




 「ああ、ただいま。


 どうしたんだ?


 夜遅い時刻なのに、眠そうと言うよりも、随分嬉しそうな顔をしながら出迎えてくれたな。


 何か良い事でもあったのか?」


 父は僕の顔を見て、そう話しかけてきた。



「正解!


 卒業旅行について、計画の目処がついたんだよ。」



「ほぉ。



 それじゃあ早速、リビングで話を聞こうか。


 着替えてくるから、先に行って待っていなさい。」


 父と僕は、玄関先から移動した。




 父がリビングにやって来ると、僕はPCから印刷していた目的地の島の写真を父に見せた。


 そして、この島に存在する『光輝夢村』という名前を大きく記した紙を隣に添えた。


 

 父は、『光輝夢村』という名前を見たとき、(おや!)という表情をしていた。

 しかし、この2枚を見せることに夢中になっていた僕は、その父の表情を見逃していた。



 僕は、旅行計画を父に話して聞かせた。

 

 僕の話の全てを聞き終えると、父は静かに話し始めた。


「ふむ・・・。


 そうか。

 卒業旅行は、この『光輝夢村』と記された、読み方すらもちゃんと分からない写真の島を探し出す旅行をしてみたい。



 現時点で分かっているのは、どうやらN県の島の中にある村だということだけ。

 だから取り敢えずN県に行って、旅行をしながら探し出すつもりだって?」


 父は、何故かとても複雑な表情を浮かべながら答えていた。



 父の微妙な反応を受けて、「面白そうな計画を立てたな」と直ぐに一緒に喜んでくれるとばかり思っていた僕は、当惑してしまっていた。



 その結果、少しの間だったが、珍しく僕たち親子に沈黙の時間が流れた。


 

 すると父は、自然に表情を和らげて我が子に優しく話し始めた。


 「昴、旅行期間はどの位にする予定なんだ?」



 父は、旅行の計画が先に進むように話をしてきてくれていた。



 そして僕は、その父の優しい表情にも後押しされながら、答えた。


「そうだなぁ・・・、ゼミの授業は卒論の提出前だからあまり休みたくないし・・・。



 取り敢えず1週間で村探しの手応えを掴んでこようかと思うんだけれど、どうかな?」



 本当は、見つかるまで何度も間を開けて探しに行く旅行にしたいと話そうかと思っていたのだが、父の微妙な反応を見て、ゼミと次のゼミの間に行くという予定に変更して、旅行期間を答えていた。






「そうか・・・。




 ところで、お前も当然知っているだろう。

 N県の島の総数は、千近くあるんだぞ。



 だからその中から読み方すら分からない村を発見できる可能性は、かなり低いとは思わないか?」


 次に父は、まるで最初からその村を発見出来ないかのような口ぶりで話をしてきた。



「そんな事は無いと思うよ、父さん。


 確かに島の総数はそれ位だけれど、その中でも有人島は百ない位なんだよ。

 村があるということは、当然人が住む島なんだから、そこでかなりターゲットを絞れるだろう。


 だから住所が分からないとは言っても、実際に検索で出て来た村の名前なんだから、N県まで行って話を聞いて回れば、地域住人の誰かが知っていて、結構あっさり見つかるんじゃないかなと僕は考えているんだけれどな。」


 僕は、きっと発見出来るから行かせて欲しいと言う為に、事前に調べておいた情報を基に父に答えていた。


 しかし、父は当然僕より2枚も3枚も上手(うわて)だった。

 そんな僕の薄い表層を軽く打ち破る返答をしてきた


「検索で出て来たから大丈夫だとお前は簡単に言うが、その村が今はもう無人になってしまっている、何十年も前に存在していた村の名前である可能性は考えていないのか?


 かなり昔の村の写真のデータが、たまたま残っていた可能性だってあるだろう。


 田舎の過疎は現在も日々進んでいるんだぞ。

 そんなすぐに情報が得られると予定して行動計画を立てるのはどうだろうな。」


 父は、すぐに反論の具体例を並べてきた。




(さすが父上。鋭く的確な指摘をしてくる。


 僕もその可能性は否定できないと思っていたんだけれど、改めて父の口からそう言われてしまうと、不思議ともうそれが真実だと聞こえてきてしまうじゃないか・・・。)




 僕は、今までの勢いを無くして、ションボリとしてしまっていた。




「すまない。


・・・旅行に行く前から不安にさせるような事ばかり言ってしまったな。




 これは、お前をちょっと過保護にし過ぎた扱いだったかもしれんな。」


 僕の落ち込んだ様子を見て、父が慰めてくれていた。




「まぁ、純粋にN県に旅行に行って、自分の出来る範囲で村探しをしてくる計画だと考えれば問題は何も無いじゃないか。



 すまなかったな。

 さっきの話は、自分の悪い性分(しょうぶん)が出てしまった答えだった。

 ついつい、絶対に村を見つけ出さなければいけない計画のように考えてしまっていたよ。


 だが、その考え方が間違っていた。


 もしも村を発見する事が出来なかったとしても、旅行をしながら探し回って、その地域を見て回った事が良い思い出になるもんだよな。



 だからたとえ見つからなかったという結果になったとしても、それはそれで良い卒業旅行になると考えればいいのか。




 そう考えれば、確かに面白そうな冒険計画じゃないか。」


 いまや父は、僕の計画を島を探し回る旅行で楽しそうだと話を進めてくれていた。



「そうだ、昴。



 もしも万が一にでも、村を発見出来たというような報告が出来るような旅行になったら、すぐにそれを私に報告してくれよ。」


 最後に父は、とても真面目な顔で付け加えて来た。




 僕は、父はきっと見つからないだろうと話していると言うのに、何故発見したら、今度はすぐに報告をしろというのだろう?となんだか矛盾しているような事を言うなあと思いながら話を聞いていた。

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