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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 3
73/129

<第73話> 父は恩人 ②

「そんな時だったよ。


 君のお父さんが私と刑事さんとの話を割って入ってきたんだ。



 県警の刑事さんは、お父さんの方を振り返るや私との話を止めて、敬礼をして一歩下がったよ。


 私は、その刑事さんの態度を見て、彼の上役の刑事さんが来たのだと判断したよ。


 だから私は、正直ここで新たな刑事まで話に加われば、もう絶対に娘を連れていかれる状況に追い込まれるのだろうと思って恐々としていたんだよ。



 だがね、その私の考えは間違いだったんだ。


 あの時君のお父さんは、私を助ける為にこちらに来てくれたんだよ。


 お父さんは、()()私に


 『東京の警視庁所属の青野と申します。


  まだ事件直後で混乱されている中、捜査のご協力本当にありがとうございます。



  私は、本来ならば管轄外の刑事ではありますが、特例として現場検証に立ち会わせてもらっています。


  古閑さんも、今から私が捜査に同行する事をご了承をいただけますでしょうか?』


 と、部外者の自分がこの現場に居ていいのかを、最初に私なんかに確認してくれたんだよ。



 私は、一般市民である自分が、警察内で決めた事を断ったりする権利があるのか分からなかった。


 でも、そんなことをわざわざ確認してくれている彼の優しさが嬉しかったんだよ。



 そして、私が『宜しくお願いします。』と了承すると、お父さんは私に笑顔で一礼をして、


 『それでは、今から()()話をするお時間を頂きます。』


 とお父さんが私と刑事さんの両方に言ったんだ。



 そう言われた時の県警の刑事さんは、苦虫を噛み潰したような表情をして横に立っていたよ。




 そしてお父さんは、優しい表情で私に話掛けて来てくれたよ。


 『古閑さん、大丈夫です。安心して下さい。


 保護者のお父様の許可が得られないのならば、未成年の娘さんから事情聴取は行いません。



  まず第一に大切にすべきは、()()()()()()()()調()です。




  それに、ご安心下さい。


  事件に遭遇した被害者の方から話を聞く場合、いつでもその方の事件の恐怖心を刺激してしまう事のないよう十分に配慮しながらお話をお伺いするのが大原則です。


 ですから、今回のような恐怖で記憶を無くしてしまわれた娘さんから無理に思い出してもらうような事は、決して行ったりはしませんので。』


 そうきっぱりと断言してくれたんだよ。



 あれは、私に話す体裁を取りながら、明らかに刑事さんに向けて話していたと私は思ったよ。


 だからこの話を聞いて、県警の刑事さんもすっかり困惑した表情になっていたよ。




 それからね、お父さんの話はもう少し続いたんだよ。


 『そもそもで、事件現場に生存者がいないような事件も多々あります。


 そんな時我々は、現場検証のみで事件を解決しようと必死に捜査を行っています。


 ですから、今回もまずは現場検証と古閑さんからの話の調書を基に捜査を進めて行く予定です。





 ただ、やはりそれだけではどうしても事件が解決出来ない事もあるかもしれません。


 もしそうした行き詰ってしまった場合には、捜査のご協力を娘さんに再度お願いする機会が発生してしまうかもしれません。


 でもやはりその時も、娘さんの健康状態や心理状態を最優先にして、お話を聞かせて頂くつもりです。


 大変申し訳無いのですが、一応この事もお心に留めておいて頂けますでしょうか?』


 こんな感じで君のお父さんは、今後の捜査方針について、詳しく私に説明をしてくれたんだよ。



 そしてこの話が終わった後に、彼は県警の刑事を連れて、部屋から退出していったんだ。


 でもその後、お父さんだけが、また私の所に戻って来たんだよ。



 (まだ何かあったのかな?)


 と私が不思議に思っていたら、君のお父さんは、


 『実は、私にも娘さんと年齢の近い息子が一人おります。


  古閑さんと家族構成が似ている事もあり、この事件とても他人事とは思えませんでした。


  今の胸中を心からお察しします。』


  こう私に言って、深々と一礼をしてから帰っていったんだよ。




  彼はわざわざ、この言葉を私に伝える為に戻ってきてくれたんだ。


  あの時のこの言葉は、本当に涙が出てしまいそうになる位嬉しかったんだよ。



  あんなひどい事件の直後に、呆然としていた所にそれでも無理をして捜査協力をしていたんだよ。


  そんな中、娘を追い込むような事を刑事さんに言われて、本当に心が壊れてしまいそうな程悲しい立場に追い込まれていたんだ。



  そんな時に、自分に助け船を出してくれた君のお父さん。

  

  そしてさらに、自分の気持ちが分かると優しい言葉を掛けて寄り添ってきてくれたんだからね。」

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