<第70話> 再び『光輝夢村』へ
青野は、再び光輝夢村を訪れた。
そして今回の訪問は、父に言われた通り出来るだけ目立たないように行動していた。
父は、「万が一にも事件に関する噂がまた起きる事が無いように」と青野に注意をしていたのだ。
だから青野は、前回の旅行で知り合った義夫達にも会いたいと思っていたのだが、敢えて会わない事にしていた。もしも会ってしまえば、話題の中で今回の旅行の目的が『また島へ行く事』だと知られてしまう可能性が大きかったからだ。
古閑家の前まで着くと、青野は一つ大きな深呼吸をしてから、玄関のインターホンを押した。
青野は突然の訪問の非礼を詫び、また話をしたい旨を伝えると、村長はすぐに玄関先まで出迎えてくれた。
「青野さん、こんにちは。
まだ『久しぶりだね』と挨拶するには早い位の訪問だね。
こんな若い男性がまた私と話がしたいからという理由でわざわざたずねて来るなんて、初めての経験だよ。
一体どうしたんだい?
まぁ、東京から遠路はるばるたずねて来てくれたのだから、何かあったという事なのかな?
取り敢えず上がってもらおうかな。」
村長は、青野の突然の訪問に少々疑問は抱いていたようだったが、親しくなった若者である青野を快く門の中に迎え入れてくれた。
青野と村長が玄関まで歩いている途中で、
「こんな風にまたたずねて来てくれるのならば、私の連絡先をきちんと伝えておけば良かったね。」
村長は笑顔を作りながら言った。
「すみませんでした。
お約束の連絡も出来ずに突然訪問する事を私もずっと気にしていたのですが、どうしてもお伝えしたい話があったものですから・・・。」
青野の今の返答は、村長の話を聞いて「突然の訪問」という自分の非礼が申し訳ない思いが、前面に出てしまっていた。
「いやいや、青野さん。
今のは決して君を責める為に言った訳じゃないんだよ。
本当に連絡先を伝えておけば良かったと思ったからそう言ったんだよ。
こんな事を言ってしまうのは、世知辛い世の中だと思うかもしれないが『また来てくれ。』、『はい、もちろんです。』は、社交辞令の挨拶になる事の方が多いからね。
連絡先を伝える事もなく君とそんな挨拶をしていたなんて、私もいつの間にかそんな対応を無意識の内にしていたんだなと、思ったんだよ。
だからむしろ、そんな私の非礼を私の方が詫びるべきだったと反省していたからこそ言ったんだよ。
君のような気持ちの良い青年が来てくれるのは大歓迎なんだよ。
だから本当に大丈夫だよ。」
村長は、優しく答えた。
「ありがとうございます。」
青野は、心からの礼を述べた。




