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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 3
65/129

<第65話> 青野、大いに驚く

「容疑者の周りの人達のその後の人生・・・。


 僕は、そんな事を今まで考えた事も無かったな。



 やっぱり父さんって凄いな。」


 青野は、父の話を聞いて自然にそう答えていた。



「そんな、凄い事は何も無いよ。


 単に経験値の差だよ。



 お前も刑事になって色々な事件を経験すれば、否応なしに考えさせられる事もあると私は思うぞ。」



「父さん、『否応なしに』なんて怖い言い方をしないでよ。


 その時が来るのが怖くなるじゃないか。」



「おおそうか、すまん。


 でも、昴なら大丈夫だよ。」


 不安そうな表情を浮かべて話していた青野とは対照的に、父は笑顔で頷きながら答えた。



「もう!何の根拠もない『昴なら大丈夫』だよね。


 父さん、また母さんから『親バカ』って言われちゃうよ。」


 これは、僕を励ますときの父の十八番(おはこ)のセリフだった。


 それを聞いた青野は、父の笑顔につられるように笑顔になって答えた。



「何を言っているんだ、昴。


 根拠なら、いつもちゃんとあるぞ。



 いいか、それはな・・・、


 今までずっとお前を見てきている父だからこそ、自信を持って言えるんだぞ。



 だから、大丈夫なんだ!」



「はい、はい。」


(思わず恥ずかしくなってしまうくらいの信頼度・・・これが親バカじゃなくて何だと言えるのか・・・)


 僕は、もう笑顔で受け流す事にした。



「昴、返事は一回。」


 父は、僕の言葉使いの悪さをすかさず訂正をしてきた。


「はい。」


 僕も直ぐに言い直した。




 (父さんとこうやってポンポンと会話をするのは、いつもとても楽しい。


  僕がふさぎ込んでいると、こうやって何気ない会話を繋いでくれて、いつの間にか僕の気持ちを楽にしてくれる、魔法の会話なんだよな。


  親子の会話って、誰でも同じようにこんな不思議な力があるものなのかなぁ?)




  そんな事を考えていた時、旅行中の古閑親子の事をふっと思い出した。



 「父さん、さっき事件の後に周囲の人々の生活が一変するって話したよね。」


 「ああ。」


 「それってさ、やっぱり被害者の周囲の人々の生活でも、同じ事が言えるよね。」


 「ああ、もちろんだよ。


  それは、もう一般的にも周知の事実だろう。」



 「そうだよね・・・。




  あのね、僕が光輝夢島に行った時、事件の起きた村長宅にも行って、村長さんやその娘さんに会って話をしたんだ。」


 「うん⁉


  昴は、島に行った時に実際に村長親子に会って来ているのか!」


  父は、珍しい位にとても驚いていた。



 「そうだよ。


  事件の事は何も知らなかったけれど、旅行中に偶然事件の話も聞いて、そして二人とも会えたんだ。」



 「そりゃあ、昴が事件を知らないのは当然だよ。


  お前の耳には入らないように、当時母さんが随分苦労していたんだぞ。


  さっきも話したが、もしも事件を知ったら自分の家庭環境と似ていると考えて、怖がるかもしれないと私達2人は、当時とても心配していたからな。


  まぁ、その頃中学受験で忙しい時期だったから、何とか知られずに済んだと母さんが言っていたよ。



  そんな事より、早く教えてくれないか?


  2人はどんな様子だったんだい?


  親子共に元気に暮らしていたかい?」


  父は、とても興味深そうな顔をしながら聞いてきた。



 (あれっ、父さんのこの反応は・・・。


  父さん、村長親子の事を以前から知っているの?


  明らかに親し気な人の様子を聞く言い方をしている。)



 「元気!?・・・て言うべきなのかな?


  2人とも落ち着いて暮らしていたよ。



  でも・・・、僕には気になった事もあってね・・・。」


 青野は、少し口ごもってしまった。


 

 「気になった事?


  どうした昴、ちゃんと話を聞こうじゃないか。」


  父さんは、僕の心配している表情に気が付いて、僕の話をゆっくりと聞いてくれた。



  僕は、二人に会って不安に思ったこと、気になっている事の全てを父さんに話して聞かせた。


  父さんは、話を聞いた後、何だかとても難しい表情をしていた。



  僕には、それが何を意味している表情なのかが分からなかった。



 「父さん、どうしたの?


  僕の話、やっぱり変だった?



  もしかしたら、僕の思い違いだったかな?」


  青野は、父の様子を見てそうたずねた。


 

 「いいや、そうじゃない・・・、そうじゃないんだ。」


  父は、短くこう答えると、難しい顔をしたまま、また少しの間黙ってしまった。





 「昴、本当にすまない。



  そうだ。旅行の話の続きを教えてくれ。


 まだ全然話を聞いていないじゃないか。」


 父さんは、作り笑顔になりながら言った。





 でも、父の様子は一変してしまった。


 青野は、父に言われた通りそこからは親子の話ではなく旅行の話を始めた。



 しかし父は何処か上の空になって話を聞いていた。



「父さん、旅行の話、また今度にしようか?


 何だか疲れているみたい。」


 青野は、そんな父の様子を見てこう切り出した。



「うん?




 ・・・。


 そうだな、すまない。


 やっぱり話の続きは、今度早く帰って来た時にしてもらおうかな。」


 少し考えた後、父は、申し訳なさそうに言ってきた。



「うん、そうしよう。


 僕もその方が良いと思うよ。」


 青野は、父にそう言いながら、内心とても驚いていた。


(父さんが、僕の話の途中で『また今度にしよう』だって!?


 仕事柄、今度がいつになってしまうのか分からないから、いつも前倒しで話を聞こうとするあの父さんが!?



 父さん、本当に一体どうしたんだろう!?)


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