<第63話> 知っていたんだね!
「うん、大丈夫だよ。」
青野は、いつも落ち着いている父らしからぬ慌てた口調に、少し驚きながら答えていた。
「こんな夜遅くにすまないね。」
そう言いながらも父は、青野が返事をするのとほぼ同じ位の早さで、素早く部屋の中に入って来ていた。
「父さん、どうしたの?
なんだかいつもと様子が違うね。
そんなに慌てた父さんの様子、僕初めて見たよ。」
青野は、自分の驚きを素直に父にたずねた。
「『慌てた様子』だって。
そりゃあそうだろう。
昴が『光輝夢村に辿り着けた』なんて言うから、驚いたんだよ。
村の事を何も知らなかったあの出発前の状況で、よく辿り着く事が出来たな。
『一体どうやって見つけ出したんだ?』と思って、少しでも早く話を聞きたかったんだよ。」
父も驚きを隠さずに答えた。
「あれっ?
父さんは、やっぱり知っていたんだね。」
青野が言った。
「『知っていた?』
昴、やっぱりって何の話だい?」
父は、自分が何を聞かれているのかと聞き返してきた。
「村の名前だよ。
父さん、覚えているかな?
僕は、旅行に行く前は、まだ正しい読み方を知らなかったじゃないか。
だから旅行前に父さんには、間違った読み方しか話していなかったでしょ。
でもまだ僕から何も教えてもいないのに、父さんはさっき『こきぃむむら』ってちゃんと呼んでいたからさ。」
青野は答えた。
「・・・ああ。
そうだな・・・。
隠したりして、すまなかった。
お前から光輝夢村を目指して旅行に行くという計画を聞いた時、賛成するべきかどうかを正直迷っていたんだ。
だから、ヒントになるような事も、つい何も言えなくなってしまったんだ。
もしかしたら今日の旅行報告は、『普通にN県を観光旅行して来ただけだったよ。』とお前が言う事を願っていたのかも知れないな。」
父は、青野の質問に対して静かに答えた。




