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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 2
44/129

<第44話> 悲しみの村長

「そうですか。


 確かに。そのような状況が続いているのだとしたら、僕も曜子さんが心配になります。



 でもどうして何でしょう。


 なぜ村長さんは、そんな異常な位曜子さんを過保護な状況にしているのでしょうか。


 


 奥様の麗子さんの死が影響しているのでしょうか?


 でも僕は、事件が終われば、時間の経過とともに死の悲しみは少しずつ和らいでくると思うのです・・・。


 だって娘の曜子さんは、命が助かったのですよ。


 村長さんにとって、曜子さんが自分の身近にいて健やかに成長していく事で、奥様を失ってしまった心の悲しみの傷も自然と癒えていくものだと思うのですが・・・。」


 青野は、深く考えていた。彼は、眉間にしわを寄せて難しい表情をしながら答えていた。



「そうだねぇ。言われてみれば、『そういうものなのかねぇ』って思うよ。


 でもそうじゃなかったねぇ。



 残念ながら当時の村長さんに、青野さんの言うような心の変化を感じるような雰囲気は、少しも感じられなかったね。


 曜子ちゃんがそばにいたのに、どうしてなんだろうね・・・。




 う~ん・・・。





 そうだよ。


 やっぱり村長さんは、普通じゃない位・・・、それだけ深く奥様の麗子さんを愛していたって事なのかもしれない。


 さっき私が麗子さんの事件の話を聞いたのは、半年位経ってからだって話しただろ。


 その話を聞いた時も、やっぱり青野さんは今のように驚いていたじゃないか。



 つまりそういう事なんじゃないかな。


 普通じゃないって事。



 麗子さんを失った事は、村長さんにとって本当に深い悲しみだったんだよ。




 うん、そうだよ。


 事件の後、よくこんな姿を見かけたんだよ。



 村長さんは、ため息ばかりついていたんだ。


 そしていつ見かけてもうつ向きがちな姿だったよ。



 だから私には、村長さんが悲しんでいるような・・・、何かで深く悩んでいるような雰囲気に感じられてさ、話し掛けられるような様子は全然無かったんだよ。





 事件の後っていっても、私が村長さんのお宅にお手伝いに伺うようになったのは、事件の後一週間位経ってからなんだけれどね。


 ちょうど曜子ちゃんが退院した時からだよ。





 そもそも事件の前は、麗子さんが家事はちゃんとやっていたからね。


 誰も村長さんの家の中の事をやってくれる人がいなくなったって事を、私も最初は気が付かなかったんだよ。




 ほらっ、曜子ちゃんが病院に運ばれて意識が戻らないって話が伝わって来た時に、心配になって病院に行ったって話しただろ。


 その病院に看病に行った時にさ、村長さんが、話してくれたんだよ。


 『麗子が亡くなってからというもの、家の中は悲しみ一色だ。



  事件の現場には、もう入る気も起きない・・・。



 

  そもそも麗子や曜子がいない家は、静か過ぎるんだ。

 


  私一人でいる事なんて・・・、とても出来ないんだよ。』てね。


  これはね、私が病院にずっといる村長さんを心配して、一度家に帰って休んだ方がいいって言った時の返事だったよ。




  村長さんのこんな悲しい返事を聞いてしまったら、何か自分に出来る事はないのかってなるだろ。だからさ、私もその当時、一生懸命考えたんだよ。




 『いつも私たちの為に頑張ってくれている村長さんが途方に暮れてしまっている。


  そんな村長さんの役に立てる事はないのか』ってさ。




  そして、この話を聞いた後、私もしばらくしてから気が付いたんだ。


  『麗子さんがいなくなってしまって、これから家事は誰がやるんだろう?』ってね。




  そして思ったんだよ。



  『これが私に出来る役に立てる事なんじゃないのか』って。




  それで『旅行客もすっかり減ってしまっているから、私でよければ、炊事洗濯をやりにお宅に伺いますよ』って村長さんに言ったのさ。


  実際、これからの家事をどうすればいいのかと村長さんも考えていた所らしくて、それで話はすぐにまとまったんだよ。



  もちろん曜子ちゃんが入院している間は、みんな病院にいただろ。


  だから曜子ちゃんの退院に合わせて働き始める事になったんだよ。



 


  でもそうだね・・・、村長さんのお宅で働き始めたといってもさ、本当に事件の後は、時間があっという間に過ぎていってしまったんだよ。



  家事をするのは3カ月位で随分慣れてきたけれどさ・・・、村長さんと話をする機会はあまりなかったね。



  そもそも仕事の話を確認するのだって、話しかけづらかったんだよ。


  だからそれ以外の事で話が出来るような雰囲気は、まったく無かったんだよね。





  なんて言うのかな・・・。


  村長さんがね、とても話し掛けにくい雰囲気だったんだよ。




  そう言えばいつだったかはっきりとは覚えていないけれど、掃除をしていた時にこんな事があったんだよ。



  村長さんがさ、とても悲しそうに遺影の前で奥様に話し掛けていたんだよ。


  あれは、麗子さんに何を話していたんだろうね・・・。



  私はね、あれはきっといなくなってしまって寂しいって話していたんじゃないかなって思うんだよね。





  そうそう、それからね、私は退院してきた曜子ちゃんにはしばらくの間全然会えなかったんだよ。


  事件の後、曜子ちゃんは自分の部屋から出てこなかったんだ。




  村長さんに聞いても、『あまり体調が良くないから、部屋で静養している』って言われていてさ。


  食事も村長さんが運ぶからって言われたし、彼女の部屋の掃除も、そこだけは仕事から除外されていたんだよね。



  でもさ、さすがに半年経っても部屋から全然出て来ない子がいるのはどうなのって心配になってしまって、『曜子ちゃんは大丈夫なのか?』って村長さんに思い切って相談したんだよ。



  そうしたらね、その時になって初めて村長さんが話してくれたんだよ。




  『実は曜子には事件の後遺症があるんだ』ってさ。



  そして事件の話もその時に一緒に話してもらったんだ。」


  春子が再び当時を思い出しながら話してくれた。

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