表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 2
39/129

<第39話> 付き添い

「そんな事があったのですか。


 確かに。村長さんは、とても娘さんを大切にしている方なのですね。




 それじゃあ、曜子さんの意識が戻った時は、村長さんが付き添っていたという事ですね。」


 青野は、春子の話に時々相槌をいれながら聞いていた。



「ああ、もちろんそうだよ。


 曜子ちゃんの目が明いた時、村長さんは嬉しくてすぐに話しかけたと聞いたよ。




 でもね曜子ちゃんは意識が戻ったけれど、何だか様子がおかしかったらしいよ。


 だからね、大慌てで『すぐに病室に来て欲しい!』って先生を呼んだそうだよ。」





 春子は、病室で曜子の意識が戻った時の話を思い出すのに、少し視線を上に流して考え込んでいた。





 村長は、病室で眠る娘の曜子の隣に座っていた。


 彼は、心配しながらずっと娘の寝顔を見つめていた。




 入院して診察を終えた娘は、目立つようなケガをしていなかった。


 先生からも『大きな外傷も無く、良かったですね。後は、自然に意識が戻るのを待ちましょう。』と言われ、安堵をしていた。



 その時は、先生も村長も曜子が直ぐに目を覚ましてくれるものと思っていた。




 しかし曜子の意識はなかなか戻らなかった。



 1日が終わり、不安が募りながらも更にもう一日が過ぎていこうとしていた。




 村長は、その時間の経過を何倍もの長さで痛感していた・・・。



 娘の心配はしているものの、何をするでもなく同じ場所でジッと座っているのだ。


 それは村長になってからというもの、村長職を身を粉にして働いていた彼にとって、180度違う時間の過ごし方だった。




 そしてジッとしていると、あの忌まわしい事件の事が脳裏に思い出されてしまい、彼の心は重たくなってしまっていた。




 村長は、それに抗うべく対策を取った。


 二日目に、彼は売店で販売されていた本を購入したのだ。



 しかしいざ本を読み始めてみると、今度は娘の様子が気になってしまった。



 本を読んでいる今この瞬間に『もしかしたら娘の意識が戻っているのではないか?』とどうしても気になってしまうのだ。


 そうして彼は、読書をしていてもチラチラと度々視線を娘に移してしまっていた。


 

 結局少しも読書に集中出来ていない自分に気が付いて、彼は本を読むのを辞めた。





 ゆっくり娘の曜子の寝顔を眺めている・・・。



 こんな風に娘の顔をゆっくりと眺めるという事が出来る時間は、そういえば、しばらくなかったなとしみじみと思う。



 曜子の顔は、幼稚だった顔が少しスッとした顔になってきたような気がした。


 それは母の麗子に似た、美しい面差しになってきているのだなぁと思う。


 そして村長の思いは、そのまま自然に麗子へと繋がっていた。



 この可愛らしくなっている娘の成長を、妻の麗子はもう二度と見る事が出来ないのかと思ってしまった。


 村長は、また瞳に涙が溢れて来てしまっていた。


(いかん。今娘が目を覚ましたら、こんな自分の情けない顔を見せてしまうじゃないか・・・



 しっかりしろ!悲しんでばかりじゃいけない。


 娘が・・・、曜子が生きていてくれたじゃないか。)



 『父親として、これからは自分が曜子をしっかりと守らなければ!』と強く思う気持ちが、悲しみの涙を拭いて頑張ろうという奮起に繋った。



 村長は、グッと涙をぬぐい去った。







 どれ位時間が経ったのだろう・・・?


 不意に村長が見つめる曜子に変化が起きた!?


 曜子の瞼が、ピクっと動いたのだ。




 「あっ!」


  村長は、思わず小さな声を漏らす。




  ドキドキと早鐘のようになる自分の鼓動を聞きながら、ジッとその曜子の動きを見つめ続ける村長。



  曜子の瞼がゆっくりと開いていく。




  まだ意識が戻って来ていないのか、曜子の表情は、フワッとしていた。


  曜子の瞳には、まだ何も映っていないようだった。




 「曜子、気が付いたのかい?



  曜子、曜子。


  お父さんだよ。




  すごく怖かっただろう。 でももう大丈夫だよ。


  これからは、私がずっとそばにいるからね。」




  『曜子が気が付いた!!!』


  はやる気持ちを静めながら、村長は自分を必死に穏やかにさせていた。


  村長は、静かに目を開けた曜子に合わせて、とても優しく話しかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ