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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 2
37/129

<第37話> 半年後

春子の話は、続いていた。


「それからね、曜子ちゃんがようやく意識を回復して、良かったと思ったのは、ほんの短い間だけだったんだよ。




 だってね、曜子ちゃんの事件の記憶がね・・・



 『すっかり無くなってしまっていたんだよ』



 それがね青野さん、驚いちゃだめだよ。


 あのね本当に不思議な話なんだよ。


 曜子ちゃんの記憶は、自分が誰なのかとか、今まで自分が生きてきた記憶とかは()()()()()あるんだよ。



 それなのにあの事件の話をたずねると、頭がとても痛くなってしまうし、何も思い出せないんだってさ。





 そうそう、最初は本当にひどくってね・・・。


 頭が痛くなるだけじゃなかったんだよ。


『いやぁーーー!怖い、止めて下さい。』


 って事件の話を聞こうとしただけで、曜子ちゃんはパニック状態にもなってしまったらしいんだよ。



 しかもそのショックで気を失ってしまうらしいんだ。





 余程事件で怖い思いをしたんだろうね・・・。


 本当に曜子ちゃんは、大変だったんだなぁって思うよ。



 ビックリしただろう。


 私もそうだったよ。


 話を初めて聞いた時は、『本当にそんな病気があるのか』って思ったんだよ。


 


 ね、わかっただろ。


 曜子ちゃんはね、事件後も本当にずっと大変だったんだよ。



 だから私が村長さんからこの話や事件の話を聞けたのは、事件が起きてから随分後になってしまったんだよ。





 そうだねぇ・・・、確か半年位後だったかな・・・」


 春子が少し考え込みながら答えた。



「半年後ですか?


 春子さんが事件の話を聞けるまで、そんなに時間が経っていたんですか?」


 青野は驚いていた。


 (夏子さんは、春子さんの事を村長さんの身近でお世話をしている人だと言っていた。


 しかも春子さんは、事件の事実をずっと気にしていたし、曜子さんの事もとても心配しているようだ。



 それなのにそんなに時間が経つまで事件の話を聞けなかったんだ。)と。




「ああ、そんなに驚く事かい?


 当時は、村長さんにとってはそれでもきっと、あっと言う間に過ぎてしまった時間だったと思うよ。




 青野さんは知らないけれどね、村長さんは、事件の後にすんごくやつれてしまっていたんだよ。


 私は、村長さんも曜子ちゃんのように突然倒れてしまうんじゃないかと心配していた位だったよ。




 当り前の話だと思うよ。


 あんな恐ろしい事件に突然巻き込まれてしまったんだからね。


 村長さんは、とーーーっても疲れていたんだと思う。



 でもきっと曜子ちゃんの為に必死で頑張っていた・・・。


 そんな状況だったんだと思う。




 だから私も村長さんが話が出来るようになるまで・・・。


 村長さんから話してくれるまで、ゆっくりその機会を待っていたんだよ。」


 春子は、ここまでの話をゆっくりと話していた。



 そして、少しだけ疲れた表情を浮かべながら自分の当時の気持ちも話してくれた。


「まあでも、正直私にとっては、村長さんが話してくれるまでの期間は、とても長く感じられたけれどね。




 だってね、結構ひどい話ばかりが事件に関して横行していたからなんだよ。


 私は、そんな話は信じやしなかったよ。だって村長さんや曜子ちゃんの事を信じていたからね。


 だからこそ、そんなひどい事件の話を聞けば聞くほど、2人の事をとても心配していたし、待つのもとても辛かったんだよ。」




そしてまた、とても真剣な表情に戻って、事件の話題へと戻っていった。


「事件の話をしてくれた時、村長さんは、とても辛そうだったよ。


 あの時の村長さんの表情は、きっと一生忘れる事が出来ないと思うよ。



 だってね、『こんな事件が起きるなんて本当に今でも信じられない』って事件の話をしている間に何度も言っていたんだよ。


 それからね、『曜子ちゃんが生きていた事が、自分が今生きていないといけないと思える唯一の事だ』とも話してくれたんだよ。



 そんな事を言いながら話してくれた村長さんの表情なんだよ。



 青野さん、それ位あの事件は、私たちの事を深く苦しめたんだよ。」



 春子は、当時の村長さんの顔を思い出していたのだろうか。


 とても辛そうな表情を浮かべながら話してくれていた。



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